僕はこうして鉄筋コンクリート住宅を建てた

株式会社RC design studio 代表 澤田友典

*2016年2月に書いた内容です。

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目次

一、まえがき

二、もしかして僕も土地を買える?

三、よし!僕も土地を買ってやるぜ!

四、どんな住宅にするか考える。

五、具体的に考えてみる。

六、建物の仕様の詳細を決定する。

七、そもそも「壁式」鉄筋コンクリート住宅とはどんな建物なの?

八、着工目前・・・本当に着工できるのか!!

九、いざ着工だ!!

十、建物に住んでみた!!

十一、どんな人が鉄筋コンクリート住宅で建てているのか!!


、まえがき

 僕は建築設計事務所を営んでいるのですが、2011年10月に事務所兼住宅を壁式鉄筋コンクリート造で建てました。多くの事を手探りで行い、あーでもない、こーでもないと検討しながら、どうにか完成までこぎつけました。その後、住宅計画時には想定していませんでしたが、住宅完成から僅か4ヶ月後の2012年2月に結婚し、2016年1月現在には2人の子供(0歳女・3歳男)と嫁と4人で、建てた家に住んでいます。この本は、僕が家づくりを考え始めてから建物完成までの3年3ヶ月と、建物に4年3ヶ月間住んでみた感想を綴ったエッセイです。

 

スケジュール 2008.03 土地を探し始める・銀行まわり・工法選定・夢を思い描く

2009.03 土地購入・プランニング開始・工法決定

2010.09 確認申請

2011.04 入札→業者決定

2011.06 工事着工(土地を探し初めてから3年3ヶ月)

2011.10 建物完成(土地を探し初めてから3年7ヶ月)

2016.01 この本を制作(建物に住んで4年3ヶ月)

 

家の計画当初から、漠然と鉄筋コンクリート造で家を建てたいとは思っていましたが、周りに鉄筋コンクリートの住宅に住んでいる人もいなく、いまひとつ鉄筋コンクリート造の住宅に住むというイメージが湧きません。又、本で勉強しようにも、鉄筋コンクリート住宅に関する書籍もほとんど無く、本当に手探りでした。沖縄では持家の60%が鉄筋コンクリート住宅であり、新築にいたっては鉄骨造と鉄筋コンクリート造で93%を占め、その大部分が鉄筋コンクリート造であるほどメジャーな工法です。しかし、全国的には僅か1%しか鉄筋コンクリート造で着工されていないという現実があり、一般的に「お金持ちの人が建てる住宅」というイメージの工法です。では何故、沖縄では鉄筋コンクリート住宅が普及しているのでしょうか?その最大の理由は台風が多い事です。台風に負けない為に、丈夫な鉄筋コンクリート造の家で災害に対抗しているのです。しかし台風に限らず様々な災害が多くなっている昨今、沖縄以外でも鉄筋コンクリート住宅は普及すべき工法です。そして、60%というその沖縄の普及率が、他の地域でも鉄筋コンクリート造が現実的に普及する可能性がある事を示唆しています。とはいえ現在の所、それほど情報は流通していません。この本は、僕が鉄筋コンクリート住宅を建てようと思った経緯から、工事内容、そして実際に住んでみて気付いた点などをエッセイ形式まとめたものです。情報も散りばめながら書いているので、気軽に情報を得る事ができる内容になっています。鉄筋コンクリート住宅を建ててみたい方は是非読んでみて下さい。そして、あなたが作る鉄筋コンクリート住宅がこの本を読む事でさらにステキなものになれば幸いです。

それでは、あるキッカケから土地を買う事になる所からお話します。


二、もしかして僕も土地を買える?

 

ある時、一人のお客様がローコストで事務所を建てられないか相談にこられました。内部の壁はべニアの露出したものでいいし、床は土間のままでいい!とにかく安く事務所を建てられたいとの事でした。厳しい予算で結果的に成約しなかったのですが、そのお客様は富山市内のありとあらゆる土地をネットで調査されていて「ここにこの価格でこれくらいの土地があるのですが、どうでしょうか?」「この土地、旗竿地(土地の入口が細い路地になっている形状の土地)なんですが、どうでしょうか?」等、次々に200万円台の格安の土地を提案されてきました。その時僕は、「あれ?土地ってこんなに安い価格で色々あるの?ネットでこんなに沢山の土地が調べられるのだ!」と思いました。もちろん業務上で不動産会社に土地を探してもらったりする事もありました。しかし調べてみると、不動産会社にいちいち相談するより、ネットで探した方が話が早い事が解りました。不動産会社に相談すると、不動産会社はこちらの条件に合っている土地を探してきて提案してくれます。しかし、候補地の提案が出てくるまでに時間が係るし、写真も添付されていない敷地形状と土地の情報(用途地域等)だけ見せて「この土地どうでしょう?」と聞いてきます。

 

ネットの場合はどうなるかと言うと、沢山の写真付きの情報の中から自分の条件に合う土地を探します。条件にあった土地があれば、その土地を直ぐに見に行って気に入らなかったら別の土地を探します。そうして、自分で候補を挙げて比較して購入する事ができます。ようは、自分でインターネットを使って土地を探した方が、不動産屋とやり取りして土地を探すより、希望する条件の土地を見つけやすいのです。(2016年現在、グーグルマップのストリートビューを使えば、そもそも実際に土地を見に行く必要すら無いかもしれません。)自分の家を建てたい地域が決まっている場合はローラー作戦がおススメです。候補のエリアをくまなく車で回って、看板が立っていたら直ぐに看板に書いてある連絡先に電話して情報をFAXしてもらいます。情報が溜まったら比較して検討すればいいのです。確認すべき点は、公共枡・上下水道が引き込まれているかどうか(設置する時に結構お金がかかります)、法的に住宅が建てられる土地がどうかくらいで、後は実際に自分の目で見た通りです。可能であれば、土地の杭の支持層の深さが想定出来れば言う事ないですが、これはなかなかプロでも難しいです。「KuniJiban」という国土地盤情報検索サイトでボーリングデーターを一般公開していますが、候補の土地の付近にデーターが無いケースが多く、あまり参考になりません。又、隣の土地は地盤改良していないケースでも、自分の土地は地盤改良が必要なケースも多々あるので付近のデーターは参考程度の情報です。2016年度現在、木造住宅でも大部分の建物が地盤改良を行っている事を考えると、鉄筋コンクリート造の場合でも木造住宅の場合でも支持地盤まで地盤改良は必要です。どの土地を選んでも地盤改良が必要なのであれば、土地選びでは支持地盤の事は参考程度に調べる内容という事になります。

 

後は、土地を現金で買えるかどうかという事も重要です。現金で買えない場合は、一般的には建物と合わせてローンで購入する事になります。土地だけ先行してローンを組むケースは極めて少ないです(詳しくは銀行の方に聞いてみて下さい)。まずは、建物のプランや詳細を決定して、ハウスメーカーや建設会社と工事契約します。その後、土地と建物を一緒にローンを組む方法が一般的です。と言う事は、土地の契約後、土地と建物を合わせたローン審査が不合格になった場合、購入予定の土地の代金がローンで支払う事が出来なくなります。このローン審査が不合格の時に、土地の契約を破棄できる条件を「住宅ローン特約」と言います。詳細は、土地の所有者と相談によって決まりますが、ローン特約の期間、手付金の金額等を決める必要があります。通常、ローン審査が下りない可能性のある人を、現金が直ぐにでも欲しい土地所有者はそんなに長く待ってくれません。せいぜい2~3ヶ月といった所です。その2~3ヶ月の間に、建物の工事を頼む建設会社を探して契約する必要があるので、とても慌ただしくなります。なので、土地の契約を行う時点で少なくとも、住宅業者が決まっていて、ある程度のプランと建物の概算金額くらいは把握しておく必要があります。その建物の概算金額と土地の購入価格を合わせた金額が借りられるか銀行に確認しておく必要があるのです。と、このように住宅ローン特約は何かと慌ただしいです。土地の契約段階から、建築業者に相談していれば問題なく進行していきますが、出来れば、いい家を作るにはプランに時間を掛けて検討したいものです。なので、可能であれば親に借金をするなり、貯金を限界まで切り崩すなりして、土地は現金で購入した方がベターだと思います。あと、住宅ローン特約の手付金とは、土地の購入予定者(あなた)の都合で話がご破算になったら土地所有者に没収される金額です。又、土地所有者も手付金と同額をこちら側に支払う事で、契約をキャンセルできる内容になっているケースが土地の契約書には多いです。しかし、契約とはケースバイケースなのでよく契約書を読んで確認して下さい。

 

★教訓1 土地は現金で購入した方がベター★

 

話がそれましたが、僕が土地をネットを使って探し始めた2009年ですら、大半の土地はネット上に公開されていました。年々、土地はネットで売られる割合が多くなっているので、もはや全ての土地情報はネット上で公開されているといっても過言ではありません。インターネットで土地を探してみると、土地を紹介しているサイトがあり(不動産組合のサイトや、エキサイト、yahoo、等の中立的な情報系サイトです)、ちょっと検索するだけで土地の情報が出てくるは出てくるは・・・・選び放題です。不動産屋に行くと、自社で扱っている土地しか店舗内で紹介されていないので選び様がありません。自社物件しか紹介されていない理由は実に簡単、自社物件の方が儲かるからです。土地の売買の不動産屋に払う手数料は基本的には、売り手の不動産に約3%、買主を見つけた不動産に約3%払う事が宅建業法で目安として決まっており、自社で扱っている商品を、自社で見つけたお客さんに売れば土地の契約価格の約6%もらえる計算になります。自社が取り扱っている商品を不動産会社は極力売りたいのです。そんなどの土地を売るかで利益が変化する所に相談するより、個人的にはネットで自分で探した方が、効率的で面白いと思うのでぜひネットを使った土地探しに挑戦してみて下さい。当時、僕は500万円以下の土地を富山市という範囲内で全て把握し、条件が合いそうな土地が見つかったら直ぐに見に行きました。お金があまり無かったので、調査範囲が狭くなっていますが、それでも20箇所弱は実際に自分の目で確認する為に、実際に敷地まで行きました。実際に土地を探し始めてから購入まで約1年程度かかりました。色んな土地を見に行くのは、夢があって面白かったですし、建築家という職業柄、勉強にもなりました。

土地の購入を検討するのと同時に重要な事を確認する必要がありました。それは、自分はいくらくらい銀行から借りられるのかという事です。職業柄、お客様の借入可能額を調査したりもするので、融資関係の事は大体は解っているつもりでした。よく銀行員の融資担当者は「借入可能額は年収の5倍くらいまでですね」と言います。年収が400万なら借入可能額は2000万円までです。しかし、実際は年収が400万を超えていれば6~7倍という、もう少し高い倍率まで借りる事が可能です。銀行によりますが、一般的に400万以下と以上では計算方法が違ってしまいます。これは年収が少ない場合は生活が苦しいはずだから、住宅ローンにお金を割けないでしょ!という事です。年収が400万円くらい超えていると年収に対する住宅ローンの出費の割合が増えても、残ったお金で生活できると判断されているのです。年収400万のラインは合算でも大丈夫なので、嫁でも親でも連名にして合計年収が400万を超える必要があります。で、仮に合計年収が400万なら銀行によりますが7倍の2800万円くらいは借りられるかと思います(*参考程度に言っているので、詳しくは銀行の方に聞いて下さい)。ここで注意するのが、一般的には会社に勤めて1年以上経っている必要があります。勤めて1年以下だと年収がまだ出ていない事もありますが、最低限1年くらいは継続して会社に勤められる人材である事がお金を借りる条件の一つであるとも言えます(銀行によっては、月収から年収を予測して借りられます)。

 

僕が銀行に建物のお金を貸してくれないかと相談していた当時は400万くらいの年収でしたが、その前年度は年収300万くらいだったので、年収300万として計算する必要がありました。会社に勤めている人と個人経営者では銀行の扱いが違います。個人経営者は、いつ倒産するか解らないと判断され3年間の最低年収で判断されてしまいます。300万で判断すると5倍で1500万程度しか借りられません。・・・どうしよう、全然借りられるお金足りないじゃん・・・困った僕は、とりあえずありとあらゆる銀行に相談してみました。ですが、ほとんどの銀行は同じ考え方でした。「うちでは無理ですね~~~」くらいの軽い対応の所もあります。「いや、可能性が無い訳ではありません。ローン審査してみましょう!」と協力してくれる銀行もありましたが、何となくもう一つでした。銀行は公務員の方には優しく、個人経営者には辛いです。しかし、そんな個人経営者の僕に優しく手を差し伸べてくれる会社がありました。SBIモーゲージさんです。SBIモーゲージはフラット35をメインで取り扱っている銀行です。フラット35は国が主導の住宅ローンなだけあって、個人事業者にも優しい設定になっていました。借入希望者が個人事業者の場合でも3年間の平均年収や3年間の最低年収で判断するのではなく、あくまで前年度年収で判断してもらえます。借入できる金額が年収に対して多いのも特徴です。ネットで簡単に、いくらまで借りられるか検索できるので「フラット35」のHPを覗いてみて下さい。金利や事務手数料はSBIモーゲージのものを仮で入れてみると解りやすいです。地方銀行に断られた方はフラット35を検討してみてはどうでしょう。フラット35が駄目なら、もうローンに担保付けまくるしかありません!担保も無ければ、諦めて1年間ちゃんとした仕事に就く事からスタートです。

 

ちなみに2015.12月現在、年収400万、金利2%のケースだと3512万円借りる事が出来ます。なんと年収の9倍・・・逆に、借りられ過ぎて怖いです。あと、フラット35はつなぎ融資が出来る銀行と出来ない銀行があります。「つなぎ融資?」と思われる方もおられると思います。つなぎ融資とは、建設会社と契約をした後に着手金、着工金、中間金(上棟時)、完成時金と建物の進行状況に合わせてお金を払う必要があるのですが、住宅ローンは通常、建物が完成した時にお金が下りてきます。そうすると、着手金、着工金、中間金(上棟時)を手持ちの現金で支払う必要が出てきます。しかし、ほとんどの方はそんなお金を現金で持っていないので、そのお金も住宅ローンとは別に「つなぎ融資」という名目で銀行から前借する必要がでてくるのです。そして、上棟時に支払う中間金なら、ローン開始時(建物完成時)までの数か月の金利を銀行に払う仕組みです。つまり「つなぎ融資」とは、住宅ローンを担保にした、前借する制度の事です。一般的には、つなぎ融資を使うと10万から20万の金利を支払う必要があります。もしくは、つなぎ融資を避ける方法として、銀行によってですがローンを着工時から開始する方法もあります。しかしこの方法は、住宅ローンと家賃を重複して支払う事になるので家計的に負担になります。

 

僕が借入を起こしたフラット35の場合は、建物完成時にフラット35の検査員による検査に合格しないと融資が開始されません。工事金額の全てのお金を所有している人か、親に全額お金を借りる場合以外は、つなぎ融資を行うしかないのです。しかし、フラット35を扱っている銀行でもつなぎ融資をしていないケースも多いです。「どうして扱って無いの?そんなのあり得ないじゃん!」と思われると思いますが、これは銀行にしてみればフラット35で融資するより自社の商品で融資する方が実入りが多いので、フラット35を国の手前、扱ってはいるけど販売には消極的な態度を取っているという事なのです。そんな中、SBIモーゲージさんはフラット35をメインで取り扱っているので、フラット35で融資する気満々です。薄利多売の精神です。

 

ちなみに金利は一般的には、ネット銀行→地方銀行→フラット35の順で高くなっています。審査が厳しいネット銀行は優良な顧客をネットで広く集め優遇金利で貸し付けていますので低い金利で貸し付ける事が出来ます。ネット銀行は、いくらまで借りられるか等、諸条件は詳しくHPに記載されているので、ネット銀行のHPを見れば大体の話は分かるようになっています。書類のやり取りとかが郵送になり、若干面倒くさいですし、地元の銀行のように窓口が無いので解りにくい所はあるものの、若い人には人気です。逆に、地方銀行はHPが充実していないので窓口に行って聞くのに限ります。

 

ここまで聞いて、なにか色々選択肢があって良く解らないというあなた!各銀行の住宅ローン窓口に気軽に相談に行って、ローン試算表を作ってもらえばいいのです。解らない事をどんどん銀行員に質問すれば、訪問3社目くらいにはそれなりに住宅ローンの事が解るようになっています。本で勉強するより実践的に動いた方が、具体的な情報が手に入り、話が早いです。本に記載してある情報は大多数の人向けの情報なので、あなたに必要な情報ではない可能性も多分にあります。住宅ローンは難解な部分も多く、本だけ見て考えるのは無理があります。簡単な住宅ローンの本を一冊購入して一読し、後は実戦で勉強しましょう!慣れてくると「住宅ローンアプリ」を利用すると、各銀行や諸条件を比較するのに便利です。ちなみに僕は「ローン計算iLoan Calc」というアプリを利用しています。住宅の営業の方とかも使っているアプリなので、素人の方なら機能的に十分かと思います。金融電卓なんて使いづらいものは、まず必要無いです。

ハウスメーカーに住宅を依頼する場合はハウスメーカーが取引のある銀行との取決め金利によって相談にのってくれますが、実は住宅本体に限らず、住宅ローンも銀行数社に競合させた方が低い金利で借りられるケースが多いです。実は、窓口で記載されている金利が全てではないのです。競合金利はハウスメーカーの銀行と取決めている金利を下回ります。あなたが公務員や安定した職種の場合は、なおさら競合させた方が有利です。何故か!住宅ローンは400万円以上の年収なら表向きは誰でも同じ金利になります。しかし、実際には職種によって、払えなくなる人の割合が多い、銀行が貸付するのにリスクが高い職種と、リスクの低い職種があります。公務員の人は、基本的には倒産しない会社に勤めているリスクの低い人達という事になります。車なんて車種によって保険料が違うのですよ!事故率の高い車は保険料が高く設定されています。住宅ローンだって職種によって金利が違っていてもおかしくありません。今の所、表向きはそうなってはいませんが、銀行だってリスクの低い優良な顧客を集めたいのです。

 

最後に余談ですが、住宅ローンを組む時に他のローンを組むのは避けましょう!銀行の仮審査に合格してほっとして、車のローンを組むと本審査が通らないケースもあります。これは、人によって1カ月に組める総ローン額は決まっています。例えば10万円ローンを月に組める人が、自動車ローンを4万円/月で組むと残り6万円/月になり、住宅ローンが8万円/月だと成立しない事になるという事です。キャッシングでリボ払いもローン扱いになるケースもあり、とにかく怪しければ銀行に聞いた方が無難です。気づかずに他のローンを組んで住宅ローンが借りられなくなったという話を実際に聞いた事があります。その事を教えていないハウスメーカーの営業もどうかと思いますが、施主側も自分で情報を集めて家づくりに臨む必要があります。

 

★教訓2 とりあえず銀行に行ってみる。リボ払いにも注意!★

 

とまあ、僕のケースで言うとフラット35だと大体必要な金額は少なくとも借りられるのが解ったので、安心して本格的に土地を選び出しました。


三、よし!僕も土地を買ってやるぜ!

 

銀行まわりをした結果、必要な住宅資金を借りられる事が解り、土地を買う事に具体性が出てきました。今までは気軽な気分で、ここの土地に住んだら楽しいかな~~~この土地だったらこんなプランになるな~~~と気軽に夢を見て楽しんでいたのですが、ついに一歩前へ進む時が来ました。

 

さて、どの土地にしよう・・・

 

空いている時間は全てネット検索に費やし、調べに調べ候補地は幾つか上がっています。しかし、その中から一つを選ぶのはなかなかに難しい・・・お客さんにだったら「フィーリングが一番大切です。フィーリングを大切にしながら、その土地が必要な条件を満たしているか考えてみましょう!」とかなんとか簡単に言えるのですが、自分の事となるとなかなか難しい・・(笑)。自分で購入してやっと本当の意味で相手の立場に立って相談にのる事が出来るようになりました(^_^.)。土地が変わると、建物のデザインもコンセプトも変わってしまいます!どの土地に建てるかは、コンセプトに合った家づくりをする最重要ポイントです。もちろん建設業者が決まっていれば相談すれば「要望に対して敷地が小さい」等の現実的なアドバイスを貰えます。当社の場合は簡単な建物のボリュームを出す程度のプランニングは協力させて頂いています。僕の場合は自分で検討出来るので3か所くらいプランニングして、土地を比較検討しました。

 

自分でも検討されたいという方には、簡単な方法があります。まず、土地の図面を不動産屋にもらって1/100程度に拡大縮小します。次に、住宅雑誌から自分が望む大きさに近い家を1/100にコンビニで縮小かけてその図面を切り抜きます。最後に、切り抜いた図面を敷地に当ててみるだけで随分イメージがつかめます。お試し下さい。よく聞く話で「土地が小さかったから思い通りの家になるか心配でした」という話がありますが、これは、敷地のサイズと建物のサイズをリンクして考えられて無いだけで、敷地と図面を重ね合わせれば、素人の方でもおおよそ解る事なのです。

 

もう一歩踏み込んで考えてみたいという方には、簡単な図面作成ソフトを購入されるのをおススメします。面倒くさいCADの図面制作とは違い、感覚的に図面を制作できる素人向けのソフトがあります。しかも、立体パースまで簡単に作れます。そのソフトは・・・・マイホームデザイナー/メガソフトです。9000円弱です。過去に、お客様がこのソフトを使って、幾つもプランを考えておられました。CADと違って、ある程度なら説明書を読まなくても図面と立体パースが作成可能だと思います。こんなソフトを使って、敷地に何となくプランを書いてみて判断出来るようになったら、楽しいと思いますけどね~~~やる気のある人は挑戦してみて下さい。

 

僕は建築家なので、土地を見れば建物に必要な広さが有るか無いかくらいは解りますし、ある程度直観的に敷地を見ながら現地で頭の中で立体的にプランを作成する事も可能です。事務所で考えているより現地で考える方が、土地の声(土地の特徴)を反映した良いプランになるくらいです。個人的には土地の声を色濃く反映させたプランにしたかったので、土地と土地の周辺部との関係性が、かなり大切です。僕が土地を買うときに重視したのは、風景と繋がった開放感が溢れる住宅が建てられるかどうかです。実家は比較的都心部にあるので、周辺部の建物からの視線が気になります。又、隣が大きな幼稚園なので、子供の声が煩く窓を開ける事が出来ません。家に開放感はありませんでした。もっと、開放的に暮らしたい!風景を眺めながらのんびり暮らしたい、なんなら海を見ながら暮らしたい、丘陵地から下に広がる町を眺めるような家でもいいな・・・そんな感じで考えていました。しかし、一方で現実的な要望として、事務所併用住宅とする必要があったので、「車でのアクセスが良くて開放的な敷地、かつ少しは交通量のある道路に面している」というのが基本的な要望としてありました。その要望を念頭に置いてさらに土地を絞り込みました。そして、開放的な今の土地に照準を絞ったのです。

 

その土地は西側に大きな用水が流れ、田んぼが広がりその奥に呉羽山丘陵が広がっています。南北に細長い敷地なのですが、東側は県道に隣接し、その奥には田んぼが広がりそのずっと奥には立山連峰が広がっています。このような開放的な土地でありながら、インターまで車で5分、富山市の中心部まで車で15分と車のアクセスもそこまで悪くありません。そして重要な土地の価格も交渉の末270万→230万とある程度下げる事が出来ました。

 

余談ですが、土地の価格は決まりきったものではありません、相場はありますが、交渉する事で驚く程下がる事もあります。交渉する時は出来たら候補地を二つぐらいにした方が交渉しやすいです。そして「○○円にならないですか?予算これだけしかないのです」と指値で交渉する事をおススメします。「もう少し安くなりませんか?」じゃ話が進みません。土地を売っている人は、土地を売りたいのです。少しくらい安くたって、売ってしまいたいというのが大抵の場合じゃないでしょうか?5%切れれば800万の土地だと40万になりますし、10%切れれば80万となり給料の3か月分になってしまいます。ヤマダ電機で1万円のものを9千円に値切るのとは訳が違います。さらに言えば、土地の価格はとてもアバウトで交渉の余地があるものなのです。僕の場合は、相手側が強く売りたがっていた事、土地自体が一般の人なら買う気にならない使いづらい形をしていたので強気の交渉をする事が出来ました。その土地は市街化調整区域(市街化区域に建てるのが一般的)にある雑種地だったので、一定の条件を満たして、役所に申請する必要があるのも厄介でした。でも、まあなんとかなる範囲だろ・・・よし、じゃあ買おうかな・・・と思っていたら問題が発生しました。

土地の境界線部分に、太いパイプで出来たガードレールが設置されていたのです・・・あれ?こんなガードレール前は付いていなかったよな?不動産のHPの写真にも付いていません・・・おいおい、こんな邪魔なものがあったら、せっかくキレイに建物をデザインしても意味が無いじゃないか・・・とりあえず不動産屋に確認します「すいません、手摺パイプが敷地の前に設置されているのですが・・・」「え?そうなのですか?なんででしょう、確認します」そう言って不動産屋さんはあわてて電話を切りました。調べてもらった結果、地元から深い道路側溝に蓋がしていないので、子供達が落ちたら危ないという事で、手摺を設置する要望が出ていたらしいです。え~~~そんな事言ったって、手摺があったら邪魔じゃん・・・「手摺が取れなかったらこの土地買えないです」と不動産屋に言うと、不動産屋さんも困っています。さすが行政・・・土地の所有者の許可なく、接道の側溝に手摺を付けていくとは・・・お役所仕事です。確かに、法は犯していません。県の所有する土地に設置する訳ですから・・・。でも~~~そりゃ無いでしょ常識として・・・後で確認したら、在宅部分に接する側溝は、所有者と相談して手摺を設置するのでは無く、側溝に蓋をしているケースもあったみたいですけどね!!まあ、済んだ話は置いておいて、手摺をどうにかしないと話になりません。仕方がないので、ここまで来たら自分で動く事にしました。(一応プロですし・・・)土木事務所に行って手摺を撤去できないか交渉します。

通常、こうした交渉は業者の立場では出来ません。土地の所有者が自分でするものです。業者として相談に行くときは行政の意見を聞いて、施主に伝えるという確認作業に留まってしまいます。今回のケースでは明確に言うと、僕は土地購入予定者であって所有者ではありません。なので、役場の方からしてみれば、所有者でもないのに何言っているの?気に入らないなら買わなければいいじゃない?となってしまうので、あたかも所有者のように振る舞います(笑)。「建物を建てようと思っているのに、土地の前にガードレールがあると見た目が悪い」と交渉します。向こうは「悪いですか~~~」と気の無いお役所対応、それでも交渉を続け、側溝にこちらの費用で蓋を設置すれば(車道用の高いやつ25t用)撤去してもいいという事になりました。・・・ふう、問題が一つ解決しました。その土地の購入にあたり、既にそれなりの時間を掛けて建物のプランの検討をしていたので、気分的にはもうその土地で家を建てる事に決定していました。(笑)・・・ここで振出はきついっす!という事で、不動産屋を通して側溝の蓋代30万をさらに値引かせて200万で金額が決まりました。

 

いよいよ土地の契約です。正直ちょっとドキドキしました。お客さんの土地の契約に立ち会ったりする事はありますが、自分で契約するのは初めてです。そんな僕をよそに契約は進んで行きます。土地に根抵当が設定されていたので、根抵当権を持っている方も来られていました。根抵当とは担保(今回はこの土地)を付けて、限度額の範囲内でお金を借りるシステムです。当時、根抵当権の存在は知っていましたが、まさか自分の土地の売買に絡むとは思ってもみませんでした。当時、僕は独立6年目でしたが、自己所有の土地に根抵当を付けて、銀行以外の人にお金を借りている前所有者がなんとなくやり手の起業家っぽく見えました(笑)。そして判子を替わし、ついに土地の所有権を持ちました。なにか大人になった気分で、とても嬉しかったのを覚えています。ちなみに土地はなんとか現金で買えました。

 

★教訓3 土地の値引き交渉は必須事項★

 

よ~~~~し、土地も買ったし本格的に建物のプランを考えるか~~~テンションが上がります。


四、どんな住宅にするか考える。

 

さて、土地も購入したし、家づくりについて本格的に考えてみます。どうしたらいいのかな~~~う~~~ん、解らないな~~~。いざ、考えてみると自分がどんな家に住みたいか解りません。★土地の声を聞いてプランを作る ★開放的なプランにする。という基本方針は決まっているのですが、それ以外どんな材料を使うか、どんな工法で作るか、設備はどんなものを入れるか、殆ど考えていません。感覚的に、皆と一緒の家は嫌だなというのはありましたが・・・。どんな家にするのかを選択する難しさというものが、家を買う側になってみて初めて解りました。選択肢が多くて決められないのです。まして、僕は建築家・・・どんな工法の家でも建てられます。う~~ん僕ってどんな家が好きなのだろう・・・。この段階で漠然と鉄筋コンクリートの家にしたいという思いはありました。ですがそんな簡単には結論づけられません。生涯住むことになる家です。それに他にも、気になる建築デザインというものが幾つもありました。考え続けた結果、構造体そのものが建物のデザインとなっているような家にしようと思いました。

一般的に、構造体がデザインとなっている建物と言えば歴史的建造物が挙げられます。歴史的建造物の多くは、工法の力強さや美しさを建物の魅力としています。構造美を利用したデザインというものは、建築そのものの純粋な魅力を伝えるデザインなのです。

 

構造美を利用したデザインの例を挙げてみると ①柱や梁が見えている昔ながらの和風のデザインをモダンに焼き直したデザイン ②鉄骨造の構造体が露出していてデッキプレートが印象的なデザイン ③RC造と木造の混構造になっていてコンクリートと木の構造の対比が美しいデザイン ④2×4の間柱がリズム良く露出していて本棚を兼用するデザイン ⑤コンクリートの壁が露出しているコンクリート造のデザイン ⑥プレキャストコンクリートパネルを露出させたデザイン等、工法の数だけその工法の特徴を活かした構造の魅力を取り入れたデザインがあります。どの工法にするかはともかく、構造デザインが意匠デザインと一体化した直観的な建物(解りにくい表現だと思いますが、ボードとかで構造を隠すと何かダミーのような感じの建物になるという意味です)にしよう・・・そう思いました。しかし、先に上げた構造体をデザインに利用した建物はどの工法の建物もそれぞれ魅力があり、なかなかどれにしようか決められません。もう少し、各工法について詳しく分析してみます。

 

■木造の柱、梁が露出しているモダン和風デザイン

これは多くの工務店が取り組んでいるデザインです。柱と梁を露出させ建物の内部空間をダイナミックにすると共に、優しい印象を加える典型的な和風デザインです。家具や棚を造作で作って建物と一体的なデザインにする事で、まとまったインテリアに簡単にする事ができます。壁の色、柱の置き方、格子の配置等を工夫する事で、本格和風にもなりますし、モダン和風にもなります。部分的にコンクリートの壁を挿入したりすると一気にモダンな風合いになります。構造体を露出させる事は、構造体を乾燥させる事にも繋がり、構造体の耐久性を上げる事にもなります。しかし一方で木材は乾燥によって1/10も幅が変化してしまいます。含水率25%の木材が乾燥した住宅中で10%まで含水率が落ちると、5%程度木材は収縮してしまいます。12cmの柱だと6mm乾燥収縮する事になり、乾燥による隙間の発生によって建物の性能が劣化する事が気になります。断熱材と木材の間に隙間が出来たり、パネルを固定している釘もパネルや木下地の乾燥収縮によって効きが悪くなります。まあ6mmなので、柱の両サイドで考えると3mmですが、全ての柱や間柱、梁の周囲に3mm隙間が空いてしまうと、乾燥によってかなりの性能値の低下が発生します。新築10年目で「最近、隙間風が多くなってきて・・・寒いは~~」となってしまいます。

新築当時、木材が乾燥でパキパキ割れる音がする問題点や、木材の大敵であるシロアリに注意する必要があります。無垢の柱ではなく集成材の柱を使えば乾燥収縮の問題は幾らか軽減されますが、個人的には何となく接着剤で貼り合せた構造体は好きにはなれません。しかし、集成材の柱は無垢の柱に比べて変形しないのでクレームに成り難いというメリットがあります。無垢の柱なんて、ヒビが入るのなんて当たり前ですし、変形するし、精度が良くないし、キクイムシがいるし、乾燥収縮するしで問題が山積みです。それでも木造で建てるなら無垢の柱にしたいですし、白蟻の問題はあるけど構造材に薬剤を加圧注入をするなんて考えられません。加圧注入の薬剤は劇薬です。加圧注入している業者の方で、自分の家の柱に加圧注入材を使っている人は、まずいません。中間案として、シロアリに強い桧等の木で土台を作る事になるのですが、木は木でしかないので幾分強いだけで、問題点を解消している事にはなりません。シロアリによる被害は避けられないのです。又、桧にしたとしても、地盤面から1mまでは防蟻塗料を塗らざるを得ません。防蟻塗料の成分が気になる所ですが、塗らないで白蟻に食べられるよりはマシというものです。しかし、虫だって人間だって同じ生き物です。虫に害がある成分は人間にも悪影響があるのは当然です。そうは言っても、家も食べられたくない・・・どうしよう・・・、このような答えの出ないジレンマが木造住宅にはあるのです。

 

しかし、書いていて凄く重要な事に気づきました。お客様に薦めている材料と自分が使いたい材料は違ってしまうという事実です。薦めている材料は、「どの程度、建てた後クレームに繋がるか」という要因を含んで判断しているという点です。僕は仕事の時は比較的、正直に問題点を話すやり方を取っています。なので、営業の人の契約だけ取るやり方に比べると後々問題になる事は少ないと思います。しかし、事前に説明していたとしても実際に問題が発生した場合では、クレームに繋がる可能性を秘めています。そうなると、プロとして極力クレームに繋がる材料は使わないように心がけてしまうのです。・・・ですが正直、クレームを回避する話を抜きにしても、無垢材より集成材の方が適切だと思っていました。構造材の変形は仕上げに影響しクロスがひび割れたりしますし、集成材は柱と梁の整合部を金物でジョイント出来るので柱の欠損が非常に少なく合理的な選択だと思っていました。しかし、自分の家を作るという立場で選択すると、そうした合理性を横に置いて、無垢材で建てたいと思ってしまう事に驚いています。正直、集成材で建てるのは考えられません。愛すべきマイホームは自然の無垢の木で建てたいと思ってしまいます。これは・・・そう考えるか~~そうなるか~~なるほど~~勉強になります。合理性だけが答えでは無いという事を学びました。

又、僕のケースだと1階を事務所にして2・3階を住宅にしたかったので、2階の足音がうるさいのも困ります。耐力壁を構造用合板で構成するのも個人的には凄く気になります。木は乾燥収縮するので、施工当時は釘が構造用合板や柱に効いていても、10年後にはスカスカとまでは言いませんが性能が著しく低下しているのは間違いありません。湿気やカビで腐る問題点もあります。屋根を葺く大手板金屋(鉄骨下地も木下地も扱っている規模)ですら、下地を木材でとめるのは嫌がります。将来的に木が痩せてきた時に、風であおられて釘が抜けてしまう危険性があるからです。鉄の下地を入れて固定する方が遥かに安心なのは、板金屋業界では周知の事実らしいです。近年は、木の耐久性の問題点から、樹脂と木粉の合成材の中に鉄のフラットバーが入っている商品が急速に普及してきています。屋根や外壁ですら、下地は鉄の方がいいという屋根業界の一般常識があるにも関わらず、構造を受け持つ構造用パネルが木に釘でとまっているのはいかがなものでしょうか?性能値や実験値は、施工当初のものです。10年後その性能がどの程度低下しているか解りません。しかも、建物の周囲が構造用合板の接着剤で囲まれている事になり、アレルギー体質の僕には構造用合板を選択するなんてあり得ません。今でこそ接着剤が改良されてあまり問題にならなく成りましたが、15年前くらいに、高気密高断熱住宅が流行った時に、構造用合板で囲まれた家を作っている時は、現場では換気が必須でした。大工さんが気持ち悪くなって「目がチカチカする」と言われていたのは個人的に衝撃的に記憶に残っています。とにかく、僕はアンチ構造用合板です。

 

個人的には木造で建てるとしたら筋交い派です。木造の建物は揺れる事が前提です。柳のように風を受け流し、地震力を建物全体が揺れる事である程度は逃がす計画が必要です。それなのに地震力をもろに受け止める強度が必要な構造用パネルが、揺れる事で力を逃がす筋交いと同程度の強度しか必要とされていない矛盾が木造住宅にはあります。しかも、地震時の揺れ幅の違う筋交と構造用合板が同一建物内に混在しているなんて、あり得ないです。更に、耐力壁の釘は地震の時に若干浮き上がる事で建物の靱性(ねばり)を確保する仕組みなので、2回目の地震では著しく耐力を低下させてしまいます。比べると筋交いは昔から使われて来た歴史ある工法で、問題点が洗いだされています。引張筋交い(引張力がかかる筋交い)が釘で収縮する木に金物固定されている問題点はあるものの、圧縮筋交いをバランス良く配置する事で問題が小さくなるので、個人的には筋交いの方がベターだと考えています。

 

実際、実寸大実験の同じプランの3階建で、構造用合板を利用した建物は揺れが筋交いの建物に比べて小さく安定しているように見えて、急に壊れた実験動画があります。建物の揺れによって、釘が引き抜かれると耐力がゼロになってしまい、倒壊に繋がります。徐々に釘が引き抜かれ急に倒壊にいたる訳です。筋交いはどうかと言うと、過去の大震災で圧縮によってたわんで折れたり、引張筋交いが全く抵抗していない問題点が露出しました。その結果、部材寸法が見直され、筋交いと柱、梁の接続部は金物で固定する事が法律で義務付けられました。これは、1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災の被害を受けて、平成12年に建築基準法が改定されたもので、柱をホールダウン金物で基礎と結合する事、バランス良く耐力壁を配置する事、筋交いの端部は金物で固定する事、等の改定が木造建築で行われました。その後、より耐震性の高い建物を求める声に答え、構造用合板で建物を囲むような設計が普及してきています。しかし、平成12年からまだ、15年しか建っていません。筋交金物で初期強度が発現するのはもちろん実験で確認されていますが、木が乾燥してボルトや釘が緩んだ数十年後の状態になった時に、どの程度、筋交金物が強度を発現するかは、筋交金物で固定された古くなった建物が、地震を経験していないのでいまだ未確認なのです。しかしそうは言っても、昭和56(1981)年度以降の新耐震で作られた木造住宅は、築10年程度と建物が新しかったのもありますが、1995年に起こった阪神・淡路大震災の被害が少なかったとされていますし、古くから親しまれてきた工法である在来木造に住むという事自体は馴染みがあり受け入れやすい事です。

 

在来木造にするなら、真壁工法(柱が露出した工法)にしたいと考えていました。大壁工法(柱を壁で包み込む工法)は近年の工法です。何故、古来より真壁工法が普及していたのか、それはこの多湿でシロアリが多い国で構造体の木を乾燥させる事は、建物の寿命を確保する為に何より重要な事だったからです。国土交通省補助事/シロアリ被害・調査報告書によると、築15~19年の在来木造住宅の白蟻発生率はなんと29.3%です。さらに、築20~24年になると38.4%となり、最終的には7割近い木造住宅にシロアリの被害が発生しています。つまり、気づいていないだけで、シロアリは木造住宅の家を食べているのです。近年、住宅の高断熱化・高気密化はシロアリにも快適な環境を提供してしまい、以前だと発生しないような時期にもシロアリが発生する問題が起こっています。

 

真壁工法は、構造材の乾燥には有効ですが問題点があります。木が収縮するという事です。古いお寺で柱と土壁の隙間から外部が見えている例が多々あります。木は乾燥状態によって1/10も変形してしまう問題点があります。長期的な気密性の確保が難しく、外部を真壁にする事は漏水のリスクを伴います。大工さんが台風の日には真壁工法の家をどれだけ飛び回っているか・・・。外部を真壁にする事は漏水の観点から流石に難しい(建物のシロアリ対策を第一に考えるなら真壁にすべきです。歴史建造物が証明しています。)・・・ならば、せめて内部は真壁にしたいと思います。住宅の内部は一般的に単位体積に対する水分量で言うと(湿度ではありません。あくまでどれだけ水分が空気中に存在するかという定義です)外部より多い事になります。急に大雨が降った時は違いますが、基本的には外部の空気を取り込み、人の呼吸、観葉植物の水分、洗濯物、料理、人の汗等の水分を空気にプラスする事になるので、水分量は建物内の方が大きくなります。漏水を防止する為に、屋根にアスファルトルーフィング、外壁に透湿防水シートを施すのが一般的ですが、アスファルトルーフィングはそもそも湿気を通しません。建物の防水性能を上げる事で、湿気をため込んでしまうジレンマがあります。もちろん、機械換気する事である程度は問題点を解消できます。言いたいのは、こうしたジレンマを内部を真壁にする事でいくぶん緩和できるという事です。同時に木材による調湿作用もいくらか期待できるので、個人的にはおススメです。しかし、一方で木材の収縮の問題が発生してしまいますが・・・何かを取れば、何かを失うのは当たり前です。僕にとって、構造体を極力乾燥させる事は、シロアリに有効で、伝統的な考え方にそくしていて、僕好みのデザインで、多少の隙間が発生する事には目をつむってでも実行すべき事なのです。まあ、そんな事を言っていても最終的に「無垢材」にするか「集成材」にするかすら、どちらに転ぶか解らないですけどね(笑)。選択するというのは難しいです。合板の耐力壁は100%無いです。アレルギー体質なんで(笑)。ちなみに2×4工法は在来工法より、さらに湿気が溜まりやすい日本の地域性に合わない工法なので、さらに構造材を乾燥させる工夫が必須です。

 

僕達が森林に行くと何故か癒されます。空気がきれいな事が一番の理由だと思います。木造住宅にはその癒されるイメージがあります。木造の柱を森林の木々に見立て、森林の中にいるかのようなイメージにする・・・いいですよね!親しみやすいです。いいな~~~木造住宅・・・とは思うのですが、僕はなんとなく体質的にスギが嫌いなのです(気のせいの可能性も往々にありますが・・・)。社会人になってから、杉を使って小さな造作建具を作るイベントに参加して、作った無垢の杉の建具を部屋に置いておきました。すると、何となく調子が悪くなってしまい「あ~~~これのせいかな?」と、建具を別の部屋に移動させると体調が戻りました。それ依頼、なんとなく杉は好きになれません。感覚的に、木材が乾燥してしまえば問題ないのですが、アレルギー体質が原因なのかなんとなく体がむず痒くなってしまいます。多分、匂いのせいです。桧も、いい匂いだと言われる方も多くおられるのですが、個人的には匂いが気になります。虫がいやがる匂いは、人間も嫌がるのは当然だと思うのですが・・・、僕が敏感なだけなのでしょうか・・・。ちなみに先に述べたように、僕はアレルギー体質なので、ある程度はアレルギーに配慮した住宅にしたいと考えていました。なので体質に合わない杉や桧で真壁で作るのは若干気が引けました(自然塗料でコーティングすればいいのかもしれませんが、塗装は体質的にそもそもそんなに好きではありません)。こうした体質的な問題点もあり、木造の木組みの美しさは魅力的であったのですが、乾燥収縮による気密性の低下、地震等の揺れによる断熱材の圧縮等、性能を維持出来ない点。高気密・高断熱住宅にすればする程、シロアリの被害が発生しやすくなってしまう点に納得がいかず、在来木造で家を建てるのは止めました。

 

★教訓4 木造住宅の一番の問題点は、長期的に性能が保てない事★

★教訓5 在来木造 築20~24年の蟻害発生率は38.4%★

 

 

■鉄筋コンクリート造と在来木造の混構造

 

富山県で言うと、なかなか馴染みがないこの工法ですが、東京や新潟の山間部で多く見られる工法です。東京の場合は、地下を鉄筋コンクリート造で作り、1・2階を木造住宅で作るパターンです。容積率が厳しい場合に、地下室だと容積率の緩和規定が適応されるので、東京のように極端に土地が狭い場合に地下室が選択されるケースがあります。その地下室を耐久性の高い鉄筋コンクリート造で作り、上物を在来木造で作ります。新潟の山間部等では、富山とは比べようもなく雪が積もります。1階部分まるまる雪に覆われる事も珍しく無く、そうなると木造部分が雪に覆われているのは耐久性的にもカビの繁殖的にも良くありません。その対策として、1階を鉄筋コンクリートで作り車庫にして、2・3階を在来木造にしているケースが目立ちます。

 

このように、混構造は馴染みがある地域では一般的な工法です。それに、よく考えてみると一般的な在来木造も混構造です。基礎部分は鉄筋コンクリートで出来ていて、1.2階は在来木造で出来ているので、これは紛れもない混構造だと言えます。この基礎部分の立ち上がりを高くしていけば、床下空間が一般的な居室空間にする事が出来、混構造の出来上がりです。

 

混構造にするメリットは、1階を鉄筋コンクリート造にする事で建物の耐久性が上がります。基礎の強度が高くなるので、不動沈下にも対応できますし、そのまま埋め込めば地下室にも対応できます。デメリットは、鉄筋コンクリート造と木造の土台の接合部分の雨納り(雨水が建物内部に浸入してこない納まり)が良くなく漏水するリスクがある事と、技術者が木造の事も鉄筋コンクリート造の事も詳しく解っている必要があり、そうした技術者が世の中に少ない事が挙げられます。構造的な強度はどうかというと、勿論、在来木造よりは強度が高くなります。1階部分まで巨大な基礎になっていると言えるので、木造の基礎よりは大分強度が高いです。更に、木造部分2階建(在来木造) を混構造に変えると、鉄筋コンクリート部分1階建+木造部分1階建となり、木造部分の階数が2階から1階に減るので、木造部分も壊れにくくなります。混構造の場合、鉄筋コンクリート部と木造部との間の床を木組みで作る場合と、鉄筋コンクリート造で作る場合がありますが、後者の方が格段に耐久性が上がるのでお勧めです。1、2階間をコンクリートスラブとする事で、遮音性も上がり、1階を店舗や事務所にする場合にも適切な工法です。

僕が工法を選定する時に、最後まで悩んだのが、この混構造と壁式鉄筋コンクリート造です。混構造は3階建までなら構造的に合理的な工法ですし、コンクリートの素材感と木梁とを組み合わせる事で、他にないステキなデザインを作り出す事が出来ます。コンクリートの力強さと木の持つ親しみ感をマッチさせたデザインに強く憧れました。有名な所で言うと竹原義二氏の住宅や、吉村順三氏の「軽井沢の家」が挙げられます。特に、「軽井沢の家」は2階の外部との繋がりや、混構造ならではの形態が魅力的で、僕も混構造でこんなステキな建物が建てられたらいいな~~~と、大分検討しました。僕自身2軒、混構造で設計した事があったので、混構造の基本的知識は持ち合わせていましたし、後は、構造的な特徴をどうやってデザインに生かすか考えを深めれば自ずとデザインは出来ていきます。

いいな~~混構造・・・ステキだな~~とは思うのですが、壁式鉄筋コンクリート造と比べると、どうしても性能的に見劣りします。まず、構造的な合理性が建物全体が一体的な壁式鉄筋コンクリート造の方が優れていますし、そもそも混構造は3階建までの小規模な建物向けの工法です。デザイン面では、鉄筋コンクリート造の圧倒的な存在感と比べると、個人的にはやや物足りない工法だという判断になりました。・・・でも、とても魅力的な工法なので名残惜しいです。

 

★教訓6 混構造は木とコンクリートの組合せが美しい★

 

■2×4住宅

2×4の骨組みは内部に露出させると面白い建物になります。部分的に2×10材を使用して巨大な本棚にしてみても面白いです。連続する構造を見せるという事でデザイン的にも面白味が出るのと同時に、構造体を密閉しないので腐らせる心配がありません。(床下が要注意ですが・・・)2×4工法はその工法の性質上、連続する開放的な空間構成にする事が出来ません。壁の交点には在来木造だと柱を置くだけでいいところが、2×4工法だと壁が必要になってしまいます。部屋を単独で構成する必要があります。2×4住宅は在来木造住宅に比べて、地震の際に比較的被害が小さいです。これは、構造壁は在来構造に比べ、面で地震力を全体で受けるモノコックに近い工法である事が要因としてあげられます。在来工法のように、局部的に応力が集中する工法と違い、全体に万遍なく力がかかる2×4工法はパネル工法と相性が良いです。又、プラン的に無理が出来ない工法であるので無難な建物が多いのも要因です。無難なプランの建物は壊れにくいですから・・・在来木造の場合、2×4工法に比べてプランニングに自由度があります。庭に対して一体的に繋がるように開放的に大きな窓を設置する事や、現在は法的に出来なくなりましたが、道路側に車庫用の土間空間があり全面引き戸になっているパターン、昔の家なんかは囲炉裏の上は巨大な吹き抜け空間があります。実際の強度には問題がありますが法律の隙間を突いた変わった建物も在来工法なら設計可能です。2×4工法はそうしたプランでは家を作れません。基本的には無難なプランになります。無難に壁を多く配置しなければならない工法が扱いやすいデザインというのは、洋館デザインです。三井ホームやスウェーデンハウスが有名ですが、洋風のデザインというのは、部屋のデザインにしても壁で囲まれたようなプランになるので、「壁が多く必要な工法」と「壁で囲まれたデザインが似合う洋館」が組み合わせとして適しています。なので、2×4工法を扱っている会社は洋風デザインを必然的に選んでいるのです。在来木造は2×4工法に比べると自由度が高い工法です。洋風のデザインでも、昔ながらの二間続きの和室があるような開放的な空間でも施工可能です。しかし折角、工法的に開放的な空間を作れるのだから、大空間の吹抜けや、開放的な中庭があったりする、開放感ある商品を開発して売り出す方向になります。そうして2×4住宅と在来木造住宅との住宅業界での棲み分けが行われているのです。なにより、在来木造は昔からの日本家屋のデザインが文化的にもよく似合い、輸入された2×4工法は洋風のデザインが文化的に似合います。これは、それぞれの国で風土に合わせた工法が出来、そして、工法に合わせたデザインが模索された結果です。

 

文化的に各部屋が間仕切られた洋館は、建物の床面積に対して壁が多く配置されていて、必然的に壊れにくいという事になります。2×4工法のプランと同じプランで在来木造を作れば壊れる率というのは同程度でしょう。しかし、「在来木造」というくくりには、古い壊れかけた家から、大胆な開放的な家、年代も古いものから新しいものまで様々です。比べて、2×4住宅は比較的新しい建物しかないので、データーを取れば2×4住宅の方が壊れにくいというデーターが出ただけなのです。

 

近年、在来木造にもパネル工法が普及してきていますし、そもそも個人的にパネル工法よりは筋交を使って全体的に地震力を吸収した方がベターだと考えているので、2×4住宅が在来木造より構造的に優れているとは思いません。むしろ、制限が多く扱いづらいという印象です。しかし、2×4の構造体自体は在来木造の柱のようにデザイン的に主張していない特徴があります。イメージ論になってしまって、一般の方には伝わりづらいですが、2×4工法は在来工法の柱のような荷重の流れをイメージさせる構造体と違って、連続する縦格子状の壁と床によって構成されているので、柱によって木造住宅は支えられているという固定概念がある私達に、柱が無い無重力を感じさせるデザインが可能です。その軽快な構造デザインを利用した家づくり・・・少しは面白そうではあるのですが、やはり、木造で作るなら日本の風土が作り上げた在来工法の方がベターだと思います。2×4工法は在来木造に比べてさらに密閉された工法なので、高温多湿な日本の風土では材木が腐ってしまう可能性がありますし、シロアリを呼びやすいと言う事になります。耐久性確保の為に、日本で真壁工法が普及した事実を考えると、密閉性の高い2×4住宅で建てる気には成れません。プランニングの可能性についても、2×4工法は可能性が少ないな~~という印象でワクワクしません。一般の方には無い要望ですが、僕は建築家なので、自邸を建てる事をキッカケにその工法を探求したいという思いがありました。自分で設計した家に住み、色々その建物について調査し、その経験を活かしてその後の建築家人生の糧にしたい。当時、そのように漠然と考えていたので、建築的に色んな可能性がある工法にしたかったのです。そういった意味では2×4は、デザインが限定されすぎていて工法的な面白味がありません。素人でも作れるように考えられた、合理主義的な工法です。・・・あまり共感出来ませんねこの工法は・・・。

 

★教訓7 2×4工法はプランに制限が多い★

 

■鉄骨造

建築の可能性という意味では、もっとも自由な工法と言えます。体育館のような大空間、超高層ビル等の大建築も、そのほとんどが鉄骨造です(鉄骨鉄筋コンクリート造のケースもありますが、住宅でSRCの建物はちょっとありえないので、この工法の話は除外します)。その工法的なポテンシャルで言うと、どの工法より断突で優れていると言えます。一般的な木造住宅では到底できないようなプランが簡単に実現可能です。個人的な話で言えば勤めていた時は、半数以上が鉄骨造でしたし、業務的に慣れ親しんだ工法でもあります。構造体をデザインとして見せたかったので鉄骨の柱と梁を露出させ、デッキスラブの床を露出で使用したりすると、The鉄骨造デザインという感じになります。このThe鉄骨造デザインの本質は構造体を美しく主張する事なので、理想を言えば外壁は全てガラスです。外壁をガラスにする事で構造体が浮き上がってくるのです。有名な所では、ミース・ファン・デル・ローエのファンズワース邸があります。森の中にある、シンプルな美しい構造体で作られた平屋建ての建物です。構造体以外はガラスによって構成されていて、とても透明感のあるデザインです。個人的な体験として、ル・コルビュジェのサボア邸に感銘を受けた事もあります。屋上庭園とペントハウス的なスペースがとても魅力的で単純に憧れます。このように、構造美を利用した鉄骨造の住宅は世界中にあり、個人的にもとても共感できるデザインです。

 

いいな~~~鉄骨造・・・しかし問題があります。一般的な方法で構造計算を行うと雪国では柱と梁のサイズが太すぎるのです。もちろん工夫したり、柱のピッチに配慮したり方法はあるのですが、それでも太い・・・コンクリートを柱の中に詰めた特殊な方法を用いれば違ってくるのでしょうが、感覚的には一般的に行われている範囲の素直な回答を探したいのです(金額の話もありますし・・・)。地震大国日本でデザインするには鉄骨の柱は太すぎます。先に述べたサボア邸も、細い柱が建物全体にスッキリした印象を与えています。日本のしかも積雪1.5M地域の富山で構造計算かけると、どのような柱サイズになってしまうのか・・・構造美でデザインする時は、バランスのとれた構造体の寸法にするのが必須条件です。

 

鉄骨造は断熱の問題もあります。一般的な外壁の下地はCチャンと呼ばれる鉄で出来た部材で完全なヒートブリッジ(熱が伝わる断熱の弱点)です。ウレタンを内側に吹き付けて内壁を貼ればいいのですが、柱廻り、梁廻りが上手くいかないですし、もう一つデザイン的な合理性にかけます。それよりは断熱材兼用の外壁を貼ってCチャンを露出にして棚に使うとかした方が面白いですし、鉄骨造の工法を活かしたデザインになります。・・・まあ、可能性に満ち溢れたステキな工法ではあるが、断熱性能がもう一つだと思いました。もちろん、柱や梁もウレタンを吹き付ける事で断熱面を一体にしてしまえば問題はありません。しかし、そうすると構造美をデザインに取り入れたいというコンセプトから外れてしまいます。ある程度、構造デザインと断熱との帳尻の付け方もあるのですが、感覚的にはもう一つです。断熱性の要求の低い店舗や工場に向いている工法ではあるけど、住宅には断熱や構造材の太い材寸の点で適していません。少なくとも僕の家の工法には選択出来ないなと思いました。

 

★教訓7 鉄骨造は断熱をどう考えるかが鍵★

 

■鉄筋コンクリート造

鉄筋コンクリート造の家ってどんな家なのだろう・・・自分の家を計画していた当時、正直一番想像しにくかったのがこの工法でした。僕は建物を見て回るのが好きで、日本に限らず世界中の建物を見て回っています。そうした経験の中では鉄筋コンクリート造は良く目にする工法でした。有名な所では、安藤忠雄氏の設計した鉄筋コンクリート造の打ちっ放しの建物をよく見に行っていましたし、僕の好きなル・コルビュジェもステキな建物を鉄筋コンクリート造で設計しています。学生の頃フランスに旅行に行ったとき泊まった、ラトゥーレット修道院が印象的でした。コンクリートの素朴な感じと光とのコラボレーションが、建築家になる事を夢見ていた当時の僕に突き刺さりました。この工法で建てたらどんな家になるのだろう・・・なんかワクワクします。勤めていた時に鉄筋コンクリートの造の集合住宅には何回か携わっていたので、工法的な最低限の知識はありました。

 

でも鉄筋コンクリート住宅の住み心地ってどんなだろう・・・しかし、よくよく考えてみると大学の時に住んでいた寮が鉄筋コンクリート造でしたし、寮を出てから住んでいたアパートも鉄筋コンクリートで作られていました。・・・ああ、あれか・・・そうか・・・全然、馴染み深いな・・・考えてみると、むしろ4年間も住んでいた経験がありました。寮はどうだったかと言うと、築50年のとても古い建物でした。断熱はされてなく内部はコンクリートにペンキが塗ってあるだけの建物でした。でも、まあ普通に過ごせていたな~~そういえば・・・といった感じです。特に、僕はアレルギー体質で鼻の調子が良くなく高校生の時は良く鼻水をティッシュでふいていたのですが、大学生になってからそれがパタリとなくなりました。年齢によるものか、空気によるものか、水によるものか、建物によるものか解りませんが、個人的な印象としては建物のおかげです。そうした体験から鉄筋コンクリート造に対する、個人的な印象は悪くありません。アパートに住んでいた時も、よく問題になる、隣人の生活音に対しては全く気になりませんでした。(3階建の3階に住んでいたので、足音に関しては解りませんが・・・)まあ、15年も前の話になるので記憶も鮮明ではないですが、経験を思い出してみても、悪い印象はありません。特に、大学の寮で体質改善されたのが、僕に好印象を与えています。千葉に住んでいたときの話なので、家を建てる富山と気候的な条件の違いがあるので一概には言えませんが、とにかく問題は無さそうだなと思いました。

 

デザイン的に言うと、コンクリートの打ちっ放しの壁は好きでした。重厚感があり、よく見ると均一でない所も魅力的でした。コンクリートは打設のムラが表情に出てしまいます。コンクリートはコンクリートミキサー車が数回に分けて運んできますが、施工上、打継ムラが出来たり、型枠の継ぎ目がちょっと強めに出たり、気泡が多目に入ったり、ジャンカになったりと様々な表情になります。水分量や強度、砂利によっても色が変わりなかなか扱いづらい不均一な材料です。でも、その不均一な所が焼き物のようでデザイナーとしてそそられます。不均一な所に、デザイン的な魅力があるのです。

 

構造的には鉄筋コンクリート造は大きく分けて二種類あります。壁式鉄筋コンクリート造とラーメン構造(柱と梁で構成された、柱と梁の接合部が剛接合の工法)です。「壁式」は字のままなのですが、壁で建物をささえるモノコック構造です。全体がまさに一体的になる、木造のパネル工法や2×4工法とはレベルの違う真のモノコック工法と言えます。厳密に言うと、基礎と1階と2階は別々の日にコンクリートが打設されるので施工的に一体とは言い切れない所もありますが、地震等の実績から一体的だと言い切れる工法です。ラーメン構造は個人的には住宅には相性が悪い工法であると思います。柱と梁のサイズが鉄骨造よりさらに大きくなるので、住宅の部屋のサイズには柱が邪魔すぎます。ラーメン構造の鉄筋コンクリート造は、構造的な地震による実績も、無敵とも言える壁式鉄筋コンクリートの実績に比べると、柱と梁の接合部の破断、柱の崩壊等、構造的に問題になるケースが多いです。もちろん、小規模な(住宅は建築物全体の中ではもっとも小規模な建物です)住宅という分野のたかだか2階建や3階建て程度で問題になる事は少ないですが、壁式に比べると構造的な合理性や耐震的な実績に劣り、そもそも柱が邪魔になる事を考えると、必然的に壁式の方に興味がでます。

 

デザイン的にも壁式の方が断然好きです。一体的な建物の形を成しているモノコック構造の美しい事といったらありません!当時、陶芸を趣味でしていたのですが、壁式コンクリート造は、感覚的に材料をこねて一体的に作り上げる陶芸そのものです。いいな~~~壁式鉄筋コンクリート造・・・何となく感覚に合うな~~この工法で家を建ててみたいな~~そうして僕は一歩踏み込んでこの工法で検討を始めるのです。

 

★教訓8 鉄筋コンクリ―ト造はアレルギー体質にやさしい★

 

■プレキャストコンクリート造

次の話を進める前に、ちょっとだけプレキャストコンクリート造について話してみたいと思います。プレキャストコンクリート造とは工場で作ったコンクリートパネルを現場に運んできて接合部をジョイントする壁式工法です。メリットは工場でコンクリ―トパネルを制作するので品質が監理されたコンクリートパネルで建物を構成出来るという点です。工期が短く、作業工程もシンプルなので現場打ちに比べて低価格に作れます。デメリットは接合部が漏水の原因になる事や、地震の際に金具の接合部の破断や金具を覆っているコンクリートの剥離の問題があるという事です。又、デザイン的にはパネルを組み合わせて作るので、変わった形には対応しにくいです。

 

阪神・淡路大震災では多くの建物が被災しましたが、現場打ち壁式鉄筋コンクリート造と比べても遜色無い、被害の極めて小さな優れた耐震性を持つ工法です。しかし、現場打ちに比べると施工のしやすさから近年やっと少し普及してきた工法なのでサンプルデーターも少なく、長期的な建物の耐久性を示すデーターが少ないのが気になります。デザイン的に言うと、パネルの性能値は現場打コンクリートの壁に比べて高いので、壁は薄く作れるのですが、薄い故にスッキリした感じになりすぎてしまいますし、壁の表情が均一すぎて重厚感を感じません。ダミーのセパレーターの痕がある商品もありますが、現場打ち鉄筋コンクリートの偽物ですよと、言っているようなものです。しかも、プレキャストコンクリート造の基礎は現場打ちで施工する事になるので、壁と基礎との立ち上がり寸法の幅が違ってしまい、バランス的に違和感があります。伝わりにくい表現ですが、デザイン的に鉄骨造っぽくなってしまいます。

 

しかし、この工法の最大の問題点はやはり漏水です。鉄骨造のALC(軽量コンクリートパネル)の外壁やALCを使った屋根下地にも言える事ですが、パネルジョイント部からの漏水の問題が後を絶ちません。防水業界では有名な話でメンテナンスが不可欠ですし怠れば即漏水に繋がります。そんなのは嫌ですし、コンクリートの表情的にも好きになれないので、僕としてはこの工法は現場打ちコンクリート造に比べると性能的にもデザイン的にも、もうひとつだと思います。ただ、現場打ちコンクリートは、現場でコンクリートを打設する事になるので、「職人」や「現場の事を配慮したプランニング」が品質を担っている所が多いです。それに比べ、プレキャストコンクリート造は現場作業が少ないので品質が安定しているというメリットがあります。

 

とまあ、色んな工法を性能的な面、デザイン的な面で検討した結果、当初の予定通り壁式鉄筋コンクリート造(壁式RC造)で考えてみるか~~という事になりました。プランニングをしてみて、他の工法の方が良ければ、その時点で工法を変更すればいいので、軽い気持ちではありますが、工法は「壁式鉄筋コンクリート造」に仮決めしました。

 

★教訓10 プレキャストコンクリート造はパネルジョイントからの漏水が問題★


五、具体的に考えてみる。

 

一応、工法も仮ですが決まった事ですし、もう一度仕切り直して壁式鉄筋コンクリートについて考えてみようという事で、最寄の壁式鉄筋コンクリ―ト造の建物を見学しに行きました。ミュゼふくおかカメラ館/安藤忠雄 アウトサイドライン/ダニエル・リベスキンド 舟戸公園ゲートと展望休憩所/カルロス・ヴィラヌエヴァ 井波彫刻総合会館/ピーター・ソルター 大門町バス待合所/ロン・ヘロン ほたるいか展望台/トム・ヘネガン 等、嬉しい事に富山県にはデザイン的に刺激を貰える建物がいっぱいあります。ミュゼふくおかカメラ館以外は「富山県まちのかおづくりプロジェクト」と銘打って1990-1998年の間に建築家の磯崎新氏がコミッショナーを務めて、玄人好みの建築家が海外から集められて、町の顔になるアートスポットが県内にいくつか建設されました。海外の建築家がデザインした建物を見に行くのは実に刺激的です。日本人建築家がしないような構成や材料の使い方、デザインによって作られた建物は、見ているだけでインスピレーションを受ける事が出来ます。一般の方なら、自分の家を建てる時にハウスメーカーの展示場を回ってイメージを固められると思いますが、僕は建築家なのでそうした直接的なイメージを作る前に、頭の中を柔らかくする意味も兼ねて発想豊かな建物を巡りながら考えました。どういう建物に住みたいのか考える時に、なにも建物を見て考える必要はありません。林の中に入って、木々の間からこぼれる光を見て考えたり、洞窟に行ってみたり、植物の葉っぱを見てみたり、雨宿りしている虫を見て考えたり、考え方は自由です。そして、自分の家なので自分が持ったインスピレーションをそのまま形にしてもいいという建築家としてワクワクするような状況が目の前あります。あ~~~楽しいな~~~という感じで、多角的に模索していきます。

 

ところで、嫁と相談して家づくりを決めてないじゃないかと思われる方もおられるかもしれませんが、僕はこの段階では結婚はまったく想定していません。自由気ままな一人暮らし用の家として計画しています。なので、嫁にキッチンはこうしたいと言われる事も無く、ひたすら自由に考えています。結婚した後に計画すると、生活する事を第一に現実的にプランを考えざるを得ません。しかし、この時僕は、そもそも結婚するかも解らない状態でしたので、ほんと自由に設計しました。両親もまったく口を出さないタイプでしたし・・・。

 

プラン的にどういう感じにしたいとかは明確に無かったのですが、「中庭空間」「ペントハウス」「屋上」「風景と繋がる開放的な室内空間」「トップライト」という重要なキーワードはありました。ペントハウスはフランスで見たサボア邸のイメージです。風景と繋がる開放的な室内空間は、実家が富山で言うと、わりと都心部にあり周囲からの視線を遮る為に窓ガラスが全て型ガラス(すりガラス)にしていて、閉鎖的な住空間だったので憧れがありました。中庭は、京都の坪庭のイメージで、そんなに大きくなく室内の一部になるような空間に憧れていました。トップライトはフランスで見たラトゥ―レット修道院の礼拝室のトップライトから注がれる光が美しくて、そんな光のある家に憧れていました。今、振り返ってみるとやはり経験した事のある空間で自分の感性に合う要素を取り入れたいと思っていたみたいです。となると、自邸って建築家にとって当たり前ですが意味深いものですね~~自分の建築に携わった経験を見直し、自分を成長させ得る最大のチャンスです。

 

ところで、そうした取り入れたい要素はあるものの、実際に取り入れるかは別問題です。個人的な建築家としての主義として「敷地の声を聞いて設計する」というのがあって、あくまで敷地の特徴を利用した建物にしようと思っていました。その意味では、土地を買った段階で設計の半分が終了しています。見ていた土地はどれも土地の声が明確に聞こえる土地でした。その中で最もフィーリングがあった土地を選んでいます。選んだ土地は、東側に前面道路の県道があり、そのずっと奥には立山連峰がそびえています。南北に長い9×30m程度の90坪の敷地でした。西側には田んぼが広がりその奥に呉羽山丘陵が広がります。敷地を見た時、直観的に東側の道路側を閉じて、西側の呉羽山側の風景と繋がる開放的なプランにしたいと思いました。

 

さてさて、イメージばかり膨らましていても仕方ないので実際に設計してみます。土地の購入段階でラフプランを作り、最低限の事は確認していますが、実際の設計はこれからです。・・・よし、まずは思いつくままに設計してみよう・・・こうしてプランの検討が始まりました。

 

★教訓11 自分の家づくりのテーマを決めよう!!★

建築家のいいところは、自分で設計出来る事です!空いている時間は全て自分の家のプラン検討に充てました。自分の家の事を考えていると楽しくて仕方なく、遊んでいるようなものです。ケースバイケースですが僕は基本的には白紙に適当なラフスケッチからデザインを始めます。直観に任せ、どんどんラフ図面なりパースなり書いていきます。方向性が少しでも見えたら、三次元パース作成ソフトで適当にパースを作図したり、ボリューム模型を作って、そのプランを保留にするなり却下します。設計当初は、断定せずに広範囲に考えていくように心がけています。

 

■直方体プラン

敷地を購入する前にとりあえず配置してみたプランです。コンクリートの建物は基本的には何もデザインしなくても、ボリュームの形をシンプルに構成すれば後は素材感で十分勝負できます。建物の形が直方体であれば、あとは適宜バランスを見ながら窓を配置するだけで、他の工法に無い圧倒的な迫力のあるコンクリートBOXの出来上がりです。正直、予算に余裕はなかったですし、もっともお金のかからない直方体という形で構成するのが金銭的にもデザイン的にも無難な解法だと言えました。建物は、基本的に間口が広い方が豪華に見えます。直方体のボリュームを間口を広く道路に並行になるように配置して、事務所になる一階部分は正面道路側を開放的にデザインして、住宅部分である二階は正面の道路側は極力窓を少なくして、その替わりに道路と反対側の田園風景が広がる方へ大開口を設ければ完成です。事務所という要素が入っている事、土地の声、コスト、総合的に考えてこのプランが一番あたりさわりのないプランであったと思います。ボックスというシンプルな形状に、僕が求める要素や機能を盛り込んだ究極の箱というのを検討してみるのも、今考えるとそれはそれで面白かったのではないかと思うのですが、設計していた当時はBOX型では少し物足りないと思っていました。

 

夢を追いかけすぎて過剰設計になっているか、実際に設計に取り入れるべき内容なのかを適切に判断する事は重要なポイントです。しかし、正直全てを適切に判断するのは至難の業です。家づくりという夢がまさに手の届く所まで来ています。そうすると、どうしても必要以上の希望を盛り込んでしまいます。シンプルに考えればいいものを「やってみたい」「トライしてみたい」という欲求にかられます。住んでしまえば、やっぱり必要なかったとなる事も、夢づくりに浮かれてしまって盛り込んでしまいます。これから家づくりを考えられる方は、この点を注意して家づくりを楽しんでほしいです。

 

★教訓12 本当に必要な工事か落ち着いて考えてみる★

■ピロティプラン

敷地は道路側から田んぼの方へ、風や土地の気の流れがあります。その流れに浮かぶように建物を配置したら、ステキだな~~と考えました。同時に建物がカーポートになります。ユニテ・ダビダシオン/ル・コルビュジェや、広島のピースセンター/丹下健三 のイメージです。どちらも一階がピロティ空間で建物が浮いているイメージです。僕の家のケースで言うと、階段を上がって左側を事務所、右側を住宅に分ける計画です。部分的にトップライトから光が差し込み、上部からの光と敷地裏側に広がる田園風景を取り込む事で得られる広がりで建物をデザインしてみました。土地に馴染み、ステキなプランになる予感がします。ただコストの話は別ですが・・・平屋を持ち上げているので事務所と住宅部分の面積の倍のボリュームが必要です。建築費も倍まではいかないでしょうが1.5倍にはなりそうです。一般的なプランが3000万ならこのプランは4500万になってしまいます。・・・・そりゃ無理だな、どう考えたって・・・名残惜しいですが、このプランとは直ぐにバイバイしました。

■搭状プラン

塔状の建物も面白いと思いました。敷地からは東側には富山を代表する美しい立山連峰(富山県人にとって立山連峰はとても親しまれている山で、多くの方が立山の方を向くように家を建てられています)。西側には呉羽丘陵が広がり、全方向が割と開放的な敷地です。そうした開放性を取り込むのがこの塔状の建物です。各階の空間が外部と繋がり、逆に隣接する部屋の無い独立したスペースになります。各階が独立した茶室のような空間になり面白いかな・・・と一瞬思いましたが、使いづらいので直ぐに却下しました。(笑)

 

■ボリューム分割プラン

必ずしもひとつのボリュームで建物を構成する必要はありません。特に今回は事務所と住宅という二つの要素があるので、この二つをどの程度離して構成するかは、生活するのにとても重要な要素です。事務所は家と別々がいいと言われる方も結構おられるように、生活と切り離した方が、気持ちが切り替わっていい面もあります。僕は、家賃の問題から事務所と住宅を別々に建てる程、余裕が無いので、同じ建物にする必要がありました。しかし、このようにボリュームを区切って外部からしかアクセス出来ないようにしてしまえば、ある程度意識的に分かれた状態になります。その別れた状態をそのままデザインに利用するとこのような形態になり、これはこれで面白い方向性だな~~と思います。ボリュームを区切るのは何も事務所の場合だけではありません。寝室空間とリビング空間を区切ったり、二世帯住宅で世帯ごとに区切ったり、離れの特別な空間と区切ったり、色んなケースが住宅にも想定されます。デザイン的にも一つのボリュームで構成するより多彩な構成にする事が可能で、検討次第でまだまだ可能性はありそうです。良さそうだけど、これにしてもお金がBOX型に比べると結構かかるしな・・・面白味は出しやすいけど、冷暖房の効率が悪いし、う~~ん、まあ保留という所です。

■十字プラン

もう少し大胆な形を模索しようかなという事で色々模索した結果、十字プランは形態的に変化があって面白味があるな~~っと、考えていました。二階の直交する空間が立山連峰と呉羽丘陵を額縁のように切り取るプランです。しかし、僕の土地は立山連峰側は道路を挟んでですが住宅もちらほら近くにあり、切り取る程の風景になっていません。反対側の呉羽丘陵も、田園越しに広がるのどかな丘陵ですが、麓には大分離れていますが住宅もちらほら見えます・・・そこまで象徴的な切り取り方をする程の風景ではないな・・・「なんとなく、呉羽丘陵側をのんびり眺める事が出来る家」これが、この土地には似合っていそうです。なので早々と却下します。

■デザイン検討

まあ、検討の結果なんだかんだ言ってボリュームをコンパクトにデザインする事が、コスト的な面、耐震的な面、冷暖房効率の面、を総合的に判断すると適切だなという現実的な話に不時着しました。ボックス型でもいいのですが、やっぱりもう少しトライしてみようと思って検討していきました。その過程で、やっぱり屋上空間はぜひともほしいので、ついでにペントハウスを予備室として屋上空間と繋がる形で設置しようと思うようになりました。そもそもお金もないし、結婚するかもわからないから主寝室だけでいいやと当初思っていたのですが、やっぱりもう一部屋くらいないと、もし結婚して(そうそうにする事になるのですが・・・(笑))子供が生まれたらどうにもならないな~~~と思い、将来なんとか分割できる大き目の寝室と、ペントハウス空間兼予備室を追加しました。なんとか、子供2人までは対応出来るプランです。

 

ペントハウスを追加する事は決定したのですが、ペントハウスは外観デザイン的になかなか上手くいきません。住宅地にもたまに屋上に出られるように階段室が設けられているケースがありますが、取って付けたようなデザインになっています。どうすればデザイン的に上手く行くのだろう・・・色々検討して、正面から少し3階のペントハウス部分を後ろにセットバックさせたらペントハウス部分が主張しないからデザイン的に問題なくなるのではないか、とか、色々と検討したのですがもう一つです。そうして検討していく中で、逆にやはりデザインのアクセントとして利用すべきだという結論に達し、縦方向にボリュームを区切って縦ラインでデザインすると、デザイン的に成立する事が判明しました。

 

■完成プラン

そうして出来たデザインが、実際の建物のデザインとなる訳です。ペントハウスのデザイン的な違和感を無くす為に縦にボリュームを区切り、区切る事で全体としてリズミカルな構成にしました。車寄せが欲しかったので、庇を1.2m程度と大きく出してアクセントを付けました。住宅用と事務所用の入口を兼用しました。個人的な要望として、中庭空間を作ってみたかったのですが、購入した敷地が周囲の視線をあまり気にしないで良かった事や、コスト的に増額になる事を考慮すると、まあなくてもいいか・・・と諦めました。しかし、諦めたはずなんですが、未だに盛り込んでいたらどうなっていたかな~~と若干後悔しています(笑)。

 

余談ですがユーチューブに当時検討したプランの動画をUPしているので、気になる方は覗いてみて下さい。

https://www.youtube.com/user/SORASORA11

★教訓13 後悔しないように考え抜く★

 


六、建物の仕様の詳細を決定する。

 

プランが大体煮詰まった所で、材料や建物の断熱等の仕様を決めていかないといけません。お金は無かったですが内部のインテリアは建具と家具を造作(職人さんの手作り)で作って統一したデザインにしたいと思っていました。コンクリートの壁や天井を極力露出させて構造の魅力を建物に取り入れる計画としました。ところで、一般的にコンクリート住宅、特にデザイナーズのコンクリート住宅はデザイン優先で断熱に関しては低い性能値です。しかし、僕は断熱性能にもある程度は力を入れたかったので、一般的に高気密・高断熱と言われる程度の性能値は確保する設計としました。このように、住宅は建物の詳細を一つずつ決めていく必要があります。どのように決めたのか項目毎にお話ししてみます。

 

■断熱と気密

屋根は外断熱、壁は内断熱としています。屋根は防水下地のボード状断熱材、壁はウレタンを吹き付けています。たまに、お客様にウレタンは燃えるので怖いと言われる方がおられますが、現在一般的に利用されているウレタンは自己消火性のある製品で、火元が離れると鎮火しますので何の問題もありません。昔は溶接する時に出る火で火事になったりする事もありましたが、現在は改良されていますのでそのような事もなくなりました。なので、ウレタンは木のように燃え広がる事はありません。ウレタンの厚みはラット35で融資を受ける関係上、フラット35の技術指針に合わせた性能値としました。

 

余談ですが、当社に来られるお客様は最低限、次世代省エネルギー基準を採用されていかれます。性能値を求められるお客様には北海道の次世代省エネルギー基準程度の仕様で行う事もあります。僕は、壁の断熱性能はある程度で良かったので、富山県で建てる場合、次世代省エネルギー基準だと35mm(窓のトレードオフで17.5mm)、フラット35基本基準だと25mmになりますが、僕の家は窓のトレードオフ(窓の性能を高める事で、建物の断熱材を薄くしても同等の性能があるとみなす基準)が適応されるので次世代省エネルギー基準以上の25mmで設定しました。この仕様で富山だと十分暖かいです。実家が一般的な大手ハウスメーカーで建てた木造住宅ですが、体感的には問題にならない程、僕の家の方が暖かいです。断熱材の量で言うと、実家の方が厚く施工されているので気密性の差だと思います。あとは、木造の実家はあきらかに建てた当時より年々、隙間風が多くなって性能が落ちてきています。しかし、僕の家はまだ4年間しか経ってないですが、まったく性能の劣化は感じません。そして、住んでいて性能を維持していきそうな雰囲気があります。何故コンクリート住宅は断熱性能が落ちていかないのか・・・それは、まずコンクリートを固めたものなので気密性が落ちる事はあり得ませんし、建物は殆ど揺れないし、コンクリートは殆ど乾燥収縮しません。この性能が劣化しない所が何時までも快適に住む事が出来る安心感に繋がり、鉄筋コンクリート住宅で建てて良かったという思いに繋がっています。

 

ここで、ちょっと断熱と気密の話をしておきます。イメージをつかむ事は断熱と気密を考える上でとても大切な事なので衣服の断熱で例えてみたいと思います。セーターは断熱材です。何故セーターを着ていると暖かいのでしょう・・・それは人間が発熱しているからです。そして、風が強い日にセーターだけで外に出るとどうでしょう・・・風がセーターの内部を通り抜け、せっかく体温で温めた空気が逃げてしまいます。これが気密性の低い状態です。この状態を防ぐ為に例えばウインドブレーカーを着ます。暖かいですよね・・・風が強くても大丈夫になりました。今度は暖かくなって汗をかいてきました。人は呼吸や汗で水分を放出します。(呼吸では二酸化炭素も放出します)レインコートを着たりすると内部が蒸れたりしますよね・・・この時レインコートをバタバタさせて空気を入れ替えるのが住宅の換気にあたります。鉄筋コンクリートは気密性がとても高いです。そして、その性能は木造住宅と違い新築時の一時的なものではありません。窓や換気扇といった僅かな部分を除いて隙間のない完全なる高気密住宅です。高断熱かどうかは設定する断熱材の厚み次第です。この高性能な気密性能により適切な換気計画を行わないと結露しやすいというジレンマがあります。コンクリートから水分が蒸発して結露になっていると思われている方も多いですが、表にもありますがコンクリート自体は120日程度でおおよそ乾燥しています。1年程度で乾燥が終わりますが、諸説ありますが完全に乾燥するまで2年かかると言われています。建物が建ったばかりの時は建物からは沢山の水蒸気が出ています。木や合板等の建材からも出ていますが、最も出ているのが断トツでクロスの糊の水分です。クロス屋さんはみんな知っています。何故かと言うと、クロスの施工が冬場の場合、寒いので窓を閉めて(少しだけ開けている状態)施工しますが、窓が結露だらけになってしまうので一目瞭然です。コンクリートを例えば12月に打設してその後に窓を付けている時も結構ありますが、まったく結露はしていません。打設直後ですら窓を見ている限り印象的にはまったく水分は出ていません。しかし、クロスの施工中に出る糊の水分は半端じゃないです。窓がビショビショになります。そして乾燥しきれなかった糊の水分は初年度の冬に結露として出てしまいます(完全に乾燥するのは2年程度かかるのを実験した事があると、クロス屋さんが言っていました。本当かは不明です)。

 

と、この様に、建物が建った直後は水分を多く含み、水分を放出しやすくする為に換気に気を配る必要があります。完成直後はもちろん、人や料理によって常に水分が放出されるので、気密性の高い住宅はその水分を排出せずに溜め込むと結露しやすいと言えます。なので、高気密な建物は換気計画が大切なのです。コンクリートの建物が結露しやすいのは、高気密だからでコンクリートの水分によるものではありません。僕の家はどうかというと、初年度はガラス部分はほとんどしていませんでしたが、サッシ枠にそれなりに結露しました。6月末から7月末が躯体工事で、クロス工事が9月末でした。12月初旬まで140日程度躯体工事終了から日数があるので、躯体の乾燥はほぼ終わっているので、クロスの糊の水分だと予想されます。当時、「あ~~~やっぱりコンクリート住宅って結露しやすいのかな?」と思っていましたが、2年目からは窓枠に若干する程度で、ほとんどしなくなりました。今思えば、あれは確実にクロスの糊の水分だったのだと思います。ちなみに木造住宅でも、クロスの糊の問題で引渡し時はそれなりに結露していますが、2年程でしなくなるので安心して下さい。住宅営業の人は、「当社の建物は全く結露しません」なんて、簡単に言いますが、全くの嘘ですし、実際に何で結露しているかすら解っていません。ちなみに、換気扇は回しておく必要がありますのでご注意下さい。

 

★教訓14 初年度は結露しやすいので換気に気を配る★

 

■窓について

壁はともかく窓は高性能の窓にしないといけないと思いある程度の高性能サッシを採用しています。窓の冷気って冷たいですもんね!断熱材の断熱性能+換気による熱損失+窓の断熱性能=建物全体の断熱性能となる訳ですが、建物全体の熱損失とは別の話として、そもそも窓の性能が低いと窓際がコールドドラフト(冷気が床に流れる事)で寒くなります。なので、窓は高性能のものを使いたい所です。僕が採用したのは、外側がアルミで内側が樹脂の複合サッシです。富山で言うと、新築住宅の4割程度に採用される高性能サッシです。数年前までは、樹脂とアルミ複合の高性能複合サッシはそれほど普及していませんでしたが、近年それなりに普及してきています。さらに、富山ではほとんど売れていませんが、2015年に各サッシメーカーがトリプルガラスの樹脂サッシを発売しました。

 

そうした中で鉄筋コンクリート造の場合、一般的にはビル用の鉄筋コンクリート用サッシを使用します。もちろん、コンクリート用なのでコンクリートに対して納まりはいいのですが、いかんせん価格が高い!そして、なんと逆に一般住宅サッシに比べてビル用の商品は極めて断熱性能が低い・・・こうしたコンクリートビル用のサッシを使っている高価格帯の鉄筋コンクリート住宅は実は多く、そうした住宅は高価格なのに寒いという事になってしまうのです。何故寒いのか?そもそも鉄筋コンクリート造は隙間などありません。コンクリートが流し込まれた壁なので隙間は0です。木造のように木が収縮する事によって気密性、断熱性が低下する事もなく経年変化による性能値の低下も極めて小さい素晴らしい工法です。公共建築で、窓だけペアガラスに改修した非断熱の築40年以上のコンクリート造建物のなんと暖かい事か・・・。なのになぜ、ネット上の口コミで寒いと言われていたり、床暖房が必須と言われてしまうのか・・・それにはいくつか理由があるのでちょっとご紹介します。

 

まず第1に、窓の性能値が低い建物が多い、第2に鉄筋コンクリート住宅は高性能なものも性能値の低いものも同じくくりとして見られている、第3に暖房方式が適切では

ない。という理由があります。本来、構造方式が同じでも断熱に対してはそれぞれ違う考え方で作っているので、どんな鉄筋コンクリート住宅を作っているかで分けて考えないといけません。それなのに、何故同じくくりにされてしまうのか・・・それは、そもそも全体の1%の人しか鉄筋コンクリート住宅を建てないので情報が極めて少ない事が理由に挙げられます。本来、工法が同じでも建物をどのように作っているかによって細分化して考えないといけないのに、情報が少ないので同じ鉄筋コンクリート住宅の情報として取り扱ってしまうのです。例えば、木造住宅でも寒い家もあれば暖かい家もあります。真壁で隙間風の入ってくる住宅もあれば、高性能な住宅もあります。小さな頃から馴染みのある木造住宅の事ならある程度細分化して考えられますが、馴染みのない鉄筋コンクリート住宅の情報は同じ種類の建物の情報として認識してしまうのです。さらに、比較的仕様の決まっている木造に比べて、鉄筋コンクリート住宅は、色んな仕様で建てられています。例えば、木造住宅で断熱材を入れないというのは、現在さすがにありえませんが、高気密の鉄筋コンクリート造では当然の様に非断熱のケースが存在します。東京近辺ではデザイナーズアパートなんて内外コンクリートの打ちっ放しで非断熱なんてあたりまえですし(何を考えているのかと思いますが・・)、戸建住宅でも同様のデザイン重視の判断で非断熱の住宅が作られているケースもあります。

 

前に話ましたが、僕も大学時代の寮は非断熱の鉄筋コンクリート造でしたが、寒いとは思いましたが住めない程ではありませんでした。気密性が高ければ、断熱性能が0に近くても問題無いのです。以前、極寒のトルコのカッパドキアで石を削った住宅をいくつか見ました。地中に埋められている訳ではないので地熱を利用している感じではないですが、それでもとても暖かい住宅でした。気密性が高い事、石の壁や天井が蓄熱体となって輻射熱で室内を快適にしているのが感じられました(内部を掘れる程度の柔らかい石なので少しは断熱性能があります)。コンクリート住宅も同じで、壁や天井を蓄熱すると、とても快適な住宅になります。コンクリートの躯体に蓄熱した状態の鉄筋コンクリート住宅の快適性は、工法的に蓄熱性能の低い木造住宅とは一味違います。

 

窓の性能が低いと結露が問題になるばかりか、窓で冷やされた空気がコールドドラフトとして床を冷やし足元が冷たくなります。何故、断熱性や気密性の低い建物は足元が寒くなり、天井面と床面の温度差が大きく違ってしまうのでしょうか?その最大の理由は窓によって冷やされた空気が床面に流れるからなのです。隙間風も冷たいので床に流れます。断熱性能が低ければ室内の外壁側の空気の温度が壁に冷やされて下がり、冷たく重くなった空気は床に流れます。このように、冷やされた空気が床に流れる事で、部屋の上下に温度差が生じるのです。足元が暖かい室内を作る第一歩は、建物的に一番断熱性能の低い窓部の性能強化なのです。

 

鉄筋コンクリート造はその性能値や希少性からお金持ちに好まれ、お金持ちは鉄筋コンクリート造の設計を建築家に依頼します。依頼された建築家はデザイン的な差別化を計り内外打ちっ放しのハイセンスなデザインを提案し、開口の大きな性能値の低い窓で大空間を演出します。壁一面がガラスの壁のなっていて(しかも、性能値の低い窓)、断熱性能という見地からみるとありません。冷暖房にイニシャル費用+ランニング費用を掛けられるのであればいいのですが、そこまでお金が回らないケースも多く、お洒落だけど寒い家が出来上がるのです。断熱性能の高い家にするには窓を小さくする事も大切です。窓は壁に比べて断熱性能値が極端に低いので窓が小さければ小さい程、高性能な家になります。コンクリートで住宅を建てる場合、コンクリートの壁を見せてお洒落にしながらも窓のサイズや、断熱効率の良いプランニング、適切な冷暖房計画を行う事で、快適でオシャレな鉄筋コンクリート造の住空間が手に入るのです。

 

★教訓15 断熱性能とデザインと両方兼ね備えた鉄筋コンクリート住宅を目指そう★

 

■冷暖房の話

鉄筋コンクリート住宅は、木造住宅と同じ考え方で冷暖房を考えてはいけません。考え方を間違うと鉄筋コンクリート住宅は快適な家に成りません。逆にコンクリートの蓄熱という特性を利用して冷暖房を考えると、木造住宅に無い輻射熱のある、まろやかで暖かな空調になります。キーワードは「コンクリートは蓄熱体である」という事です。

 

そして、よくコンクリート住宅って夏は暑いですか?と聞かれますが、まったくそんな事はありません。冷房は外気温にもよりますが、富山の気候で言うと、凄くよく効きます。うちの家では僕が29度に設定したらいつの間にか嫁が30度に設定していますし、なんなら気づいたら嫁が31度に設定している時もあります。コンクリート躯体の室内側を工事中に触ると、夏は冷たいと感じ、冬は当然ですが冷たいと感じます。日差しで熱せられた熱が内側まできている印象はありません。なので、冷房負荷がそこまである訳ではないので、気密性の高いコンクリート住宅は良く冷えるのです。そもそもエアコンのカタログ事体にも記載がありますが、エアコン畳数の目安「10畳~12畳」というのは、木造なら10畳用、鉄筋コンクリート造なら12畳用という意味です。カタログの下部に注意事項として書いてあるケースもあるのでご確認頂きたいのですが、同じ能力のエアコンだと鉄筋コンクリート造の方が大きな部屋を暖められるのは常識です。

 

個人の感想になってしまうのですが、鉄筋コンクリート住宅に住んでいる感想とすれば、冷房は凄く良く効きます。問題は暖房です。もう一度確認するとコンクリートは巨大な蓄熱体です。蓄熱暖房機ですら中に入っているのは煉瓦ですから、コンクリートより蓄熱しません。安定した空調を行うには蓄熱体が不可欠な事は周知の事実ですが、この蓄熱体を上手く利用出来るかどうかで大違いです。何故か?人が暖かいと感じる作用温度は室温と平均輻射温度を足したものを2で割った数値になるのです。つまり壁が冷たいと室温が暖かくても寒いのです。コンクリートは蓄熱体なので、エアコンを入れ始めたばかりのタイミングでは熱を奪います。熱容量が大きいので温まるのに若干時間が必要です。なので、壁の温度が高くならず「エアコンの効きが悪い」という事になってしまうのです。しかし、溜めこまれた熱は室温が下がると放出される事になるので、エアコンを消した後は、木造住宅に比べて暖かい状態が続きます。さらに、壁の温度がある程度上がると、輻射熱で体感的に実に心地いい暖房となります。この蓄熱という特性を上手く利用するのがコンクリート住宅の冷暖房の鍵なのです。ちなみに床暖房は床の温度を上げる事で、室内の平均輻射温度(壁、床、天井の温度の平均)を上げて、暖かいと感じさせる暖房です。室温はエアコンに比べてそれほど上がらないです。床暖房で室温も上がると勘違いされている方が多いのですが、空気を循環させているエアコンと比べるとほとんど上昇しません。床暖房を入れられた方は、たいてい床暖房とエアコンを併用されています。床が暖かくて気持ちがいいのですが、室温もそれなりに高くする必要があります。もう一つ注意点として、床暖房はラグ(テーブルの下に敷くカーペット)を基本的には敷いてはいけません。ラグが断熱材となって床が必要以上に高温になり、床を駄目にするケースがあります。これは、ラグの性能、床の材質によって違うので一概には言えませんが、そうした事が起こり得るやり方なのでご注意下さい。ちなみに、妹の家が床暖房の上にラグを敷いていて、新築一年で床を張替えていました。又、石油ファンヒーターは結露の原因となりますので、近年ほとんど使われていません。二酸化炭素が上昇して自動的に直ぐに止まってしまいます。使えば、恐ろしい程すぐ温まりますが・・・。ちなみにガスファンヒーターも内部に石油ファンヒーター以上に水分を放出するので、結露の問題があります。温水ルームヒーターやFF式暖房機は、水分を外部に放出するタイプなので結露の心配がありません。まあ、この他にも色々ありますが、ライフスタイルや建物の仕様に合わせて選定する必要があります。

 

ではどういう空調がベターなのか・・・これはどのような住環境を求められるかで違ってしまうので一概には言えませんが、僕のケースを参考に考えてみてください。場所は北陸・富山県富山市の一般的な平地です。8月の平均最高気温は30.9℃ 1月の平均最高気温が6℃ 平均気温が2.7℃ 平均最低気温が-0.1℃です。寒い時はマイナス2~3℃とかにはなっています。雪国なので、それなりに寒いです。夏も暑く、東京と同じくらいの気温だと思いますが空気がじめっとしているのでまだるっこい暑さがあります。場所が違えば考え方が違うので参考までに記載します。

 

設計では、冷暖房計画は2階の住宅部分のLDKは蓄熱暖房器+エアコンで行い。その他の各室には個別エアコンで行う計画でした。エアコンで足りない時は赤外線の電気ストーブか二酸化炭素で空気が汚れるけど最悪石油ファンヒーターで対応しようと考えていました。富山では蓄熱暖房器を利用するケースが多いです。床暖房程イニシャルコストもランニングコストもかからないですし、深夜電力で蓄熱できるので経済的です。床暖房に比べるとはるかに選定するケースは多いです。デメリットは使わない冬も我が物顔で部屋の中にド~~~ンとある事です。幅1.6m 高さ0.8m 奥行0.3m程度なので、部屋に置くと結構大きいです。僕の家は蓄熱暖房機の上を棚にして目立たなくしてありますが、それでも気になります。その蓄熱暖房機が冬は大活躍します。蓄熱暖房機は輻射と対流の双方によって人を温めます。蓄熱暖房機の前に無印良品で買った体全体で寄りかかれるクッションを置いて、本でも読んでいると最高にくつろげます。暖炉のような感じで使えますが、暖炉のような手間はいっさいかかりません。エアコンの暖房に比べて、輻射暖房でもあるので体の芯から温まるような感じで実に重宝しました。コンクリートに蓄熱するので朝起きても前日の余熱で室温が18℃~20℃程度あり実に快適です。しかし、一時的に使う部屋の場合はこのやり方だともう一つです。エアコンで温めても、壁がもうひとつ温まらない・・・まあ、問題無いと言えば問題無いもですが、LDKが快適なのでLDKと比べるともう一つです。

 

そして、一階の事務所部分はエアコン+遠赤外線ヒーター(足元)で暖房しています。床の土間下に断熱はしてあるのですが、エアコンだけではやはり若干足元が冷えます。近くに遠赤外線ヒーターを置けば問題ないのですが、ダメではないけどもう一つです。石油ファンヒーターを使えば、恐ろしい程一瞬で温まります。コンクリートの躯体なんかも一気に温まる感じです。しかし、この方法は窓が結露してしまいます。実際にはアルミと樹脂の複合サッシはほとんど結露していません。しかし、事務所部分の入口の扉の結露がまあまあ酷い・・その他に、美しく見せる為に既製品の窓ではなく、ガラスとアルミの形材を現場で組み合わせたガラス壁のような窓も設置してあるのですが、ペアガラスにしているのでガラス部分はほとんどしていませんが、枠の部分がアルミそのものなので枠が結露してしまいます。当たり前ですが、建物は基本的に性能の弱い部分で結露が始まるので、僕の事務所の場合、ビル仕様の断熱性も気密性も低い入口のドアという事になります。ある程度は高断熱な家にしたかったので、ほとんどがアルミ樹脂複合サッシになっているのですが、壁一面に光が落ちてくるようにデザインしたトップライト部分や、外部とキレイに繋がるようにデザインしたガラスの壁の部分、ビル仕様の玄関ドアといった、デザインを優先している部分から結露してしまいます。ガラス部分は断熱性を配慮して全てペアガラスなのでほとんどしないですが、アルミの部分がどうしても結露します。当然ですが、石油ファンヒーターを使えば使う程結露するので、アルミ部分を拭いたりするのが面倒臭くって石油ファンヒーターは使うのを止めました。

 

石油ファンヒーターは空気が極端に悪くなってしまうので、機械換気では間に合わないので、窓を開けて換気しないといけないですし、その度に冷気がドバ~~~と入ってきます。室内は暖かいですし、それこそコンクリートの壁も蓄熱して温められているので、ちょっとなら窓を開けても寒くありませんが、1時間毎に窓を開けるのは面倒臭いですし、冷気自体は冷たいので石油ファンヒーターは使わなくなり、エアコンと遠赤外線電気ストーブで暖房を行うようになりました。まあ、問題無い程度ですし、最近のエアコンは高性能ですぐ温まるイメージではあるのですが、それでもエアコンで建物を芯まで温めるには時間がかかります。前日の余熱で部屋事体は18℃以下には成らず、そこまで寒くなりません。実体感として恐ろしい蓄熱能力だと思うのですが、温めるのにも時間がかかります。・・・・なにかいい方法ないかな・・・そう思ってある時、エアコンの24時間暖房を試し始めました。

 

近年エアコンの24時間暖房って流行ってきていますよね、書籍の中には数冊ですがエアコン1台で24時間暖房で全館空調なんてものもあります。有名な所で言うと、三井ホームさんは大々的に全館暖房を行っています。理屈の中では、熱が損失する量より加熱する量が増せばいいという事になりますから、エアコン一台分の制作可能熱エネルギー以下に建物の損失熱量を設定すればいいという事になります。損失熱量とは①床 ②天井 ③壁 ④窓 ⑤換気口 ⑥レンジフード等の壁貫通部分からの熱損失 ⑦換気による熱損失 ⑧建物の隙間からの漏気、の合計になります。加熱の方は①暖房機器 ②人体による発熱 ③調理等で使用するお湯 ④調理による発熱 ⑤パソコン、冷蔵庫等の家電製品による発熱 ⑥照明による発熱、くらいですかね・・・これらを比較した時に同量であれば安定するという事になります。

 

家全体で考えるとそういう話になるのですが、もう一つ問題があります。家の温度全体を均一にする為に空気を撹拌する必要があります。エアコンは風を送ってはいるのですが、エアコンの風だけで仮に、ドアを全ての部屋を開けっ放しにしたとしても均一な温度にはなりません。考えてもみて下さい、ちょっと天井高さが高いだけで、天井にプロペラファンを付けて空気を撹拌する必要があるのです。ちょっと部屋が広くなるだけでも、奥の方と手前の方では温度が違ってしまいます。一つの部屋でもエアコンの撹拌だけで部屋全体を同一温度にするのは難しいのに、扉をあけただけで隣の部屋も暖かいというのはありえません。機械を使って空気を流してやる必要があります。

 

近年の住宅には換気ルートというものがあります。換気ルートとは、外部の空気を取り込んで室内の汚れた空気を排気するという流の事です。室内の空気は外部の空気に比べて汚れています。道路の車の排気ガスで、外部の空気の方が汚れているんじゃないの?と思われている方もおられますが、そうではありません。建物の中には人が住んでいます。人は酸素を吸って二酸化炭素を出しますし、人は呼吸と汗で1日当り大人だと大体1リットルの水分を外部に排出しています。大人2人、子供2人の家庭だと人が排出する水分だけで3リットルになります。換気しないと3リットルの水分が結露するという事になりますし、そもそも二酸化炭素濃度の増加で気持ちが悪くなってしまいます。水分と二酸化炭素を含んだ室内の空気を外部に排出して、酸素濃度が高く単位体積あたりの水分量の少ない(湿度とは違います)空気を内部に取り込む必要があるのです。

 

その換気を合理的に行うのが換気計画というものです。住宅で言うと一種換気か三種換気になります。二種換気は外部からの空気を取り込むのを機械で行う事により室内を外部より圧力の高い状態にする換気なので、室内の水分を含んだ空気が建物の隙間から漏れていく事になり壁内結露を誘発するので、住宅では一般的には選択されません。三種換気は室内の空気を換気扇で外部に排出し、外部の空気はリビングや寝室、子供部屋に設けた、小さな穴から自然に空気が入ってくるように設定した換気方法です。一般的にはトイレの換気扇を24時間連続運転する方法が採用されます。問題点は冷たい外気が普段過ごしている部屋(LDKや洋室)に直接入ってきてしまうので、室温が下がってしまう事と冷気が直接体に当たると寒い事です。しかしながらこの方式がイニシャルコストが一番かからないので、北陸で言うと大半がこの第3種換気方式だと思います。この換気ルートは同時に建物中の空気温度の流れにもなります。換気ルート状、上手(かみて・居室等)の部屋から下手(しもて・トイレ等)の方に空気の流れと共に熱が移動します。リビングで温められた空気は廊下を通り、トイレから外部に搬出される場合なら廊下が温まりますが、リビングが直接トイレに繋がっていて、廊下が換気ルートに入らないケースだと廊下はほとんど温まりません。高気密・高断熱住宅だからほっといても建物全体が温まるイメージを持たれている方も割と多いですが、残念ながら間違いです。もちろん気密性・断熱性が低い建物に比べれば少しは暖かいのですが、実際には扉で仕切られた向こうの部屋は何もしなければ、結構な温度差があります。もちろん、昔のように廊下が極端に寒いとか、トイレが寒くてたまらないという訳ではありませんが、あくまでも換気ルートにない部屋は、換気ルート上にある部屋と比べると温度差が高くなります。

 

一種換気は、排気も給気も機械で行う事を意味しますが一種換気の場合は多くは熱交換器を使った換気システムを採用します。熱交換器が無いと、外部の冷たい空気を取り入れて、内部の暖かい空気を排出するので熱を捨てているようなものです。高気密・高断熱住宅にすればするほど、この換気による熱損失の割合が高くなり、換気による熱損失の割合が気になってくるものです。なので、高性能住宅は熱交換器を取り入れた換気システムにするケースが必然的に多くなります。機種によりますが熱回収率65%~90%程度の性能の差があります。高性能なものは水分に含まれる熱も回収するので、匂いも回収してしまう問題点がありトイレをどう換気計画に組込むか配慮が必要です。

 

一種換気には大きく分けて2つの考え方があります。1つは各居室ごとに換気するという考え方です。リビングならリビングで外気を取り入れ、リビングの空気をリビングから排気するという方式です。一般的には壁に設置した小型エアコンのようなものが給気と排気を行います。その際に、機械の内部で熱交換する事になります。この方式だと廊下は換気ルートから外れるので、逆に三種換気より廊下は寒くなってしまいます。もう一つは全館空調という考え方です。ダクトを天井裏に這わせて設置し、建物全体を撹拌する方式です。一般的には各居室及びウォークインクロゼット、玄関、洗面室・脱衣室・納戸等に新鮮な空気を送り込み、廊下で汚れた空気を回収するパターンです。この方式だと建物全体がある程度均一な温度になっていくので、建物全体を均一な温度にされたい場合はこの方式です。全館空調をかけていれば各居室に設置したエアコンを付けているだけで、ある程度建物が均一な温度になる様に、空気が撹拌されていきます。天井裏にエアコンを設置して、換気と一緒に冷暖房する方式もあります。天井裏に設置するケースは24時間冷暖房をベースとした考え方です。各居室にエアコンを設置するのに比べて、エアコンの台数が少なくなるので、天井裏に設置するエアコンが壁付エアコンに比べて価格が高い点を差し引いても一般的には安くあがります。又、リビングにエアコンを設置する必要が無いのでインテリア的にも有利です。壁付けエアコンはもちろん天井付エアコンも、インテリア的には最悪と言っていいほど主張しています。全館空調は各部屋には吹出し口しかないので、インテリア的にスッキリします。

 

僕の家は、基本的には24時間暖房を1階1台、2階1台のエアコンで行っています。1階20坪、2階20坪、3階5坪の計45坪の住宅です。換気は3種換気です。子供も小さいので24時間暖房は何かと都合がいいです。子供が布団をはぐって冬寝ていても風邪を引かないですし、なにより温度差の少ない住宅は住んでいて体の負担が少ないです。LDKはエアコン+蓄熱暖房機を利用していた時に比べてもさらに快適です。若干床の温度が低いと言えば低く感じますがそこまで気になりません。ラグの上にいる分には問題ありません。床面の暖かさをさらに追及されたい場合は、空気を多く含むパインや杉、ヒノキ等針葉種の、質量が軽めの無垢の木を採用されると床面の断熱性が高まり、床面の温度が上がります。キズが付きやすく汚れやすい問題はありますが足元が暖かいです。

 

24時間エアコン全館暖房を取り入れた建物のリビング環境が、エアコン+蓄熱暖房機のケースと比べて遜色無くむしろ優れた住環境になっているのは、建物に熱がより多く蓄熱されているからです。僕の家はリビングの天井はコンクリートが露出されているので、蓄熱されたコンクリートからの輻射熱がプラスされます。建物全体を暖めると隙間風もなくなり落ち着いた気流になります。エアコンの風が気にならないかというと、ほんの僅かに気になりますがそもそも、24時間暖房なのでそこまでの風量は必要ありません。アバウトですが僕の家のケースで言うと、24℃設定で、外気温が3℃くらいだと5K(エアコンの能力)のエアコンで2目盛りです(最大5目盛)。外気温が0℃くらいになると3目盛、外気温が-3℃だと4目盛程度です。快適だな~~24時間暖房・・・嫁も先日ポツリと「暖かい家で良かった」と呟いていました。しかし、厳密に言うとリビングだけで言うならさらに床暖房を設置した方が快適です。床面が暖かい空間ってホンワカしますよね・・・お金に糸目を付けないのならさらに実施したい所ですが、正直そこまでは必要ありません。なぜなら、付けるとしてもほんの軽く付けるくらいだからです。本来、床だけが極端に暖かい状態は一時的にはほっこりしますが、長期的に一番快適なのは床と壁と天井に温度差が無い空間だからなのです。しかも、床暖房があると空気温度を低く設定するので、床暖房が無い部屋が寒くなってしまう問題点もあります。ちなみに僕は超寒がりです。築20年の実家では石油ファンヒーターの前に陣取っています。その僕が大丈夫なので、大抵の人はエアコンのみで大丈夫だと思います。まあ、それでも物足りなければ小型の赤外線ストーブを足元に置けば問題ありません。

 

気になるランニングコストはと言うと僕の家はオール電化ですが真冬で24,000円が28,000円になりました。暖房してない月は16,000円程度なのでだいたい暖房費が12,000円という感じです(45坪の建物のケースです)。僕は月に4,000円程度のプラスなら、全然24時間暖房の方が良いと判断しています。一度、24時間暖房を体感したら快適なので、止められなくなります(笑)。現在、蓄熱暖房器は一切可動していません。エアコンのみの24時間暖房の時よりさらに快適になるかと思って、実験的に蓄熱暖房機を併用してみたのですが、正直、蓄熱暖房機が点いているかどうかも解らない程度の体感温度の変化だったので勿体無いので直ぐに止めました。

 

住んでいて思う事は、僕の家は3種換気なので1種換気にしたらもっと快適になるなという事です。快適なのですが、冷たい空気が直接室内に入ってくるのが気になると言えば気になります。室温が24℃の所にマイナス2度の空気が入ってくるのはどうかと思います。後は、換気フードは全て気密シャッターにすべきです。使っていない時に穴が開いたままになっているのは、高気密住宅としてはおかしいです。

 

空気を撹拌する事の難しさも体験しています。室内の扉は全て天井までの引戸にしてあるので、開けっ放しにしても扉が邪魔にならないようにしていて、実際に開けっ放しです。逆に開けっ放しにしないと建物の温度が均一になりません。そして、重要なのは開けっ放しにしていても先に述べたように、換気ルート状、上手の部屋にはエアコンで温めた熱が伝わりにくいという事です。もちろんある程度同じ温度にはなります。しかし24℃と21℃では全然違う住環境なのです。換気ルートの検討、空気の循環の検討、引戸の検討等24時間暖房を検討される方は十分に検討する必要があります。ちなみに、ダクトを配置して全ての部屋を均一にする方式の方が、はるかに考え方がシンプルです。まあ、設備機器代は合計で言うと差はありませんが、ダクトを設けるとダクトや天井裏に配置する機器の分、建物の階高を高く設定しないといけないので、建物高さが高くなった分建築費は高くなります。ケースバイケースですが50万~100万程度です。ザックリで言うと坪1.5万程度ですね!

 

3,000万円(一般暖房) 3,100万円(24時間暖房、全館空調付) と考えると・・・全館空調は買いですね、僕的には!!ただし、天井裏をダクトが通るので、天井部分がコンクリート打ちっ放し仕上にはならなくなります。

 

★教訓16 コンクリート住宅の暖房は蓄熱性能を上手く利用できるかが鍵★

 

■造作建具と造作家具について

お金は無かったのですが、建具と家具を造作で作り、内部インテリアを統一しようと考えていました。建具は一般的には建材メーカーの建具を使う事が多いと思いますが、それだと近い色はあっても厳密に、家具と建具をトータールコーディネートできません。クオリティは、建材メーカーの商品の方が造作建具に比べて安定していますが、既製品には無い造作建具の風合いは捨てがたいです。造作とは、家具職人、建具職人にそれぞれ建具と家具を作ってもらう事で、パネルを指定するとそのパネルで制作できるので、まったく同じ素材で建具と家具を作る事が出来ます。そうして出来上がった空間には一体感が生まれ、既製品で構成したものと比べ、トータルで見てワンランク上のデザインレベルの空間になります。

 

余談ですが、キッチンの収納部分をどうするかは割と皆様悩まれます。考え方として①カップボードを置いて、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、ポット等の全ての家電を使い勝手優先で露出させたままにするか ②いやいやお客さんが来た時には全て隠したいという判断で扉で隠して全て収納するか ③冷蔵庫は結構開け閉めするので、冷蔵庫だけ露出させようという考え方に分かれます。僕の家は②を選択しています。写真の一番左側が冷蔵庫置き場で、残りに食器や食品、炊飯器、電子レンジ等の家電製品を収納しています。分別用のゴミ箱の置き場が困る所ですが、棚の一番下に生ごみ、空き缶、プラ、ビンと4個ゴミ箱を並べています。来客があった時は、扉を閉めておけばいいだけですし、面相臭い時は開けっ放しです。使ってみた感想は、結構使い勝手が良かったです。収納量としても、僕の家のケースだと全く困っていません。整理すれば、まだまだ余裕があります。

ところで、僕の家は家具と建具はゼネコンを通さずに、僕が直接家具屋に依頼しています。一般の人にはあまり参考にならない話になってしまうのですが、お金が無かったので少しでも安くしようと、自分で発注できるものに関しては自分で発注しました。一般の人では買えなくても、僕は設計事務所という建築業者の立場を利用して業者価格で品物を買う事が出来ます。若干、面倒臭い事ですが、そうした事でもしないと僕の予算ではとても建てられません。家具・建具・床材・キッチン・木窓は自分で納入しました。

 

僕が家を建てたのは2011年ですが2016年現在、2011年と比べると随分施主が自分で買える建材が増えてきました。建材屋さんによっては業者に売るより施主に直接売った方が儲かると考える業者も随分増え、ネットで検索すればそうした建材がいくつも出てきます。しかし、気を付けないといけないのが施主支給品に問題が発生した時の責任の所在です。例えば、施主が床材を支給したケースで考えてみます。住み始めて1年後に床鳴りが発生したとすると、材料、施工のどちらに問題があるのか解りません。当然、業者は材料に問題があると主張します。キッチンなんかも、大手キッチンメーカーに無いようなスタイリッシュなデザインの物がネットで買えたりします。そのキッチンで水漏れが発生したとすると、業者はキッチンが悪いと主張します。・・・これは仕方がない事なのです。商品か施工、どちらに問題があるか解りません。そして、業者の立場に立って考えてみて下さい。自分の所に問題があるか、施主が支給した材料に問題があるか解らないのに、なんで呼び出されないといけないかという事です。自社の施工が問題なら直すのは当然ですが、支給材料に問題があった場合、完全に調査経費という人件費を無駄払いしています。その場合は施主が調査経費を払ってくれるのかという事です。

 

まあそこまで言う業者はいないと思います。電話したら見に来てくれるとは思いますが、施主支給品には本質的にそうした問題を抱える事になる事をご理解頂いて材料を提供ください。気軽にネットで購入して商品を支給していいものではありません。ご検討の上、支給下さい。

 

★教訓18 造作家具と造作建具を利用すれば、統一性のある内装デザインを作れる★

 

■仕上げ材料の話

ベースとなる基本的な壁材を何にしようか結構悩みました。珪藻土にするか漆喰にするか、珪藻土クロスにするかです。普通のビニールクロスは流石に嫌でした。風合いが無さすぎます。ペンキ仕上げもいやでした。プラスターボードにペンキで仕上げる建築家は多いですが、個人的な感覚ではメンテナンスの観点からありえません。ペンキがボロボロ落ちてきたりしますし、ビニールクロスに比べて簡単にヒビが入ります。ビニールクロスはその名の通りビニールなので伸びます。ペンキはまったく伸びません。建物が揺れてボードが歪んだ時、ボードジョイント部で変形が起こるとどうなるか想像に難しくありません。お客様でよくペンキでもいいですから・・・と言われる方がおられますが「いやいや、クロスより全然値段がかかりますよ」と言うとビックリされます。ペンキ仕上げは一般の人には受けが悪く、玄人受けの良い仕上方法なのです。予算が許せば個人的には漆喰にしたかったです。珪藻土に比べて質感がシャープなのに手仕事の柔らかさもあります。あ~~~~漆喰にしたい・・・といった感じでした。でもまあ・・・お金がないので最終的には珪藻土クロスで諦めました。ペンキ調クロスでも良かったのですが、湿気を通すクロスの方がよかったので珪藻土クロスにしました。所で、この珪藻土クロスやペンキ調クロスは、普及品のクロスに比べて、クロスのジョイント部がラインになって目立ち易いのが難点です。ボードのジョイント部に下地調整として行うクロスパテが不陸(凹凸)として目立つのもやっかいです。ビニールクロスは、昔からある縦横に縫い目が入っているようなものがジョイント部が一番目立ちにくいです。縦のライン柄とジョイントの縦ラインが紛れて見分けが付かないからです。施工ムラが出にくい商品を使うか、イメージを優先させるか適切に判断してクロスを選定する必要があります。

 

そうしたメンテナンスの事も含めて施主様に確認する設計事務所は少ないです。僕が勤めていた時も、施工的な内容は一度も確認した事がありませんでした。と言うか、そういう細かい事を知りませんし、大切だとも思っていません。デザイン重視で進めていく時にそうした話は蚊帳の外の話なのです。そうではなくまず第1にデザイン的にどういう材料が一番適切なのか考えるのがデザイン系の設計事務所というものなのです。当社は、そうした考え方ではなく、施主様と情報を共有して行かないと住んだ後に、建てて良かったとならないと判断して、極力情報提供に努めています。

 

一階の事務所部分の床は土間仕上げです。土間仕上げのみだと触ると粉が付いて白くなってしまうし、汚れやすいのでクリア塗装で仕上げています。LDKの床は厚貼りの複合フローリングにしました。無垢材だときしむし反るし、問題がでるな~~~と思ってそうしたのですが、見た目は厚貼(べニアの一番表面の仕上げ材が2mmの厚貼りになった商品。ウォールナット)なので、ある程度高級感もあるのですが、優しさや柔らかさがない・・キズついても、いいので無垢にしとけば良かったかな~~~と後悔しています。無垢にしたらしたで後悔したかもしれませんが(笑)選択するのって難しいです。

 

後は、コンクリートの打ちっ放し仕上げをいたる所に使っています。鉄筋コンクリート造の場合、どれだけコンクリートの壁を見せるかという内装デザインのポイントがあります。個人的には内壁を全てコンクリートの壁を露出させるのは、スタイリッシュではあるものの優しさが無さすぎて受け入れられません。ある程度限定してコンクリートの構造体を露出させました。基本的には天井面と部分的に内部の壁をコンクリートの壁にしています。住んでみてコンクリートを露出する割合としては丁度良かったと思っています。嫁はそこら辺をまったく気にしない人なので、暖かく住めればどうでもいいと言っています。人それぞれですね(笑)。極力、各部屋ごとに違うイメージにするのではなく、建物全体として統一されたイメージになるように仕上げ材を限定して使用しています。ところで、コンクリートは無臭です。コンクリートの匂いが気になると言われる方も極稀におられますが、それはカビの匂いと勘違いされているケースです。僕は匂いに超敏感ですが、住んでいてコンクリートの匂いを感じた事はありません。適切な断熱をすれば、そのような匂いの元は発生しません。又、コンクリートは石+砂利+水+セメント(主原料:石灰石)と全て天然素材で構成されている自然素材です。アレルギー体質の僕でも、気にせず使える材料です。

 

★教訓17 デザイン的にどの程度コンクリートを見せるかが鍵★

 

■造作浴室

浴室はユニットバスでは無く、造作で作っています。床と壁をFRP防水仕上げとした低価格の浴室です。脱衣室との境を、ガラスの壁とガラスの扉にし、一面ガラスの壁で仕切られているようなデザインとしました。狭い浴室だからせめて開放感あるデザインにしようと思いそうしました。オシャレはお洒落ですが、今はまだ0歳の娘が大きくなったらどう言うか解りません(笑)。UB(ユニットバス)にするのはデザイン的にちょっと抵抗があって、UBにするという選択肢はありませんでした。普通すぎるというか、デザインされてないというか・・・UBにするとデザイン的に浴室だけ完全に建物の中で別空間になってしまうのがいやでした。僕の家は脱衣室から浴室の壁一面トップライトになっていて光が壁を照らすデザインになっています。昼間にお風呂に入ると、トップライトから光が差し込んでいて、なんとも優雅な気分になれます。使ってみての問題点で言えば、排水溝が造作だとUBのような掃除しやすい商品が無いので、掃除が面倒です。後はガラスの壁と扉に水垢が付いて取れません。毎日掃除すればいいのでしょうが、うちの家は現在の所リビングを片づけるのが精一杯です(笑)。又、ガラス扉とガラス壁の間に隙間があり子供が水を撒き散らすと、ここから水が漏れてしまいます。ステンレスの曲げ物で水返しを付ければ水漏れの問題は解消しますが、デザイン的にスッキリした感じが無くなります。ですが、現実的には必要だと思いました。FRPだから、タイルよりは冷やっとした感覚がありませんが、見た目で言うと、タイルなり石なり貼りたいのは正直な所です。そうなると、床が冷たくなるので床暖房を洗い場に入れたくなりますが・・まあ、そこまでは金額的に無理なので、僕の家の場合は、今の仕上げで納得しています。FRP防水は樹脂なので、タイルに比べれば暖かいですし、掃除も楽です。脱衣室にぶら下がりパイプを設置しました。懸垂が出来て重宝しています。物干竿と兼用です。

 

★教訓19 ガラス掃除はこまめにしましょう★

 

■照明の話

2016年現在、住宅照明のカタログに掲載されている照明は、殆どがLED照明になりました。2011年当時は、ようやくLEDの性能も上がり僕としても蛍光灯よりLEDの方が選択肢として適切だと思えるようになった時期でした。LED照明は、普及当初は明るく無かったり照明の発光体がデザイン的に変だったりしましたが、2011年には各照明メーカが開発を重ね、ある程度の所まで来ていました。個人的には新しい商品が普及しだした時期に、その商品を使いだすのは極力避けています。何故かと言うと、新しくいい商品が出来ましたとアピールされている新商品のうち、大半の商品は市場のニーズに合わなくて売れなかったり、そもそも問題があって取り下げられているのです。なので、僕は発売から数年は、その商品がお客様に提案して問題の無い商品なのかどうか様子を伺う派です。

 

2016年現在では、もうLEDの特徴を説明する必要が無いほどLEDが普及しています。LED以外の照明を選択する余地がなくなってきていますが一応、LED、蛍光灯、白熱灯の特徴を軽く説明すると、LED、白熱灯は点発光です。太陽のように点発光の光源は物体に強く影を作ります。一方、発光体の表面積が大きい面発光の蛍光灯は、比べると物体の陰影がぼやっとして立体感が乏しいです。白熱灯はシャープな光なのに色味に温か味があり、多くの照明デザイナーに好まれています。デザイナーズの照明のほとんどは白熱灯になっています。部屋の明かりを白熱灯1灯だけにして、ほんのり薄暗い部屋のなんと落ち着く事か・・・しかし現実はそうはいきません。子供がいれば、そんな照度の低い住空間は成立しません。暗めの落ち着いた雰囲気は、高級旅館の設えです。蛍光灯は寒いと点灯した当初、部屋がなかなか明るくならないのが問題です。ダウンライトに使うような電球だと特になかなか明るくなりません。LEDは近年、球の下に乳白のカバーが付いていて、直線的な光を少しは乱反射させる工夫がされるようになったおかげで使いやすい照明になりました。価格も下がり、当初の1/4程度ではないでしょうか!しかし、間接照明用のLEDの価格がいずれ改善されると思いますが、2016年現在ではまだまだ高いので使いづらいです。LEDの光は間接照明なのに光が広がらない感じですし・・・それでも仕方なくLEDの間接照明を使わざるを得ない程LEDが普及しています。後、LEDの照明は蛍光灯に比べ、光が影を落としやすいので、壁のボードパテ等の僅かな不陸に影を落とし、施工の粗が目立つのが厄介です。壁際にダウンライトを設置する時には特に注意が必要です。

 

部屋にアンティーク照明を一つぐらい入れてみるのもお洒落です。ネットで検索すれば幾らでも売っています。僕も一つだけリビングにアンティークのブラケット照明を入れました。当然、白熱灯の光なのですが、LEDとは違う魅力的な世界観をLDKに作り出します。個人的には、基本をLED照明にして、アクセントとして1灯ぐらい白熱灯を入れてみてもいいと思います。照明メーカーのwebカタログは一般の人でもネットで閲覧できますのでネット検索されてみてはどうでしょう。

 

★教訓19 一灯くらい白熱灯の照明があってもいいかも★


、そもそも「壁式」鉄筋コンクリート造とはどんな建物なの?

 

まあ僕の家は前述したような判断によって仕様を決めた訳ですが、大切なテーマを話忘れていました(笑)。前に、構造の選定の時に軽くは触れていますがもう少し細かく解説してみようと思います。

 

■鉄筋コンクリートという材料

鉄という材料があります。コンクリートという材料があります。「鉄筋コンクリート」とは、この鉄の持つメリット、コンクリートの持つメリットその双方を存分に生かし、鉄の弱点、コンクリートの弱点を相互に補っている、鉄とコンクリートを一体的に合体させた材料であると言えます。鉄とコンクリートの材料の特徴を解説すると・・

 

鉄のメリット:引張強度が強い 靱性がある

鉄のデメリット:雨(酸性)に弱い 火に弱い(木のように燃えませんが、火で熱せられると曲がってしまいます)

 

コンクリートのメリット:圧縮強度が強い 耐火性に優れる アルカリ性

コンクリートのデメリット:引張強度が弱い 靱性が低い

 

となります。鉄とコンクリートを組み合わせると、見事にお互いの弱い所を補強(reinforced)する事になるのです。それが、鉄筋コンクリートという材料なのです。空気中の二酸化炭素や雨の酸性によって錆びる鉄を、錆びないアルカリ性のコンクリートが包み、火に弱い鉄を火に強いコンクリートが包み、材料の変形力を鉄筋が作り出し、強度をコンクリートが負担する。そうして1+1=∞ としているのです。しかも・・・しかもですよ、鉄とコンクリートは線膨張係数が同じなのです。これは気温の変化によって同じだけ材料が伸び縮みするという事なのでが、線膨張係数が違うと、お互いの弱点をこれだけカバーし合える材料なのに一体的には組み合わせる事は出来ません。なぜか・・・例えば鉄だけが大きく伸びるとすると、鉄が伸びて内部からコンクリートを割ってしまうのです。線膨張係数が同じ事で「鉄筋コンクリート」という仕組が成立しているのです。鉄筋コンクリート造とはこの様に、火に強く、靱性があり、強度に優れるという、素晴らしい特性を持つ「鉄筋コンクリート」という材料を使った建物なのです。

 

鉄筋コンクリート造(RC造)とは reinforced(補強) concrete(コンクリート)つまり、鉄という材料によって補強されたコンクリートの工法という意味なのです。

 

★教訓20 鉄とコンクリートはお互いを助け合っている★

 

■なんで壁式鉄筋コンクリート造の建物は丈夫と言われるのか

誰でも、鉄筋コンクリート造の建物は丈夫だと思っています。見た目にコンクリートという材料は固くて丈夫というイメージがありますが、知らず知らずの内に報道等で、丈夫だと言っているのを聞いているからかもしれません。落雷があったら、鉄筋コンクリートの建物に隠れろとか、震災の時は鉄筋コンクリートの建物に逃げ込めだの、東北の津波の時には三階建以上の鉄筋コンクリート造の建物に避難してくださいという警報が鳴りました。人生の中で、そうした文言を何回か聞くと「ああ、鉄筋コンクリートの建物って丈夫なのだろうな」と刷り込まれるものです。まあ、そう思わされているのはいいとして、ではなぜ報道機関が丈夫だと報道したり、一般的に鉄筋コンクリートの建物が丈夫だと言われているのか・・・それは過去の圧倒的な地震や台風、津波、落雷に対する実績によるものなのです。実際に過去の災害に対して丈夫だったから、丈夫だと言われているだけの解りやすい話なのです。そして、これほど信頼できる話はありません。だって実際に災害に対して丈夫だった訳ですから・・・

 

「丈夫」と言われている鉄筋コンクリート造の中でもさらに圧倒的に被害が少ないのが「壁式鉄筋コンクリート造」の建物です。いまだかつて、地震で建物自体の損傷として小破以上(小破:当面、居住には支障がないが、部分的に被害があり補修を要する)の報告がされていません。建物自体と意味深な表現と使ったのは、地盤が傾く事で建物が傾いたケースは存在しており、その時もなんと建物自体は壊れもせず傾いています。凄過ぎます。どう凄いかと言うと、一般的に建物はあくまでも重力による荷重が上から流れてきた時に支えるように設計されています。あとは地震力や風力が横から働いた時に対抗できるように設計されています。しかし、建物が斜めに傾いた状態は想定していません。力のかかり方がまったく違ってしまいます。しかし、壁式鉄筋コンクリート造は傾いたまま壊れません。完全なるモノコック工法です。すごい・・・凄すぎる!そう思って、僕はこの工法で自分の家を建てる事を決断しました。壁式鉄筋コンクリート造の強度を報告する阪神・淡路大震災の解りやすい報告があるので抜粋掲載します。

 

壁式鉄筋コンクリート構造の被害 淡路大震災調査委員会中間報告(抜粋)

壁式鉄筋コンクリート構造の被害は一般に小さく、ほとんどが無被害または軽微に属する被災程度である。これは、震度7の地域についても言え、すぐ近くの建物が被災度判定上大破や倒壊であっても、壁式鉄筋コンクリート構造にはほとんど被害がみられないといった事例は数多くある。ここでは、調査を行った中では最も大きな被害を受けた壁式鉄筋コンクリート構造について概説する。なお、壁式構造の被害は過去の震害において小破以上の躯体の被害は報告されておらず貴重な例であることから少し詳細に記述する。建物は穏やかな傾斜地に建設されており、高さ1~2mの擁壁に囲まれた地盤に建つ5階建ての住宅2棟で、竣工は昭和48年である。基礎形式は杭基礎であるが、建物の直下を地割れが走っており、擁壁の移動(約15cm程度)、周辺地盤の沈下、建物の移動が認められる。一方、建物自体の損傷はさほど大きくなく、建物北面で開口隅各部を結ぶせん断ひび割れ(幅5mm程度)が1,2階に集中して発生している状況である。建物桁行方向の外壁には、せん断ひび割れはほとんど見られない。周辺には、同様に地割れが横切っている耐力壁付きラーメン架構の7階建て共同住宅が2棟(建物の形状は異なる)建っているが、何れも構造体の損傷が大きく、震災後人は住んでいない。壁式鉄筋コンクリート造の被災度は、外観調査のみ行ったため断定はできないが、小破程度と考えられる。一方、ほぼ同じ立地条件のラーメン架構形式建築物の被災度は大破であり構造形式による損傷度に明かな差異がある。

 

この報告書を良く考えると本当に凄まじい話です。一般的に耐震性が高いとされる、鉄筋コンクリート造のラーメン架構建物が大きく損傷するような最悪の条件下にも関わらず、築23年、5階建、建物直下に地割が入る最悪の条件で「壁式鉄筋コンクリート造」は「小破」にしか至っていません。被害報告書に貴重な例として書いてあるが、当たり前です。この最悪の条件下で窓の回りにちょっとヒビが入る程度に留まる建物が、一般的な地震で小破を超える被害になるはずがありません。2階建の住宅が地震に耐えたという程度の低レベルな話ではありません。圧倒的な実績があるのです。

(小破:当面、居住には支障がないが、部分的に被害があり補修を要する)

 

とまあ、こんな感じでそもそも「壁式鉄筋コンクリート造」は壊れた事がありません。色んな工法があります。新しく開発された色んな技術もあります。しかし、それが20年後30年後50年後本当に機能するのですか?小さな地震の繰り返しによって建物の耐震性が低下していませんか?という事なのです。色んな壁式鉄筋コンクリート造の建物が世の中にあります。構造的に頑張っている建物。複雑な形をした建物。年月が経っている建物。色んな壁式鉄筋コンクリート造の建物があります。そして、実績として地盤の問題を除いて、今だかつて建物として小破を超える建物は確認されていないという、それはそれは凄まじい工法なのです。淡路大震災調査委員会中間報告はネット上に掲載されていますので、興味がある方は「淡路大震災調査委員会中間報告」で検索されると全体の被害状況等色んな情報が報告されていますのでご確認下さい。

 

★教訓21 「壁式」鉄筋コンクリートの地震に対する実績は圧倒的★

 

台風においては、現実的に冒頭でも述べたように沖縄の大部分の住宅は鉄筋コンクリート造で出来ています。近年、竜巻による被害も増えてきましたよね、屋根が吹き飛ばされたり、家が倒壊したりして驚かされます。地震と台風は構造的な外力としては考え方が違います。地震は揺れです。右に揺れ左に揺れと建物が揺らされます。台風は一方向の外力です。右なら一定時間ひらすら右から押され、同時に左側は引っ張られる事になります。木は地震では倒れませんが台風だと倒れてしまいます。木は地震の場合、揺れる事で応力を逃がしています。しかし、台風のような一方向からの外力には負けてしまいます。壁式鉄筋コンクリートは台風にもとても強いです。強すぎるので、台風に対する検討をする必要がない程です。実際に耐震壁の量、厚み、配筋量を決めているのは地震力に対しての抵抗力で、台風に対しては一般的に余裕があります。住んでいても台風で建物が揺れないので安心感があります。一般的に木造も鉄骨造も高さに対して1/150変形しますが、壁式鉄筋コンクリート造の場合1/2000です。

 

概算の地震や台風による建物の揺れ幅

3階建 木造・鉄骨造 6cm 壁式鉄筋コンクリート造0.45cm

2階建 木造・鉄骨造 4cm 壁式鉄筋コンクリート造0.3cm

 

と、その差は歴然です。そう、壁式鉄筋コンクリート造は、揺れないのです。だから強風の時とても安心感があるし、そもそも強風かどうかが建物の中にいると解らないです。もちろん、窓の性能は同じなので、窓の震えで何となくは解りますが、木造の建物のように、台風が来た時に建物がガタガタ揺れて「この建物大丈夫なのかな・・」というような不安な気持ちになりません。「台風来ているよね?」と、なります。実際に住んでいて、台風や地震に対する安心感がある建物だという事をとても実感しています。嫁も「雷がまったく怖くなくなった」と言っています。以前に、落雷が建物の裏手の呉羽山側に恐ろしい程落ちていた時があったのですが、嫁と二人で綺麗だね~~と眺めていました。凄い落雷で、地面なんかも揺らしていると思うのですが、全然怖くないので不思議です。当社で壁式鉄筋コンクリート造を建てられた方も、この事は話題にのぼります。「台風の日、まったく怖くなくなりました。強風でも安心して寝る事が出来ています。」と言われます。

 

この建物が揺れないというのは安心感に繋がる重要な要素であると共に、建物の保全にも大変重要な要素です。性能の保全という意味では、断熱材が圧縮されません。木造の2cm(*1階分)圧縮された断熱材は元通り復元されるのでしょうか?答えはもちろんNOです。製品によって違いますがホームセンターにあるスタイロホーム(断熱材)を指で押してみて下さい。確実に痕が残ります。硬質系断熱材の復元能力はほんの僅かです。この様に地震によって断熱材は圧縮されますし、圧縮された部分は隙間になるので著しい性能低下が起こります。木造住宅は地震の時に、構造用合板の釘が緩む事で建物に靱性を作り出しますので、パネルの気密性の低下はもちろん、耐力壁の耐力も地震の度に著しく低下してしまいます。もちろん壁式鉄筋コンクリート造も0.15cm変形しますので、厳密に言えば性能は微小に低下します。しかし、物差しを見て下さい。2cmってまあまあの変形具合ですが、0.15cmってほとんど解らない程度です。断熱材も復元可能な範囲です。そう、壁式鉄筋コンクリート造に断熱材の圧縮による性能の低下は存在しないのです。新築の時は暖かかったけど、10年くらいしたらそんなに暖かくなくなってきたな~~~という話は、つまり建物が変形した事によって出来る隙間が問題なのです(もう半分は木材が収縮する事による隙間の問題)。隙間の発生による性能の低下が壁式鉄筋コンクリート造には無いのです。

 

もう一つは、漏水、クロスのひび割れ、引戸が摺って閉まらなくなる話、設備管のジョイント部が外れる等、こうした揺れや積載荷重による変形がもたらす問題が発生しにくいのです。防水は揺れによって引っ張られます。新築時は問題無かったりしますが年月が経つと防水層は硬化してきますので、揺れに防水層が追従できなくなります。ボードのジョイント部で発生するクロスのヒビは、ボードのジョイント部で地震や風による建物の変形を吸収するのでやむを得ないです。又、雪やピアノ、本棚等の荷重によって建物の変形が起こり、建具が開かなくなったりします。木造住宅では、雪が積もると和室の引き戸で鴨居が下がるのはとてもよくある話です。配管が変形する時に引っ張られるのでジョイントや機器との接合部で問題が出たりします。こうした問題が、揺れ幅が6cmと0.45cmの場合、発現する頻度が違います。又、木造住宅では3階建は2階建に比べて漏水や、風による揺れによって船酔いの状態になる問題が起きやすいです。3階建の場合は、なおさら壁式鉄筋コンクリート造がおススメです。

 

★教訓23 建物が揺れないと「安心感」に繋がる★

★教訓24 建物が揺れないと断熱性能・気密性能が低下しない★

★教訓25 建物が揺れないと漏水が起きにくい★

 

■外断熱と内断熱について

壁式鉄筋コンクリート造で住宅を考える時に外断熱にされるか内断熱にされるか悩まれる方も多いですが、僕は悩みませんでした。何故か!まあ、単純に打ちっ放しコンクリートの外観に憧れていたからですけどね(笑)。どちらにするか判断基準は人ぞれぞれですが、良く「外断熱と内断熱、性能的にどちらが優れていますか?」と聞かれます。答は「同じ性能になるように断熱材の厚みを調整する」です。しかし、断熱の合理性で言えば、外断熱の方が工法として優れています。それは、主にヒートブリッジによる問題です。ヒートブリッジとは、外部の熱が内部に伝わってしまう部分の事ですが、主に床スラブや、内部のコンクリートの壁の外壁接合部がヒートブリッジに該当します。床スラブは外壁にくっついていますので、外壁が温められると床スラブの外周部には熱が伝わってきてしまいます。もちろんこのヒートブリッジはウレタン等で断熱補強されますが完全ではありません。そうした外断熱にない弱点が内断熱にはあります。そして、弱点がある分、全体的に断熱材を厚く施工する事で、建物のトータルの断熱性能を同じにするのです。

 

ちなみに鉄筋コンクリートの断熱材は木造のように柱の間に設置する訳ではないので、内断熱と言えども合理的ですし、鉄筋コンクリート造の外断熱は当社で採用しているものだと下地が木の間に設置するような形ではなく、完全に断熱材のみで覆われている工法なのでこちらも合理的です。鉄骨造や木造では、必ず木下地やスチールの下地の間に断熱材をはめ込む形になるので、その部材がヒートブリッジになります。鉄筋コンクリート造には下地部材が必要ないので、木造や鉄骨造の外断熱と比べて合理的な完璧に近い仕様になっています。

 

外断熱か内断熱か判断する基準は、断熱性能より構造体が外気温の影響を受けるか受けないかで建物の耐久性が変わってしまう方が重要です。物質は温度変化によって必ず伸びちじみしますから、それが外断熱の方がコンクリートの躯体が外気温の影響が少なく変形が少ないのは間違いありません。ただし、コンクリ―トの外壁が雨で汚れると懸念されておられる方は、塗装をする事でその問題は軽減されます。クリア色の塗装をすれば、外壁に雨が染み込む事も無くなり、コンクリートの黒ずみの問題は無くなります。同時に躯体に雨が染み込まないので、酸性雨によるコンクリートの中性化が無くなるというメリットもあります。一般的に民間のコンクリート打ちっ放しの建物は無塗装です。雨が降ったら外壁のコンクリートの色が、雨が染み込んで上から黒くなっていくので、雨の日に確認したら塗装しているかどうか簡単に解ります。公共物件では、一般的に打ちっ放しコンクリートの外壁は塗装処理が行われているので20年程度だったら見た目はほとんど変わっていないかと思います。当社で施工している打ちっ放しの建物も全て塗装処理を施しています。ただし、性能を維持する為には定期的に塗装をやり直さなければなりません。サイディング(住宅でよく使われる色んな柄のある外壁材)と同じく10年毎くらいが目安です。

 

もう一つは構造体のヘアクラックの問題があります。物質である以上、乾燥に対する割れの問題は発生します。身近な例で言うと、無垢の木の構造材では皆様驚かれますが、完成当時から結構大きなひび割れが、至る所に発生しています。古い家の梁を見てみると梁がパックリ2つに割れてしまっているケースもあります。ただ、それが問題で壊れた報告はされていません。理屈の中では強度低下している事になりますが、建物の安全率の範囲内のケースが大半です。鉄骨の柱と梁にはヒビは発生しません。鉄は非常に靱性に優れた材料なので、熱による伸びちじみに簡単に追従します。コンクリートは靱性が小さいので、鉄のように伸びる事が出来ません。コンクリートは乾燥収縮によってヒビが発生してしまう可能性があるのです(木の無垢材に比べればほとんど入らないと言ってもいい程度ではあります)。ヒビ?と聞くと一般の人は問題があると思われてしまいますが、鉄筋コンクリートの建物にはあえてヒビを所定の位置で発生させるように目地というものが存在するくらいです。材料である以上どうしても発生してしまうのですが、僕の家の場合はコンクリート強度を上げる事で、極力発生しないように対処しました。強度の高いコンクリートとは水分量が少ないコンクリートなので収縮率が小さく、クラックが一般的なコンクリート造に比べると発生しない事になります。こうしたクラックが外断熱の場合は温度の影響を受けにくいので、発生しにくいという事になります。まあ、一般的には壁式コンクリートのクラックはヘアクラックなので問題はありません。

とまあ、僕の判断で言えばもちろん外断熱の方が合理的ですが、内断熱でも問題無と結論付けています。コスト的には外断熱の方が坪単価5万円程度割高ですし、デザインとコストとを合わせて断熱方法を判断する必要があります。問題は、それよりも、冷暖房の考え方が外断熱・内断熱の選定と合っているかという事です。以前に話しましたが、コンクリート造の特徴を無視して、冷暖房を考えると住みにくい家になってしまいます。逆に、特徴を生かすと快適な住環境になります。なのに、コンクリートの特性を無視した設計のなんと多い事か・・・デザインの材料としてコンクリートを使っているだけで、暖房はまあなんとかなるだろと考えているコンクリートデザイン住宅が多すぎます。そうした住宅が、素晴らしい壁式鉄筋コンクリート住宅の普及の足かせになっていると言えます。あとそうしたデザイン重視の建物は金額の事を配慮しない設計である事が多く、そうしたケースが本来そこまで価格が高くならない鉄筋コンクリート住宅を高額なものだと印象付けています。それではまず軽く、冷暖房に必要な内断熱・外断熱の特徴を解説してみます。前述した空調の所と話が被る所もありますが、大事な所なので再読願います。

 

★教訓26 外断熱も内断熱も断熱性能は同じ★

 

■外断熱

壁式鉄筋コンクリート造の外断熱とは「断熱材の内側に蓄熱体であるコンクリートの躯体がある工法」となります。この蓄熱体を活かすと快適な住空間となり、殺すとなかなか扱いづらい建物になります。解りやすい失敗例で言うと、東京くらいだと非断熱のデザイナーズコンクリート住宅があります。内側も外側も打ちっ放しのデザイン住宅です。この状態でもなんとか住めてしまうのがコンクリート住宅の凄い所なのですが、エアコンを運転し続けてもなかなか温まりません。蓄熱体に熱が吸収され、そして断熱がされてないのでそのまま熱は外部に放出されていきます。この状態に床暖房を入れてもそこまで快適にはなりません。壁面の温度が上がらないからです。作用温度(暖かいと感じる温度)とは室内表面の平均温度と室温との平均です。壁面や天井の温度が低いと床面だけ暖かくても、室内表面の平均温度はそこまで上がらないのです。しかも床暖房は基本的には空気を暖める暖房ではありません。こんなちぐはぐな事をしている建物を雑誌等でたまに見かけます。まあ、デザイン的にはコンクリートの壁しかないのでとてもシャープで豪華です。なのでデザインとして全面打ちっ放しを採用したくなる気持ちは解るのですが、空調的にはいまいちです。東京の店舗には非断熱の鉄筋コンクリートの建物が沢山あります。しかし、住宅は快適でこそ住宅です。デザインと快適性の両立こそデザイン住宅です。先程述べた状態の外側に断熱材を施すと、環境は一変します。蓄熱された熱が外部に逃げなくなりますし、まさに建築の魔法瓶と言えます。壁温度が高くなり、室温をそこまで上げないでも快適な環境になります。これが外断熱なのです。世界に目を向けてみると24時間暖房があたりまえです。北海道は当然として、日本もそういう時代に突入しつつあります。そして、24時間暖房を採用する時に最適な工法が、巨大な蓄熱体を持つ鉄筋コンクリート造なのです。

 

★教訓27 外断熱は蓄熱体に熱を溜めこむ事が重要★

 

■内断熱

では鉄筋コンクリート造の内断熱とはどうなるのでしょうか?断熱材の厚みを厚くすれば当たり前ですが外断熱と建物全体の断熱性能は変わりません。気密性能も同じです。では何が違うかというと、蓄熱体の量です。外周部は内側に断熱材が入っているので蓄熱は行えません。しかし、2階建なら1階と2階の床、外周部ではなく内部にあるコンクリートの壁が蓄熱体になります。蓄熱体の量としてはプランによりますが1/5程度でしょうか・・・。内断熱はこの蓄熱体の量が減った事で、建物が温まりやすくなりましたが、冷めやすくもなっています。それでも木造住宅に比べると、十分な蓄熱体の量がありますので、24時間暖房でなければ、内断熱の方が選択として適切であると個人的には考えています。それなりに次の日まで暖かさが継続しますし、温まりにくいという印象もありません。扱いやすいと思います。もちろん24時間暖房でも快適です。十分な蓄熱体の量が外周部を除いても存在しますので、問題ありません。僕の家も内断熱で24時間暖房をしていますが、かなり快適です。という訳で個人的な基準になってしまうのですが、外断熱なら24時間暖房と組み合わせる事がベターですし、内断熱なら24時間暖房でも普通の暖房方式でもいいと思います。

 

★教訓28 24時間暖房でなければ内断熱を選択しよう★

 

■両断熱

最後に両断熱という考え方について解説します。鉄筋コンクリート造で両断熱を行うという考え方です。躯体に熱を与えたくない、かつ、蓄熱体はある程度でいい場合に適切な選択だと考えられます。24時間暖房を行うのであれば蓄熱体は多ければ多い程いいので、内断熱を併用するメリットは何もありません。準寒冷地で24時間暖房ではなく局所暖房を採用する場合に、立ち上がりを早くする為に採用してもいいかと思います。24時間暖房は快適ですが、若干は電気料金が上がる事になるので、それなら各部屋で冷暖房を行うという選択肢になる場合で外断熱にしたいケースに適しています。体感温度が、家族間で極端に違い、寒がりの人と暑がりの人が一緒に住む場合も全館暖房(風量の調節によってある程度は調節出来ます)は基本的に不向きなので、各部屋にエアコンを採用し両断熱にしてもいいかと思います。両断熱は内断熱と同様に、ある程度の蓄熱体が残っていますし外断熱程ではないですが、安定した空調を行えます。

 

後は、両断熱をどのように行うかという話になりますが、おススメは外側を断熱型枠で行い、内側をウレタンを吹き付けるという工法です。メーカーによっては両側を断熱型枠で行う方式を採用していますが、これはおススメ出来ません。両側を断熱型枠採用する方法は金額の面で合理的です。しかし、コンクリートはきちんとコンクリートが流し込まれているか目視する事が大前提なのですが、両側を断熱型枠にすると確認作業が行えません。型枠を外してコンクリートの状態を確認するという工程が無いからです。片側だけ断熱型枠を採用する場合は片側は覗けるので問題無いかと思います。厳密に言えば両側確認出来た方がいいに決まっていますが、コンクリートの欠落(流れ込んでいない状態)に、検査項目を限れば片側だけでも問題ありません。構造耐力に影響が無い程度の確認であれば片側から行えます。又、両側を断熱型枠にすると、そもそもコンクリートを打設する時にコンクリートが上手く流れません。密実なコンクリートを作るには、コンクリートを流し込んでいる時に、型枠を木槌でたたく行為が不可欠です。「トントントン」と流し込に合わせて型枠を叩きまくります。バイブレーターだけではコンクリートは流れ込んで行きますが、コンクリートが密実な状態になりません。アクリルパネルを利用した実験動画等も教材として存在していて、見ると木槌の重要性が解ります。この木槌でたたくという行為はコンパネを叩いて行うので、両側断熱パネルで施工する場合は行えないのです。行程数が減り、合理的な方法ではあるのですが、コンクリート躯体の状態を確認出来ないのでは話になりません。少なくとも躯体の片側を一般型枠にするのが無難な選択であると個人的には考えています。以前、両断熱にされて、外側に断熱型枠を採用された方も、現場でコンクリートの躯体を自身の目で確認する事で、納得されていました。安心して建物に住むのにこれ程重要なポイントは無いと思います。

 

★教訓29 打設後のコンクリートを確認する事は最重要ポイント★

 

■断熱型枠について

僕の家は外側も内側も一般型枠を採用しています。外側を一般型枠、内側を断熱型枠とする事も可能です。配慮する点は配慮しなければならないですが、全然可能です。しかし複雑は形や平面的に斜めの壁の場合、施工しづらい点もあります。プランや窓周りの納まり等によって断熱型枠を使用するかどうか総合的に判断する事になります。断熱型枠は、内側か外側どちらか一方なら使用できますし、費用対効果のよい選択と言えます。もちろん、検査の観点から考えると両側に一般型枠を採用した方が適切です。

 

では断熱型枠とはどういったものなのか・・・。断熱型枠とはその名の通り、断熱材が型枠になっているものです。コンクリートの打設が終わると型枠がそのまま断熱材として使用できるので行程が少なくなりますし、撤去しなければならないコンパネが無くなるので価格が安くなります。更に断熱材とクロス下地のボードが一体となっているものも存在します。コンクリートの打設が終わるとすでにクロス下地のボードまで仕上がっているので、室内側に使えばそのままクロス下地になり、外側に使えば塗装するだけで作業が終了になる作業行程の少ない材料です。当社で初めて断熱型枠を使うときに北海道視察を行い、建材メーカーと現場を回りながら注意点とかを確認しました。現場監督と型枠屋の方と行ったので、道中色んな為になる話が聞けて楽しかったです。現場ではなかなかそこまでゆっくり話せないですし、いい経験になりました。その後に、建材メーカーの工場を視察し、製品の行程を確認しました。しかも、北海道の断熱メーカーの営業の人だけあって、断熱に対して詳しいです。断熱に対して、日本で一番シビアな場所ですから・・・そうした寒冷地中の寒冷地で普及している建材を利用すれば安心というものです。ちなみに、当社は富山では住宅で初めて利用した実績があり、北海道で普及しているだけあって、合理的でコストパフォーマンスにも優れているので外断熱の場合は当社ではその断熱型枠を使用しています。

 

★教訓30 断熱型枠は合理的な商品★

 


、着工目前・・・本当に着工できるのか!!

 

■入札の話

建物のプランも確定して仕様も決めたしいよいよ入札を行います。入札とは、複数の建築業者に建物の見積もりを依頼して競争してもらう事です。公共工事は入札で行われます。しかし一般的な住宅の場合、入札は行われません。複数の住宅メーカーにプランと見積もりを依頼するケースはあるかと思いますが、これだとプランも建物の仕様も違うので競合している状態にはなりますが、素人が解らない所の仕様を下げたりする事で調整出来てしまいます。入札とは同じプラン、同じ仕様で見積もってもらう所にメリットがあるのです。建物の規模にもよりますが一般的には2~4社程度の業者で入札する事が多いです。そして、入札は納得して購入しやすいシステムです。なぜかというと、ハウスメーカーの金額は妥当な金額かどうか判断する術がありません。打合せした建物に対して出された金額が、適切な金額かどうかが判断つかないのです。入札だと、公平に数社から見積もりが出てきます。その見積もりを比較して購入する事で妥当な金額だという事が解り、金額に対して納得して契約頂けるシステムなのです。

 

僕の時は2社に見積もりを依頼しました。どちらの会社も入札に意欲的でしたし、それならまずは2社で見積もりしてみて金額が合わなければもう1度他社に見積もりを振り直そうと考えていました。入札に参加頂いた建築会社はどちらも地方ゼネコンです。住宅は公共建築と違った所を注意して施工する必要があるので、ある程度会社として住宅の実績がある業者から選定します。まあ、その時は僕の家ですし、自分で監理する訳ですから、一般的なゼネコンであれば、過去にどの程度の実績があるとか、会社の規模だとかはそれほど気になりませんでした。とにかく、何処か希望の金額に押さえてくれ~~~という思いでした。そして出てきた見積もりは・・・まさかの予定金額以下でした。3階建45坪、各室エアコン、オール造作家具・建具、地盤改良、上下水道設置、外構込の壁式鉄筋コンクリート造で2600万(税別)でした。見積もりの差額は400万程度開きがありました。「え?そんなに金額に開きがあるの?」という声が聞こえてきそうですが、入札をかけると毎回少なくとも工事金額に対して1割は差額があります。「その差額で設計料が出ているね!」となりますが、そうではありません。入札をかけているので1番高い金額で出されている会社も「頑張った金額」を出されているのです。入札に参加するという事は、普段提出している金額より利益を削った金額を出すという事なのです。そうしなければそもそも見積経費をかけて、入札に参加する意味がありません。お着様が直接ゼネコンに相談されても、1番高い入札金額+当社の設計料の合計金額以上の金額にしかならないのです。

 

ハウスメーカーと比べた場合は、ハウスメーカーにも設計士がいて設計経費が掛かります。営業経費も掛かります。広告費も必要です。その合計が当社の「設計料+監理料」なのです。ここを比較しただけでも当社の方が断然割安になります。さらに入札という制度で建物本体部分の価格を下げる事が出来るという事なのです。入札によって下げられた工事価格は、ハウスメーカーの工事価格を軽く下回ります。そもそも、沢山の人が社内で色んな事(実験・商品開発・競合分析・調査・研修・カタログ製作等)を行っているハウスメーカーの会社経費というのは、ただ工事現場を次々にこなしていく、シンプルなシステムのゼネコンに比べて高額です。

ハウスメーカーの場合

「営業費」+「設計経費」+「広告費」 +「建物の原価」+「利益」+「会社の経費」

 

当社の場合(監理という重要な別項目があるにも関わらず、仕組みとして価格を抑えられます)

「設計料」+「監理料」 +「建物の原価」+「ゼネコンの利益」+「ゼネコンの経費」

 

そして入札の素晴らしい所は、金額が合わなかったら他の会社にさらに見積もり依頼をかけるという事が可能だという所です。金額の駆け引きを行うのに、この「金額が合わなければ直ぐにそのプランのまま他社に見積もりを出せる」というカードがあるのは強みになります。

 

僕の家は、造作家具が一般の家と比べると大量に入っています。キッチン、洗面台はもちろん、仕事の作業デスク、打合せデスク、打合せ室の棚、リビングの書棚、廊下の書棚等400万くらい入っています。その金額を一般的な住宅の場合に必要なぐらいの金額に値引くと、建物で坪50万という金額になりました(設計料は入っていません)。え?思ったより大分安い・・・もちろん安くなるように色んな工夫をしました。しかしここまで安くなるとは・・・木造で建てるより安くない?と思える程です。事実、配慮して設計していけば、鉄筋コンクリート住宅は木造住宅と差がないくらいの金額で建てる事ができます。当社のケースで言っても、過去に木造住宅メーカーと競合した経験から地元の中堅クラスの木造住宅メーカーと同額程度で施工できる事が解っています。2016年現在ではそれなりの経験を積んで金額を把握していますが、僕の家の時は何しろ初の試みなので、思ったより金額が安く作れてビックリしました。やった~~~全然建築可能な金額じゃん!見積を見て僕のテンションは急上昇!!夢のマイハウスが現実可能となり、すぐ手の届く所までやってきたのです。

 

★教訓31 入札は納得して住宅を購入できるシステム★

 

■銀行の話

金額が想定内だったので、何も変更をかけずに見積書をそのまま銀行にもって行きました。仮審査を行う為です。事前に最低限の審査はしていましたがもう一歩踏み込んだ審査です。(フラット35の場合は恐ろしい事に本審査は建物完成後です。)そして、審査結果がでました。結果は・・・合格です。やった~~ついに建物を建てられるぞ~~ほんと家づくりって一大事業です。これで42kmマラソンで言うと30km地点という所でしょうか!建物完成というゴールに向かってまだまだ走ります。銀行の審査後立て続けに、確認申請を出したり施工業者と契約したりと目まぐるしいスピードで着工に向かっていきました。

 

★教訓32 施工業者との契約時点は、まだ30km地点★


九、いざ着工だ!!

 

そしてついにこの日を迎えました。地鎮祭の日です。まだ結婚してなかったので両親と参加しました。気を引き締めないといけない業者側として参加するのとは違い、とても晴れ晴れした高揚感があり、とても嬉しかったのを覚えています。両親もなんだか嬉しそうでした。息子が独り立ちして嬉しくない親はいないと思いますが、僕も33歳にしてようやく親から独立した感じで、なんだか嬉しかったです。まあ、まだ建物たってないですけどね!これからですこれから。親からも定番の「家建てるのだから、早く結婚しられ」と結婚をプッシュされ、あ~~~もう、結婚、結婚って煩いな~~と当時は思っていました。しかし、その8ヶ月後には結納して、結婚して、そのうち子供が2人生まれて親の気持ちが解るようになり、この文章を書いている時は、はやく結婚してほしい親心というものが少しは想像出来るようになっています(笑)。家を建てる。結婚する。子供を育てる。そうして色んな事を勉強していくのだと実感している今日この頃です。ですが、その時は、そんな親心なんて全然解らず、ただ「現場が始まるの楽しみだな~~~」という気持ちでした。

 

■地盤改良

そんなこんなで、建物の工事が着工しました。地盤調査はすでに終えています。僕の敷地ではボーリングという地盤調査方式を採用しています。井戸を掘るように三角の矢倉を組んで重りを地面に突き刺した棒の上に落し、棒の地面への貫入具合で地耐力を測定する建築業界全体では最もメジャーな方式です。データー値も信頼出来ると言われています。住宅業界ではスウェーデン式サウンディング方式と呼ばれる簡易的な方式が一般的です。付近のデーター等から判断してスウェーデン式サウンディング方式で問題無いと判断するケースもありますが、この敷地の場合は付近にデーターも無く、ボーリングで地盤調査を行う事に決定しました。そのボーリングデーターを基に構造設計事務所と打合せをして、どのような地盤改良工事が適切か判断します。

 

2015年にマンションの沈下によって発覚した、横浜の杭偽装問題がありましたが、地盤調査とはどのような問題があるのでしょうか?まず、地盤調査というのは総合判断で行われます。付近の参考データー、支持地盤が傾斜しているエリアかどうか、を参考に調査方法を選定して、調査データーと付近のデーターを照らし合わせて地盤改良方法を決定します。総合的に判断するのですが、土の中が見えている訳ではありません。部分的にデーターを取っているだけなので「敷地の一部に支持層が深い部分がある」「中に何か埋まっている」「部分的に腐植土がある」等、想定外の事体も起こります。

 

当社ではいまの所全ての物件でセメント系固化材を使用した方式を採用しています。支持層の深さが2.5M以下であれば、表層改良という建物の下側全ての土にセメントの粉末を混ぜて地盤を固化させる方式を採用しています。2.5Mより深ければ、セメント系固化材を利用した柱状改良と呼ばれる方式を採用しています。セメント系固化材を利用した柱状改良は、地盤改良で最も普及しているので、過去の豊富なデーターがあり無難な方式であると言えます。この方式のメリットは現場でセメント固化材を混ぜながら杭を作っているので、杭の長さを自由に設定できるという事です。仮に調査データーより支持層が深くても、現場で杭を作っているのでその深さまで杭の長さを伸ばす事は簡単なので、業者は必ずその深さまで杭を作ります。

 

既製品杭だとそうはいきません。そもそも長さを延長出来ない杭も多いですし、仮に延長できる場合でも追加の杭が来るのを現場は数日間待ってないといけないので、その費用を誰が負担するかという事なのです。元請会社が「工期は遅らせるな、追加金額は払わない」というスタンスでいると偽装が起きてしまうのです。まあ、テレビで報道されたケースは極端な例で、一般的には問題があれば報告して、費用を施主側に負担してもらうというのが普通だと思います。

僕の家はセメント系固化材による柱状改良を採用しました。確か3.6M程度の深さの支持層だったかと思います。ただ既存の土とセメント系固化材を撹拌して杭を作っていくだけなので問題は無いと思っていたのですが、問題が発生しました。地面の中に瓦礫が混ざっていたのです。コンクリートのガラと鉄筋がくっついたようなガラが出てきて工事が中断しました。仕方がないので、重機を呼んでそのガラを撤去します。なんとか重機で撤去できる程度の深さにガラがあったので助かりました。バックホー(シャベルカー)だと一般的には深さ2.5m程度までしかアームが伸びないので、それより深い所までは届きません。全てガラを撤去して工事を再開します。ふ~~~無事終わった~~。ですが、まだ問題が残っています。地盤の中に埋設されていたガラの撤去費用は誰が負担するのかという事です。これは、一般的には施主の負担になります。工事業者でなんとかしてくれと思うかもしれませんが、土地を提供したのは施主側になります。その土地で問題が発生したら、その費用は施主の負担になるのは当然です。前の土地の所有者が負担するケースも稀にですがあるかと思います。それは、土地の請負契約書に土地からこのような廃棄物が出てきた時はどちらが負担するか記載する項目があります。契約前にそこにチェックいれてもらえば、以前の土地の所有者負担になりますが、その項目にチェクがあるケースは個人的には見たことはありません。ガラが土地から出てくるのは、稀なケースではありますが無い話ではありません。昔の田んぼの埋め立て地なんて何で埋められているか解ったものじゃありません。ちなみにガラの撤去費用に12万円くらい掛かりました。手痛い出費です。

 

★教訓33 その土地に合った地盤改良工事を行う★

 

■現場事務所

地盤改良工事が終わったあたりで、現場事務所が設置されました。現場事務所とはプレファブの小さな事務所で、現場監督が書類を作成したり監理者(僕)と打合せしたり現場作業員の方が休憩したりする場所です。鉄筋コンクリート造は、現場作業員が入れ替わり立ち代わり現場に入って来ますし、現場監督は、ほぼ常駐で現場にいる事になるので現場事務所は必須です。どうしても設置できない時は、近くの土地を借りる等の別の方法を考えますが基本的には計画地内に設置します。木造の場合、大工さんが常駐でいるので現場監督が居なくてもなんとかなります。木造の場合、現場監督は数件掛け持ちしますが、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合、ほとんどのケースで常駐となります。常に現場に現場監督がいるので、施主側としては安心感があります。

 

■基礎工事

現場事務所も設置され、いよいよ本格的に工事がスタートです。まずは基礎工事から行います。鉄筋コンクリート住宅を建てていて、一番施主様が驚かれるのが基礎工事です。大断面なのは勿論、鉄筋の本数が凄まじく見るからに丈夫そうです。基礎下場の形状に合わせて整地を行い、防湿シートを敷きます。防湿シートは地面からの湿気が上がってこないように設置します。次に型枠を組んで最後に鉄筋を組んでいきます。鉄筋が組み終わったら検査を行い、図面通りの配筋になっているか確認します。当社では全ての箇所を写真を撮って施主様に提出しています。基礎の内部は隠ぺいされてしまうので、後からでは図面通りか判断できません。隠ぺい部は特に、誠意をもって工事したり監理する事は勿論なのですが、そもそも実際に確認できる状態にしておく事が「施主と業者の信頼関係の形成」に重要な事であると考えています。

 

監理者がいるというのは大切な事です。もちろん現場監督も確認しているのですが、現場監督と職人は所詮は身内の関係です。工事に利害関係の無い第三者が検査するのが大切なのです。抜き打ちで検査されるのが解っていて、故意に手を抜く業者はいません。後から呼び出させて手直しさせられると、人件費がかさみ商売にならないからです。「常に検査する人がいる」という状態を作る事は大切な事なのです。

検査が終わると、コンクリートを打設します。コンクリートの打設はレッカー車と生コンを運ぶミキサー車の2台で行います。ミキサー車は持ってきたコンクリートを出し終わると、次のミキサー車に交代します。生コンを出し終えたミキサー車は生コンを出荷する工場に戻り次の生コンをミキサーに詰めます。生コンの配合は全自動です。出荷担当者が生コンの成分配合をコンピューターに入力するとその分量で混ぜ合わされたコンクリートが機械から出てきます。それを詰めてミキサー車は現場に向かいます。コンクリートの打設は色んな職人が協力して行います。バイブレーターをかける人、型枠を叩く人、レッカーを操る人、ミキサー車で生コンを運ぶ人、打設が終わったらコンクリートの天端を均す左官の人、現場監督、監理者と実に多くの人が集まって行われます。

 

当社では必ずコンクリートの受け入れ検査を行っております。テストピースを作り破壊検査を行い、適切なコンクリート強度が発現するか、適切なコンクリートが搬入されているか確認しています。まあ、これは一般的なゼネコンなら何処でも行っている事ですが、木造住宅業界では行われていません。そもそも、木造業界では自社で発注したコンクリート強度がどの程度のものなのか現場監督も、社長も誰も認識しておらずコンクリート打設業者にお任せの状態です。結局、木造住宅は構造計算をしてないので、温度補正(気温によりコンクリート強度の割増を行う事。コンクリート業界ではJASS5によって指定されている)はもとより、コンクリート強度すらいくつでも基本的に問題無いのです。そもそも検査とは、指定通りの品質になっているか確認する作業ですが、その「指定」が構造計算を行わない木造建築では行われていません(構造計算していないので指定のしようがありません)。鉄筋コンクリート住宅の場合は、強度を指定して構造計算をかけているので、必ずその強度通りのコンクリートを打設して、その強度が発現するか確認する為に受け入れ検査を行うのです。構造に対する考え方がそもそも木造と鉄筋コンクリート造では違うのです。

 

何故、この様に考え方が違うのか・・・。木造は住宅のように小規模な建物用の工法で、柱や梁の材寸や、基礎形状等いまだに構造計算は行われておらず経験則で考えられています(木造の長期優良住宅の場合は、許容応力度計算とスパン表の複合計算にはなっています)。鉄筋コンクリート造は公共の建物やマンション等の大規模の建物を中心に使われる工法です。構造計算を行う事は勿論、構造計算書通りの品質になっているか確認する体制にそもそも一般的になっているのです。鉄筋コンクリート住宅はマンション等の大規模建築と同じ基準によって作られているのです。コンクリートの打設が終わると次の日から直ぐに1階の躯体工事が始まります。

 

★教訓34 鉄筋コンクリート造の基礎は凄い★

 

■躯体工事

躯体工事といっても、壁式鉄筋コンクリート造の場合はやっている事は基礎工事とまったく同じです。順番に作業員が来ます。鉄筋工→型枠工→電気工・設備工とみるみる立ち上がっていきます。全ての行程が終われば基礎と同じようにコンクリートを打設します。この繰り返しで上階に移行していきます。規模にもよりますが、1階を2~3週間、2階を2週間程度で躯体を作ります。2階建だと合計1ヶ月ですね、木造建築だと建て方が1日、筋交・耐力壁等を設置するのに1日~2日程度ですから、ここの行程の期間の差が全体行程の期間の差になります。ただし、内部工程は鉄筋コンクリート造の方が一般的には木造より早く進行するので大体、木造の工期にプラスで1ヶ月あれば完成させる事ができます。木造で4ヶ月程度の物件なら、鉄筋コンクリート造だと5ヶ月といった感じです。鉄筋コンクリート造って結構建てるのに時間がかかると思われていますが、そこまでではないです。4ヶ月くらいで完成させる事も、職人さえ投入出来れば全然可能です。

 

今となっては慣れっこですが、僕の家を建てていく時にはとても興味深く現場を見ていました。鉄筋コンクリート造の現場自体は見た事はありましたが、勤めている立場で見に行くのと自分の家を見に行くのは、思い入れが違います(笑)。さして変化は無いですが、ほぼ毎日現場に行って、自分の家がどうなっていくのかを見ていました。自分の家が毎日少しずつ出来ていく様はとても感動的です。敷地は最初は草がボウボウでした。背の高い草で、人が隠れてしまうくらいの荒れた敷地でした。その草を刈り、スッキリした敷地にドンドン建物が出来ていく・・・とても感動的でした。

 

思い起こせば、中学生の頃に実家を立て直したのですが、工事中は実家の敷地のすぐ前のアパートに住んでいたので、毎日工事現場を見ていました。柱が立って、どんどん進んで自分の部屋が出来て、とても嬉しかったのを覚えています。高校生の時に、そんな経験もあってか建築家になろうと決心しました。大学で建築を学び、無事就職して初めて設計した建物が形になった時は感動しました。しかし、自分の家が出来ていく様はその時と比べても更なる感動が有ります。鉄筋コンクリート造はまるで地面から生えていくように工事が進行していきます。鉄筋が組まれると大体部屋のイメージが解り、あ~~大体こんな感じか~~と思っていたら型枠が組まれて部屋そのものになります。そして、一週間後には壁型枠は撤去されているので、コンクリ―トと初対面です。黒い・・・光っている・・・あれ?コンクリートってこんなに黒かったっけ?ああ、水分だ・・・まだ水分を多く含んでいるから黒いんだ・・・。型枠の脱型直後の黒いコンクリートは初めて見たので、ちょっと驚きました。型枠を外してから一週間くらいでみるみる色が変わっていきます。そして3階まで打設が完了したのも束の間、3階の型枠を外さない先から一階の内部工事がスタートします。

 

★教訓35 壁式鉄筋コンクリート住宅は見るからに丈夫!だから安心出来る★

 

■屋根工事

僕の家の場合は、ビルと同じ平坦な屋根(陸屋根)を採用しました。完全なボックス型の建物にしたかったので、一般的に住宅に採用されるような屋根はありません。僕の家のケースでは防水工事はもう少し後に行いますが、板金や瓦を葺くような屋根工事がある建物だと屋根工事を先行して行います。鉄筋コンクリート造でも木造住宅と同じように庇がある屋根を作る事も可能です。屋根の下地自体が鉄筋コンクリートなので木造の庇と比べて大きく突き出す事が可能で、軒の深い高級感ある屋根を演出できます。そうした屋根を作る場合は内部に先行して屋根から工事します。

 

鉄筋コンクリートの建物は、雨漏りをしやすいと思っておられる方もおられますが、それは鉄骨造の漏水といっしょくたになっているだけで、実際には木造や鉄骨造と比べて工法的に雨漏りはしにくいです。何故かというと壁式鉄筋コンクリート造は完全なる二重防水です。そもそも躯体が打ちあがった段階のコンクリートがむき出しで、防水が無い状態のまま工事が何か月も行われる事も珍しくありません。防水は季節を選びますので、施工しやすいシート防水ならともかく、アスファルト防水で雪が降る1月2月に施工するのは有り得ません。晴れていればもちろん問題ありませんが、北陸ではなかなかそのチャンスはありません。そうなると3月完成させる物件の場合、防水が最後の3月に施工する事になります。防水レス(防水が無い状態)のまま4ヶ月間、雨が降ったり雪が建物に積もった状態になるにも関わらず、防水しなくても特に漏水しません。その漏水しない状態からプラスして、念のため屋根に防水を施しているのです。アパートでも屋根が防水レスのコンクリート露出仕上で施工しているケースがあるくらいです。なので、防水層のみで防水している木造や鉄骨造に比べて防水されている鉄筋コンクリート造は漏水しにくい建物なのです。仮に防水層が切れて水が浸入したとしても、ほとんどの場合、躯体で水が止まります。鉄骨造の場合は高級な仕様だと、屋根を鉄筋コンクリートで施工する場合もあります。そうした方が漏水するリスクが低いからです。さらに、壁式鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造に比べて揺れが小さく、防水が地震の揺れで破断しにくい特徴もあります。つまり、壁式鉄筋コンクリート造は他の工法に比べて防水的に優れた工法だと言えるのです。

ちなみに僕の家は、アスファルト防水+土間コンクリート押え、という仕様にしています。一般的にシート防水に比べて、アスファルト防水の方が信頼度が高いですし、土間コンクリート仕上にする時はアスファルト防水となります。屋上空間を楽しみたいと思っていたので、防水層が露出している状態では気軽に遊べません。タフな屋上仕上げとしたかったので土間コンクリート仕上げとしました。もちろん土間コンクリート仕上は、防水層が露出している場合に比べて、防水層が太陽の紫外線によって劣化するのが避けられますし、防水層をキズから保護しているのでメリットが多いです。

 

★教訓36 壁式鉄筋コンクリート造は防水性能が高い工法である★

 

■断熱工事

躯体工事が終わると直ぐに窓を取り付けて、断熱工事に取り掛かります。僕の家は壁をウレタン吹付で行い屋根部分はボード系断熱材で外断熱にしています。ウレタン吹付工事は直ぐに終わります。気づいたら終わっていました(笑)。1日工事です。厚みを確認したら厚みが足りてなかったので直ぐに指示して吹き増しを行いました。その経験から厚みを確かめるピンを業者に打たせるようになりました。断熱業者が自分でピンを打つ訳ですから流石に薄くは吹きません。こうした工事内容を確認していくのも「監理者」の業務内容のひとつです。

 

★教訓37 監理業務は重要である★

 

■LGS(軽量鉄骨)壁下地

断熱が終わったらLGS(軽量鉄骨)で壁の下地を組みます。外周部に一般的な方法でLGSで下地を組んでいくと壁が厚くなるのでLGSを中間部で固定して小さな部材で組んでいます。壁式鉄筋コンクリート造は外壁部分の壁厚がとても厚いです。窓枠の奥行が大きくなり22cm程度あるのでちょっとした出窓です。物が置きやすく、棚と兼用になるのでわりと使いやすいです。

 

所で、鉄筋コンクリート造は壁が厚くなるから内部が狭くなると思われている方もいますが、そうではありません。実は内部は木造と同じくらいかむしろ広くなります。それは、構造体となるコンクリートの壁がある所は壁が厚くなるのですが、間仕切り壁の部分は細いLGS下地で作るので、木造より壁厚が薄くなるからです。稀に全ての壁を鉄筋コンクリートで作ると思っておられる方がおられますが、そうではありません。構造的に必要な壁以外は全てLGSで作ります。住宅の場合は内部に細かく仕切りが必要なので、トータルでみれば使える面積が広くなるケースが多いです。後は改装に不向きだと思われている方も多いですが、むしろ細かく柱が無く構造体の壁はありますが、それ以外は撤去しても大丈夫なので、改修計画が立てやすい建物です。老後改修しようと思われているお施主様は、「思ったより改修しやすいですね、木造より改修しやすそうですね!」と言われました。まあ、改修はしやすいのですが、増築は不向きです。木造のように適当に壁を壊してくっつけるという事が出来ません。増築の可能性がある場合はあらかじめ増築出来るように配慮しておく必要があります。ちなみに法的に木造住宅も昔のように簡単に増築出来なくはなっています。既存部が現行の法律に適合していない古い建物の場合は、基本的には渡り廊下で接合する事を義務付けられています。まあ、古い建物に接続する話はケースバイケースですので・・・役場に要確認です。

 

★教訓38 壁式鉄筋コンクリート造は改修しやすい工法★

★教訓39 壁式鉄筋コンクリート造の増築は計画的に行う必要がある★

 

■床下地

LGSの壁下地を組んだら今度は床下地を行います。床の仕上げや諸条件によりいくつかある方法の中から選択しますが、僕の家は2階の床下地はプラ束で行いました。1階の天井を躯体を露出させているので、2階の配管は2階の床スラブの上で処理しなければいけません。この方が配管の音が下階に聞こえないので、防音的にも優れた選択肢です。コンクリートは非常に優れた遮音材ですが、施工上穴を開ける時はその位置に配慮しないと、せっかくの遮音性能を無駄に低下させてしまう事になります。

 

しかし、一方で遮音性の問題、配管を流れる水の音の問題が無いのであれば、二階部の土間床にレべリングを行いクッション付きフロアを施工するのが一番安上がりです。クッション付きフロアはマンションの床で良く採用されている商品で土間の不陸を調整しながら、下階に足踏みの振動を伝えない特徴があり、マンションに適しています。注意しないといけないのが、このクッション付きフロアはクッションがふかふかしていて踏み心地が柔らか過ぎます。使用される場合は必ず現物サンプルで確認が必要です。メーカーによっては1階で使用を限定した硬めの不陸調整シートを使用した商品を扱っていますので、住宅で使用する場合はそれを使用するのが適切だと思います。しかし、商品数が非常に少ないという問題が有ります。別の工法に、断熱材兼用の床下地を作る商品も普及しています。ネダフォームと呼ばれる商品で、断熱材と床下地の樹脂製の貫が一体となった断熱ボードで、役場で建てる集合住宅でよく採用されています。昔から使われている商品なので、職人も施工に慣れていますし、床下に断熱材を設置する事になるので床面の温度が上がり、快適な空間作りに一役買います。24時間暖房を行う場合は躯体そのものが温まっているので2階の床下に断熱材を入れるメリットは少なくなりますが、各部屋で個別に冷暖房を行う場合にはメリットがあります。

 

鉄筋コンクリート造の場合、それぞれの施主の要望に合わせて床の下地をどのように構成するかは、適切な選択に経験が必要です。僕の家は、1階は土間床なので断熱ボードを施工してその上にモルタルを施工しています。住宅メーカーの中には地熱を利用するとかなんとか言って、床面を断熱しない工法が存在します。フラット35の標準仕様書にも施工の義務はありません。しかし、外気に比べて安定していると言っても、しょせんは地表面付近なので一般的に気温と差がありません。地中深くの安定した地中温度の話とは別ものです。少なくとも、室温に比べてある程度温度が低い訳ですから暖房負荷なのは間違いありません。個人的には、断熱する方がベターだと考えていて、床面も必ず断熱します。まあ、していないメーカーは断熱するのがベターなのは100も承知で価格を落とす為に断熱してないのでしょうが・・・床面の温度は、床下の断熱材によって全然違います。ぜひ断熱する事をおススメします。

 

★教訓40 一階の床面は必ず断熱しよう★

 

■仕上げ工事

壁と床と天井の下地が終わったら後は内部の建具を付けて、仕上げ材を貼ったら工事完了になります。電気配線は下地が終了した段階で行われ、電気屋が来たと思ったら直ぐに仕上げ材が貼られていきます。当社では必ず、コンセント、スイッチの位置を現場でお施主様と確認するようにしています。図面で見ているのと、現地で見るのでは違ってきますし、使い勝手に影響する、大切な確認ポイントだと考えています。

 

ここからの工事はあっという間です。完成3週間前に全然仕上がっていない状態から、3週間程度で一気に完成します。よくお施主様が、終盤に一気に内装工事が完成してビックリされます。プラスターボードを貼ってクロスを貼れば壁と天井は仕上がりですし、床もコンパネ下地、フローリングと貼れば終了です。巾木を付けて、照明を付けてトイレや洗面台、キッチン等の設備機器を設置すれば完成です。仕上げ工事の時は、毎日どんどん建物が建物らしくなっていきます。

 

普通は建具枠を付けてからボードを貼り、クロスを貼って最後の最後に建具を入れるのですが、僕の家にはほとんど建具枠はありません。1・2階のトイレを除いて全てが引き戸になっていて開けっ放しに出来るようになっています。建具枠が無い場合、建具と壁の隙間は若干大きくになってしまうのですが、建具枠が無い分シャープなデザインになります。どちらかと言うとデザイン重視で建具枠レスの引き戸にしたのですが、天井までのドアは、通常ある建具上の下り壁も無く、空気が流れやすくかつ、引き戸を開けていてもデザイン的に違和感が全くありません。24時間冷暖房の時にとても役に立っています。正直、設計の段階では24時間全館暖房を想定していなかったので棚から牡丹餅でした。引き戸を全て開けっ放しにして、建物の各部屋を繋げる事で、2階に1台、1階に1台のエアコンで建物を暖める事が出来ています。

 

仕上げ工事で毎日、室内の表情が変わっていくので現場に行くのが楽しくて仕方がありません。まず床が貼られた時に驚きました。スゲ~~、カッコイイ~~想定していたよりも豪華な感じで好印象!広幅のウォールナットの厚貼のフロアにしましたが、かなり好印象だったのを覚えています。しかし、住んでいて慣れてくるともう少し味がある材料にしても良かったかな~~と考えたりします。まあそれを言ったら、クロスも同じ事なのですが・・・珪藻土クロスは質感も良くステキだとは思ったのですが、住んでいるとやっぱり漆喰が良かったかな~~とか思います。お金とメンテナンスと雰囲気を総合して判断するのはとても難しいです。色んな材料を実際に業務で使った事のある僕ですら、自分の判断が正しかったか解りません。物を選ぶってとても難しいです。クロスが貼られた時も感動しました。急に家らしくなります。雰囲気がガラッと変わります。素材によって同じ部屋の形をしていても見え方って恐ろしい程変わります。似たようなクロスにしたって、シャープなクロスと凸凹したクロスとでは全然違う表情になります。イメージを確認するのに有効な方法は、現場でサンプルを当てて確認する方法です。CGで確認するより、よっぽど解りやすいです。お試しください。

 

★教訓41 仕上材料が違うと雰囲気はガラッと変わる★

 

■外壁工事

内断熱の場合は外壁面が打ちっ放しコンクリート仕上になるケースが多いです。一体になっているコンクリートなので、貼り合わせた一般的な外壁とはグレードが違います。その重厚な表情は他の材料の追従を許していません。何というかまさしく一つの塊という感じです。まあ、見た目は個人の感覚なのでなんとも言えませんが、僕は構造体の力強さ、そものもがデザインとなっているコンクリートの外観が好きだったので、打ちっ放しコンクリート仕上を採用しました。当初、外壁の材料を検討していた時に、打ちっ放しコンクリート仕上のみだと若干面白味に欠けていたので、いくつか仕上材料を組み合わせる事にしました。①タイルと ②鉄板のドブ漬の板と ③リシンです。

 

庇の部分を象徴的にしたかったのでSUSの板にしたいと思っていましたが、価格の面でドブ付の板を庇に貼りました。ドブ漬とは鋼管の電柱がそうなっていますが銀色のまだら模様の塗膜で、溶融亜鉛メッキの事です。亜鉛のプールに材料を入れてメッキするのですが、一般的なペンキ塗りに比べて格段に錆びにくく、メンテナンスフリーに近い塗膜です。外部に鉄を使う場合、一般的なペンキ塗りにすると一年も経たずに錆びが発生してきます。何処にでも錆びた鉄の手摺があると思いますが、放っておくと錆びが広がり大変な事になります。僕の家では、屋上の手摺と正面の大きな庇にスチールを使ったので錆びないようにドブ漬けを採用しました。ドブ漬けは本来、化粧として使われる塗膜ではありません。あくまでも錆びないように行う塗膜で見た目を重視する時に行う工事ではありません。しかし、その均一ではない面白い表情と、錆びないというメリットから、愛用している建築家も多いです。ただし、普通の外部塗装に比べて数倍も価格が高く、僕の場合で言うとステンレスにするよりは妥協して安くはなっているのですが、それでもそれなりの価格になっています。僕の場合は、外観に1カ所くらいアクセントを入れないと締まらないな~~と思い、庇部分にドブ漬の板を採用しました。余談ですが「亜鉛溝漬」で画像検索をかけると僕の家の庇が最上段に出てきます(笑)。住宅で、このドブ漬けを象徴的に採用している例は全国的に見ても少ないと思います。しかし、面白い材料なので、他の人と違った感じにしたいという場合は使ってみてもいいかもしれません。ただ、まだら模様の表情はやってみないとどうなるか解らないという点だけご了承下さい。

 

という事で、庇を象徴的なシルバーカラーにして、後はリシンとコンクリートのコントラストで表現するのでも良いと思っていました。しかし、それでは若干面白味が足りないと思い、もう一つ材料を組み合わせる事にしていました。タイルです。素焼きの柔らかい質感を持っているコゲチャ色か黒に近い灰色のタイルにしたかったのですが、これがなかなかイメージ通りのものが見つからない・・・色んな会社の良いと思えるタイルをカタログで探しては、サンプルを取り寄せました。その結果、これならいいと思うタイルが名古屋モザイクタイルに見つかりました。ところが現場が始まって業者が確認すると在庫が無い・・6ヶ月待ちだという事でした。なにそれ6か月?工期あと3ヶ月なんですけど・・・当時、不況からか各タイルメーカーが在庫を減らしていて、タイミングによっては良くある話らしい・・・う~~~ん、やっと見つけた予算内のイメージが合うタイルだったのにな~~~探しに探した結果、見つけたタイルだったので今更、他のタイルにする気になれません。業者にも近いイメージの商品を探してもらってサンプルを確認しましたが、ピンと来ない・・・やむを得ずタイルを辞めてリシンの吹付にしました。リシンだったら色が自由なので思い通りの色になります。

 

そうだそうだ、最初はタイルを使用せずに、リシンとコンクリートの対比でいいと思っていたじゃないか!と、見つけたタイルに未練がある自分をなだめて、リシンの色を検討する事にしました。基本的にはリシンを黒っぽくして、コンクリートとコントラストでデザインしたいと思っていたので、黒っぽい色をいくつかサンプルを取って実際に現場で確認します。実際に外壁にサンプルを当ててみて、まあこれでいいか・・という色が見つかったのでそれにトライしました。出来上がった色味は想定通りで大変気に入っていました。しかしそれから4年後・・・あれ?色薄くなってきている?色が大分、退色して黒色に近かったのに現在では紫っぽくなっています。確か一番濃い色にしたはずなので、僕の場合はどうしようも無いのですが、退色する事も考慮してちょっとだけ濃い目に設定するのをおススメします。それか塗装によっては色を作る顔料が無機質のものもあります。塗装の色味を何を使って作っているかという話なのですが、鉱物系で色を作っている場合は無機顔料になり、無機質なので太陽の紫外線で劣化しません。有機顔料は石油から作られていて紫外線によって退色します。カラー見本に別にその事は記載されていませんが、中には無機顔料によって作られている色もあるそうで、僕の場合は色味優先で有機顔料を選択していますが、鉱物が色味を作っているというのはなかなかにそそられます。まあ結局、鉱物系を選択してないですけどね僕、気にせず選びましょう(笑)。そうして吹付を行い養生シートが外れて外観がお披露目になった時「うお~~~すげ~~~」とこれまた感動しました(笑)。家づくりって感動の連続です。ちなみに打ちっ放し部分も塗装しています。本当は塗装しない自然の表情がコンクリートの風合いを醸し出すと思います。塗膜でそれを覆うなんて風合いを殺す事になる・・・と躊躇しましたが、正直塗装して良かったです。コンクリートの風合いの話はあるのですが、現実的に塗装をかけないと黒く汚れていきます。それも風合いだというプロならではの素人受けしない話もありますが、やっぱり何時までもキレイな外観でいたいですよね!という事で多少お金はかかりますが、クリア塗装を行いました。無着色のクリア塗装はコンクリートの表情を極力残したいと思って採用しました。クリア塗装にも艶消しと艶有があって、艶有はテカテカして高級感があり、艶消しは比べるとマットなイメージです。艶有は塗装する事でコンクリートの表情がより鮮明になるイメージが好きではなかったので、マットな艶消しを採用しました。艶消しの方がコンクリートの色むらが若干薄れる印象です。ちなみに、どちらでも好きな方にすればいいかと思いますが、塗装の本質は外壁を汚さない事と考えると艶有の方が汚れません。一般的には艶有で施工されています。

 

現場ではクリア塗装の試し吹を数種類行って、それで風合いを確認して実際に塗装します。クリア塗装に限らず、コンクリートに吹き付ける塗装は半透明のケースが多く、現場のコンクリートの色と合わせた色になるので、現場で実際に試し吹きを行い、色味の確認を行います。僕の家は完全に透明なクリア色の塗装を行っているのですが、最近は打ちっ放しの時にちょっとだけ色を付けるようになってきました。そうした方が落ち着いた表情になり住宅としては適切だと個人的には考えています。又、塗装は中性化も防ぎます。雨や空気によってコンクリートの中性化が進むと、鉄筋が錆びる危険性が出てくるので、塗装する事は建物の耐久性にも影響します。

 

★教訓42 打ちっ放しコンクリート部も塗装は不可欠★

 

■外構工事

いよいよ最終段階です。外構です。といっても基本的に土間をするだけなので確認するような事はありません。しかしただ1点、検討しなければならない事があります。建物の前に1m×1m程度の花壇をどうするかです。砂利で敷き詰めるので低草は選定する必要はありませんが、1本だけ建物に似合う木を探す必要があります。木は、造園屋さんに材種だけ言って植えてもらう場合や、ちょっとしたパースで確認してあとは造園屋さんが選定するパターンもあります。僕の場合はその1本の木を市内の造園屋や園芸店に自分で探しに行きました。

 

富山市の中にはそこまで園芸店は無いのですが、それでも5か所くらいは回りました。建物のパースと現状の外観写真を持って、園芸店で実際に木を見ながら建物に合うか確認しました。そして、ようやく1本の木に出会いました。形が面白く、斜め上に伸びて行きそうな木で、モダンでシャープな外観に和風な感じがミックスされて面白い感じになると直感しました。実際に建物の前に植えると・・・いいっす。建物が全然違う風に見えます。感動です。花壇の中には黒い玉砂利を敷き詰めました。おお!やっぱり木があると建物の表情が柔らかくなって、全然違うグレートの建物になるな~~と実感しました。余談ですが、その次の年に砂利の下に防草シートを敷き直しました。草が生えてきて管理が大変でした。防草シートを敷いても防草シートを突き破って草は生えてきますが、それでも大分管理が楽になりました。生命の力は凄まじいです(笑)。

 

敷地の駐車場の部分は単純に砂利を敷いていたのですが、次の年に雑草の管理が面倒臭くて全てアスファルトを施工しました。当初、予算が限られていてそういう所の予算をケチってしまいますが、なんとか捻出出来るのならやってしまった方が後々楽です。最後の最後に来て「やってしまおうか・・どうしようか・・」と思っている工事があったらやってしまいましょう!その時やらなくてもかなりの高確率でやる事になるので2度手間です。まあ、そう簡単に割り切れるものでもないですがね・・・所で、お恥ずかしながら、その選びに選んだ木を4年後に枯らしてしまいました(>_<)。夏も水をやっていたのですが、多分少し虫が付いていてその虫を放っておいたのが原因かと思います。土間で周囲を埋められた木は、根に雨水が行渡らないですし、自然の状態とは言い難く枯れやすいです。注意下さい。

後は、外構で言うと道路からの車の入口の件で行政と揉めに揉めました。着工する前は歩道の縁石を撤去して敷地に入る入口を2つにしてもいいという協議を前担当者としていたのですが、年度が変わり別の担当者になり判断が違ってきて、もう一つ入口を作るのは問題があると言われました。「え~~~何それ・・だからその点も踏まえて前回の担当者と話しているんだって!!」と言っても聞く耳持ちません。色々話し合って、担当して頂いた方の名前を上げて確認とってもらったりして、最終的には、何とかもう1カ所、歩道に乗り入れ口を設置する事を認めてもらいました。何が言いたいかというと、建築にはこのようにグレーゾーンの判断が人によって違う部分が存在します。後々問題になりそうなら可能であれば先に実行してしまうのが無難です。当初、打合せした時にグレーな話だから後で結論が変わりそうな予感がしたので、先行で工事しときたかったのですがお金がなかったので出来ませんでした。まあ担当者もメモったし、記録も取ったし問題ないだろうと甘く考えていました。そして、実際にもめてしまっています。まあ、記録を取っていたのでなんとかなりましたが・・・。こういう事が建築には起こりえます。そうした事を上手く乗り切って建築は作っていく側面もあるのです。

そういえば、建物を確認申請に出す時も問題になりました(笑)。僕の家は雑種地を開発行為の申請を行い建物を建てるケースでした。市街化調整区域と呼ばれるエリアで、読んで字のごとく市街化を調整する区域です。基本的に市街化しない土地なので、既存宅地以外で家を建てられるケースは、親が田んぼの所有者で、息子が田んぼを管理していくのに家が必要なのを前提に、田んぼを農地転用するパターンです。まあ実際に田んぼを管理するかどうかは・・・してくださいという事です。僕のケースは、雑種地なので一定の条件を満たせば建てられます。①「50戸連たん」と呼ばれる僕の家から50戸の家が各家の間隔が50m以内で繋がっていくかという条件と ②土地が200㎡以上あるか ③敷地が側溝に隣接しているか、という概ねこの3つの条件に適合する必要があります。この中で、③の敷地が側溝に隣接しているかの項目で面倒な事になりました。

側溝に隣接してはいたのですが、側溝に敷地内の水を放流してもいいという承諾書に、地元の総代の人のハンコが必要でした。(生産組合長のケースもあります。その地域の用水管理者です)。総代?なにそれ?と思われる方も多いと思いますが、総代とは言ってみれば町内会長で村では一般的にそう呼びます。まあ、呼び方はどうでもいいのですが、総代の家にある日突然お邪魔する事になります。事情を説明するのですが、そもそも話が伝わりません。それもそうです。総代は都市計画法についてまったくの素人です。なのに、いきなり都市計画法の話をして必要だから判子を押してくれというのを納得してもらうのはなかなか難しいです。押していいかどうかの判断なんてつくはずがありません。このケースは僕も業務上、過去に何回か経験した事がありました。同じく市街化調整区域に引っ越すパターンで、お施主様の引っ越し先の町内の班長が工務店の社長で「ああ、オラから言っておいてあげっちゃ!どうせ何も解らんから」という奇跡的なラッキーで解決したケースや、よく解ってないけど「ふーんそんなの必要なんやね~~」と簡単に押してもらえるケース。施主のお父様が、同じ村の総代から判子をもらうケース(このケースは、お父様と総代が知り合いだから簡単です)。等、思い起こせば色んなケースがあります。僕のケースでは「市役所にこちらから確認します」という話になり、待っていたのですが連絡が来ず再度訪問したら「電話したけど理解できなかった」という話でした。・・・まあ、細かい事言えば、電話で理解できるような内容ではないよな、そもそも素人だし・・・まあ仕方ない、市役所に相談して市役所の人を連れてこれば流石に判子を押してくれるだろう、と手を打とうと市役所に相談に行ったら、別の関係者でもいいから判子を貰ってきてくれという話になりました。それでもいいのならと、調べて町内ではなく区長の方に相談に行ったら、今度は立場上そういった書類にハンコを押さないといけないという事を知っておられて簡単に押してもらえました。「いや~~~こんな田舎によく越して来られたね~~~」と歓迎までされました。そうして、なんとか判子をもらい無事に申請を通す事ができました。いや~~建物を建てる時って案外そういった話ってあるものなのです(笑)。こう言ったら不味いですが、そうしたハードルを工夫してクリアしていくのもなかなか面白いです。

まあ、そんなこんなでようやく建物が完成して引っ越す事が出来ました。フラット35は建物の完成時検査の後に、本契約になるという恐ろしいシステムですが無事に契約して住宅ローンがスタートしました。僕もついに、33歳にして住宅ローンを払う事になったか~~~感慨深いです。大金を借金していると、大人になった気分です(笑)。

 

★教訓43 家づくりはいろんな事が起こる可能性がある★

 


十、建物に住んでみた!!

 

■建物に住んだ感想や、結婚して思った事!

ついに建物完成した~~~これで僕も一国一城の主だ~~~。しばらく一人暮らしを楽しむぞ~~~と言う事で、一人暮らしを楽しむ予定でしたが、予定は予定・・・すぐに結婚しました(笑)。ここが家づくりの難しい所です。家づくりの予定外あるあるで「子供は2人のつもりだったのだけど・・・」「結婚はしないつもりです」「仏壇は置かない予定です」「神棚は置かない予定です」「急に単身赴任になってしまった」「実家から母親を引き取る事になって・・」「どうしても親が嫁入りダンスを買いたいと言っていて・・」「和室が無い家なんてありえないと親が言い出して・・」等、家づくりには想定内のような想定外が沢山あります。僕のこの「結婚」というもの想定内のような想定外で、家を建ててから1年くらいは独身で気軽に住んでみたいな~~と思っていましたが、縁がありスピード結婚にいたりました。まあ、一応、結婚や子供も想定した家にはなっているので問題無いのですが「想定したプラン」と「実際に結婚していて考えるプラン」と「実際に子供がいる時に考えるプラン」いうのは全く別物です。後者の方が現実的なプランになっていきます。

 

まあなんとかなるさ、想定していたのだから・・・。でも、一人で住むイメージで作ったからな~~でもまあ、なんとかなるでしょ!そうしてしばらくして結婚生活が始まりました。建物が完成したのが2011年9月で、2011/11/11に入籍して(僕の誕生日です(笑))、2012/2/10に結婚式を挙げて、新婚旅行にその後行ったので、実際に2人で住み始めたのは2012年の2月末です。この本を書いている今日は2016/1/14だから住み始めてまる4年経った事になります。その間に2人の子供も生まれました。現在、上の子が3歳男の子で下の子が0歳女の子です。子育ては大変で色々あり、めまぐるしく生活環境が変わっていきます。しかし、建築家としては随分勉強になります。小学生の動きは想像出来ても、幼児の動きは子供がいないと想像できません。甥っ子が2人、姪っ子が1人いるので何となく解っているつもりでしたが、妹の子とその場限りで遊んでいるのと、自分の子供と一緒に家で生活するのは別次元の話だという事が解りました。子供が無事に成長できる家というのはどうあるべきなのか、家族を守る家とはどうあるべきか、想像で計画しているのと、実際に子供を持って住んでみて思う事ではまったく違います。実際に家族と生活してみてどの点が想像と違っていたのか、そもそも「一人暮らしをベースとして考えた家」がどこまで「家族を守る家」として通用したか話してみたいと思います。

 

僕の家は建築設計事務所用の「事務所」が1階部分で、2階と3階が「住宅部」になっています。前にちょっと話ましたが、住んでみてこの分け方というのが完全分離である方がやはり良かったと思いました。僕の家は玄関が一つしかありません。事務所の玄関と住宅の玄関を兼ねているのです。理由は、省スペース化と外観のデザインの問題からです。独身の時は、これでベストだと考えていました。勿論、家族が出来た時に若干の問題が発生する可能性はあると思いましたが、それは些細な問題だと位置付けていたのです。何より、子供と暮らした経験が無いので具体的にイメージ出来ません。具体的にイメージ出来ないので、なんとかなると決め付け、価格の安い方、デザイン的に優れている方を選択してしまいます。

 

一人暮らしの考え方:事務所と住宅の入口が一つでも不都合が無い。

家族の一員としての考え方:絶対に住宅部と事務所部は完全分離したい。

 

まあ、実際にプランニングしてみないと、どうなるかは解りませんが子供が2人いる、今ならおそらく、当時設計したプランとは違うプランになっていると思います。一人で住む分には今のプランで大丈夫でした。むしろ使いやすく、外観のデザインも住宅という印象を出さずに、事務所として成立させた方が事務所デザインとして豪華に見えます。住宅らしさを消すというのが、ビジネスの側面から見た時は店舗併用住宅の基本であると考えているので、当時の僕の選択が間違っているとは言えませんが、実際に打合せ室でお施主様と打合せしていても、子供達が大声で帰ってきますし、図面書いていても「パパ、こっち来られ~~~」と気軽に2階に呼ばれたり、暇な時は下りてきて事務所に遊びに来る始末です。2階の住宅部分の最初の扉に鍵は付けてあるのですが、あくまで事務所側からの防犯の為に付けたもので、内側から子供が簡単に開けて下に遊びに来ます。「駄目だよ~~~2階に行かれ~~」と、ほのぼのとしていて、親子の関係を築く上でも、良いと言えば良いのですが仕事の邪魔なので、今プランニングしたら完全分離に必ずします(笑)。でもまあ、もう5年程して下の子が5歳くらいになれば、ある程度言う事も聞いてくれて上手くいく可能性もあるので、一概に断定できませんが、外観デザイン的に可能であれば、住宅専用の入口を別に設けたかったというのが今現在の本音です。

 

★教訓44 ライフスタイルの変化を良くイメージしてみよう★

 

1階から2階に行く階段も問題です。1階を土間空間にしたので、その連続デザインとして階段がコンクリートで出来ているのですが、子供が踏み外したらと思うと怖いです。まあ、今からでも上から何かを貼って改修できる仕様ではあるのですが、コストの話や面倒臭いというのや、デザイン的に若干合わなくなる事を考えると結局、改修しないのですがね・・・。子供を持って思うのですが、良く雑誌で鉄骨階段の手摺の下がオープンなデザインがありますが、あれは相当怖いです。完全に子供が落ちてしまいます。ネットを貼ればいいじゃないかと思われる方もおられますが、手摺の一番下に横に鋼材が無いと、下側からいくらでも落ちてしまいます。そこら辺の配慮が無いと「ああ子供が居ないのね」と今なら思ってしまいます。階段の段が尖っていて恐ろしい事になっているデザインも怖いです。子供の目に突き刺さったらどうするの?と思います。又、隙間があれば子供は必ずそこから顏を出して遊びます。そうした事に配慮していないデザインというのは結構多く、実際問題、僕もどれ位問題があるのか解っていませんでした。お施主様が住宅を建てる時点で子供がおられれば、お施主様の方が子供の動きを解っているので危ないかどうかの判断が付くのですが、お施主様も設計者も子供がいないケースだと、将来発生する危険度を判断するのはなかなか難しいです。

 

僕の家の内部には、コンクリートの壁があるのですが、子供がぶつかったら痛いかな?と思ったりもしたのですが、それは問題ありませんでした。子供は子供で、自分で注意して動きます。思ったより自分で考えているな~~という印象です。それより、これは初歩的な話ですが、子供の目の高さに出っ張りがくるようなデザインは極力控えるべきです。廊下に扉があり、その取手が既製品だとある程度配慮した商品になっているのですが、造作で作るとそうした配慮されてない取手の商品も幾らでも選べ、知らず知らずに危険性が生じている場合もあります。建具に限らず、出っ張りには注意を払うべきです。そんな細かい事・・・と、子供がいない時なら思ってしまいそうですが、子供がいる親にとって、子供が安全に生活出来る環境というのは、最優先事項です。

 

寝室にあるトップライトが雨の日、雨音が結構うるさいです。怖いものである程度慣れますが、設置しない方がよかったです。寝室に朝、柔らかく光が徐々に入ってくるようにデザインしていて、いい感じと言えばいい感じなのですが、雨音の問題を安易に考えてしまっていました。背の高い掃出しの窓も建物がボックス型の場合は雨音が煩いので、寝室に設置する場合は注意が必要です。

 

1階と2階はコンクリートのスラブで遮られているので、そこから音は漏れてきませんが、扉を介して廊下から音が回り回って侵入してきます。大人の足音は全く聞こえませんが、子供が床で飛び跳ねると少しは振動が伝わります。外部に対する遮音性は凄まじく、敷地は県道に隣接していますが、車の音は殆ど聞こえません。ただし、窓や換気口からは音が入ってくるので、遮音性の高い窓を設置したり、換気口の位置に注意したりする必要があります。

建築家として思ったのは、自分の設計した家に住んでみないと解らない事ってかなりあります。僕の家は実験的な要素もあるので、全体的にやや踏み込んだデザインにはなっています。しかし、踏み込んだデザインというのは当然リスクがあり、どの程度踏み込めばどの程度リスクがあるかというのは、実際にそれを行って住んでみないと詳しい所までは見えません。自分で設計した家に住んでみて、建築家として恐ろしく成長できました。ホント先行投資で建ててみて良かったです。

 

★教訓45 自分の家を設計した事のある人に設計をお願いする★

 

■新しい土地に住む事

正直あまり具体的に考えずに土地を購入してしまいましたが、新しい土地に住むという事は一般的にはその土地のコミュニティに加わるという事です。ご近所付き合いは勿論、町内会に参加したり、色んな付き合いというものが発生します。分譲地に入ると新しい分譲地なら住人は皆、似たような状況にあります。話も考え方も世代が近いのである程度合うでしょうし、分譲地内で集会とかも行われるかもしれませんが、境遇が同じなので話やすいのではないでしょうか?僕は、そういった付き合いを極力しない方針で今の土地に越してきました。村の集落とは若干離れていて、隣は倉庫と資材置き場ですし、道を挟んだ向かいに家があるだけです。僕は引っ越した時は、向かい方と町内会長の方だけに挨拶に伺って「よろしくお願いします」と軽く挨拶しただけでした。向かいの方は優しそうな方で、まあ普通の核家族の家です。たまに野菜やスイカを頂いたりと大変よくして頂いています。まあご近所付合いはいいとして、その他は最低限だけ村と関わっていくつもりでした。しかし、ゴミは捨てさせてもらわないといけないですし、少しは町内と関わる必要があります。それが新しい土地に住むという事なのです。

 

実家がある町内は、家を建てる33歳まで大学生活を除く29年間住んでいますから、町内の人とは当然顔なじみです。しかし、町内付き合いというものは親がしているので、町内付合いというものがどういったものか家を建てた当時、僕は解っていませんでした。実家は富山市で言うと都心の方にあり交通の便も良く、歩いてスーパーに行けるし、デパートに行けるし、歩いて行ける飲食店が沢山あるし、繁華街まで歩いていけるし、飲みに行ったら歩いて帰って来られるし、公共施設も近いしで大変便利な所に住んでいました。富山市は基本的には車社会なので、東京と違って歩いて色んな店に行けるという環境に住んでいる方はそんなに多くありません。「ほとんどの用事が徒歩圏内で済ます事が出来る」この事がどれだけ快適な事か、出来なくなって初めて解りました。

 

引越先の地域は、車でなければお店に行くことは出来ません。周りが田んぼなので、実家と比べると小さな虫がとても多いです。網戸の重要性がとても良く解ります(笑)。窓の内側に設置する網戸だと、窓を開けていると虫が網戸に付いて、窓を閉める時に網戸を上げる事が出来ません。風景はいいです。開放的です。しかし利便性というものが無くなってみて初めて、とても重要だった事が解りました。まあ、土地代の話はありますけどね、利便性の高いエリアの土地は価格が高くて手が出なかった訳ですし・・・

 

まあ、建ててしまったものはどうしようもないので、いかにこの土地で楽しむかを考えるしかありません。そう思って暮らしていると、村の青年会から青年会に入らないかと誘われました。なんでも獅子舞があり、その人手が足りないから手伝ってほしいという事でした。獅子舞とは馴染みの無い方は解らないと思いますが(僕は全く解りませんでした)、朝一番で神社から始まり、村中の家という家を一軒ずつ獅子を舞う祭りで、村を上げて行われる、年間で最大の一大イベントです。「あ~~そうなのですか・・・じゃあ今日、様子見に行ってみますね!」気軽に返事して、練習を見に行ってみると結構人が集まっていて子供に獅子打(獅子を倒す役)の練習をさせていました。「おお~~なんかやっている~~」と思っていたら、「澤田さんもちょっと獅子の練習してみんけ」と獅子舞を教えてもらいました。「おお~~~結構難しい・・全然解らない・・でもまあ、少しは面白そうかな・・・」そういう軽い気持ちで獅子舞の練習に参加し始めました。それから、初年度は自分の家のみで獅子頭を回し→2年目に獅子舞のメンバーになり(5人獅子です)→3年目に副会長になって「にらみ」という重要な舞も舞えるようになり→4年目に青年会の会長になるというスピード出世をとげました(笑)。その過程で町の20代~30代の青年会の人達と仲良くなったり、ゴルフは頑なにしてこなかったのに練習して町内のゴルフコンペに参加したり、班の人との懇親会に参加したりと、どっぷり村に染まっています(笑)。

 

獅子舞をして驚いたのが、村の家の多くが獅子舞を受け入れる為に、正面側に和室が配置されているという事です。村の事業が住宅のプランを左右するという事に、村に越して来た当初凄く驚きました。青年会の会長をすると色々と町内の事も解り、町内の人も僕の事を知る事になります。町内の重要ポジションをこなした事になり、村の一員として認められる側面もあります(面倒臭いと言えば面倒臭いですが、楽しい面もあります)。青年会の会長を受けた年の獅子舞の練習シーズンに、丁度子供も生まれて、仕事も忙しくて恐ろしい目に合いながら頑張り通したのは今となっては良い経験です。こうした新しい経験というのも、新しい土地に引っ越してきたから始まった事であり、引っ越すという事は新しいコミュニティの中で暮らす事になるというのを、知ってほしかったので書いてみました。土地を探す時にちょっと頭の隅に置いておいて下さい。

 

■税金と保険の話

住んでいると税金を払う必要があります。住宅取得税、固定資産税、火災保険、町内会費等、電気代、水道代の他に色々払う必要があります。

 

①住宅取得税

一般的に鉄筋コンクリートは在来木造と比べて若干税金が割高です。それは建物の評価額が高いからです。固定資産税課の職員によって調査されて決定されるのですが、家ごとによって評価額は違います。木造住宅でも仕様が良ければ高くなりますし、逆に鉄筋コンクリート住宅でも仕様によっては木造より低くなります。ようは、建物の価値を国の基準で数値化したものが評価額となります。国に基準によるので一概に言えませんが、実際の建築費用に連動していると言えます。

不動産取得税=(固定資産税評価額-1200万)×3%です。

 

②固定資産税

固定資産税=固定資産税の課税評価額×1.4%(税率)で計算されます。

課税評価額とは家屋の場合は、原則として評価額の事です。では、評価額とは

評価額=再建築価格×経年減点補正率

 

という式で表され、ようは、同じ建物を建直す時に掛かるであろう費用に、建物が劣化した分の割引を行ったものが評価額になります。つまり、評価額とは建築費用と比例関係にあり、建物の価格が高ければ、多く支払う必要があります。又、経年減点補正率は木造に比べて鉄筋コンクリ―ト造の方が耐久性に優れているので、鉄筋コンクリート造の補正率の低下率は木造に比べて低くなります。詳しくは市役所の資産税課で聞いてみれば、少しは解ります。固定資産税は住宅取得が年末だった場合にちょっとした調整をした方がお得です。富山市の場合、1月1日に所有している不動産に対して固定資産税がかかります。なので、12月31日に住宅を取得する場合は、翌年の1月2日に取得する場合と比べて1年間分多く固定資産税を払う必要があるのでご注意下さい。とまあ税金の話を軽くしてみましたが、地域によっても違いますので、詳しくは市役所の資産税課で聞いてみてください。悩んでいるくらいなら電話してみるだけでも大体解ります。ネット上に色々書いてありますが、地域差もありますし市役所で確認した方が確実です。

 

鉄筋コンクリート住宅の資産価値は木造住宅より3倍も長いです。資産価値が下がらない建物なので、木造住宅に比べると固定資産税を長く払わなければいけません。しかし、これは建物の性能が長期的に長持ちすると法的に認められているという事なのです。木造住宅は実質20年で価値が無くなります。20年間で一般的に売る価値のないほど性能が低下してしまうという評価が下されています。それに比べて鉄筋コンクリート住宅はその3倍の60年間価値が存続すると評価されています。実際問題、木造住宅は30年程度で壊されています。それに比べて鉄筋コンクリート住宅は長期に渡って安心して住むことが可能です。子供の世代にまで引き渡せる建物であり、構造体の耐久性の高さから、リフォームを行えば新品同様の住まいに生まれ変わる事が出来ます。そうして、子世帯、孫世代までもが生涯を安心して暮らせる、ヨーロッパの住宅のように家族に愛される家になるのです。

 

③火災保険

火災保険は、鉄筋コンクリート造の方が一般的に大分安いです。保険会社にもよりますが、2倍程度の差があります。仮に損保ジャパンで調べてみたのですが、建物の保障金額4000万・家財保険1000万で木造住宅だと8.2万/年 鉄筋コンクリ―ト住宅だと4.3万/年程度です。年払いの計算なので一括で払われれば料金はもっと下がります。鉄筋コンクリート住宅は固定資産税を長く払う必要がありますが、火災保険は逆に半分程度になります。しかしながら、鉄筋コンクリート住宅はそうした金銭的な話ではなく「安心」を買う事が出来ます。そして、その「安心」は思ったより低価格で買えるという事です。「生命を守る箱」として壁式鉄筋コンクリート造は最適の工法です。

 

④町内会費

町内会費も検討しておく必要があります。僕が住んでいる所だと町内会費の他に万雑費(まんぞうひ)と呼ばれるものがあります。万雑費?越してきた時に初めて言われて困惑しました。聞いた事ない費用です。ネットで検索かけても富山県の事例が数件でるだけで、全然ヒットしません。町内会費とは誰でも知っていると思いますが町の運営に必要なお金です。集会等も開かれ、毎年決算額を審議しています。主に公民館費ですが、町内で行われるイベント等の費用もあります。まあこれは解るとして万雑費とは何かというと、用水等、田んぼを運営するにあたって必要なものを管理・修復する費用です。基本的には敷地や田んぼの面積によって費用負担があります。僕の家は当然、田んぼはしていませんが、敷地の水が田んぼの用水に流れていると言えば流れていますし、そもそも都市計画法の許可申請で必要だった書類とは、用水に敷地の水が流れるのを許可するというものでした。まあ、仕方がないかとも思うのですが、年間に1万円負担しています。その他に町内とは別に班の負担費というものがあります。町内の行事を行う時に班で負担しなければならない費用があり、それをあらかじめ班で集められています。まあ、ようは班費+町内会費が実質の町内会費だという事なのですが・・・年間で全て合わせると約4万程度支払っています。新しい土地を検討される時は、必要な金額を町内会長に聞いてみても良いかもしれません。まあ、町内会長が全て把握しているかは疑問ですが・・・「すんません、こんな費用が必要だったので・・・悪いけど払ってよ」といきなり言ってきそうです。それが村というものです(笑)。僕も越してきてしばらくして「町内に新しく越して来た人には一律3万円支払ってもらう事になっている」といきなり言われました。え?全然聞いてないけど・・・と思いましたが、なんでも公民館を建てる時に皆でお金を負担し合っていて、その金額が一世帯60万程度かかっているらしく、町内会費はあくまでも維持費なので、いくらかもらっているという事でした。以前は10万円だったのが3万円に減額されたとの事でした。・・・まあ、そう言われたら払わないという訳にはいかないですが、事前に解りやすくならないものですかね~~~・・・まあ、ならないでしょうけどね!

 

★教訓46 住んでみると色んな費用が掛かる★

 


十一、どんな人が鉄筋コンクリート住宅で建てているのか!!

 

僕が建てた話ではないのですが、どのような人が鉄筋コンクリート住宅を建てられているのか、これから鉄筋コンクリート住宅で建てるか検討しておられる方には参考になると思うので、話してみたいと思います。当事務所では少しだけTVCMや住宅雑誌に広告を掲載している程度で、内覧会をしてお客様を囲い込んだりしている訳でも、ちゃんとしたモデルハウス(しいて言えば、僕の家がモデルハルスです)がある訳でもないので、基本的に当事務所に相談に来られる方は鉄筋コンクリート住宅にかなり興味がある方です。殆どの方はHP検索で当社のHPに辿り着かれた方です。予算が合わないと思いながらも、何とか鉄筋コンクリートで住宅を建てたいと思われている方も多く、木造住宅メーカーと競合しても当社の方が金額が安かったりするので「同じ位の金額なら鉄筋コンクリート住宅で絶対建てたいです。」と言われて契約に至る事になります。(*現在、基本的には競合物件は参加していません。金額が合えば、他の工法ではなく是非とも鉄筋コンクリートで建てたいと思われている方の夢に全力で協力させて頂いています)

 

まあ、金額の話は置いておいて、当社に相談に来られる方の半数の方は、恐ろしい程住宅を勉強されて来られています。県内中のショールームを回り、資料を読み漁り、技術系の色んな本も買われて勉強されています。色んな住宅メーカーの話を聞いて知識が蓄積されている事はもちろん、自分なりの考え方を持つまでに至り、仕様や施工方法に納得して住宅を購入されたいと思われています。逆に他社の情報が色々聞けて為になるのですが、納得して頂くのに詳しく説明する必要がありなかなか大変です。木造住宅のお客様では出合った事のないタイプの方で、性能重視派の人達が多いです。

 

3階建の住宅を建てられた方は、風邪が強い場所で家を建てるのに木造だと揺れるので心配だという事で壁式鉄筋コンクリート造を採用されました。地下室を作られたお客様は、長年の夢だった地下室をぜひとも作りたいとの事でした。(ちなみに、地下室を作るのに壁式鉄筋コンクリート造は最適工法です。)その他に、とにかく丈夫な建物に住みたい、デザイン的にコンクリートの外観にしたい、他の人とは違う家にしたい等、様々要望がありますが、基本的には皆様、壁式鉄筋コンクリートの性能に後押しされて購入に踏み切られています。何を隠そう僕もそうです。最初はデザイン重視の考え方でした。しかし、調べていくうちに壁式鉄筋コンクリート造の魅力にはまり、どうしてもこの工法で建ててみたくて仕方なくなりました。そして実際に建ててみると、最初はただカッコイイと思っていた内部のコンクリート打ちっ放し部分も、年月と共に親しみが出てきて愛着さえ湧いてきます。音が静かで地震や台風でも揺れないので、建物に守られている安心感があり、建物に感謝する事になります。

 

とまあ、色んな方が購入されていかれますが皆様、住宅に強い思い入れがある方ばかりです。そのそれぞれの思いに答えて、その人に合う「鉄筋コンクリート住宅」を提供するのが僕の仕事という訳です。どういう訳か、県外の方からも結構声がかかります。僕は基本的には富山県と石川県および車で高速も入れて1時間圏内で仕事をさせて頂いているので大抵お断りするのですが、東北、関東、関西、九州からも声がかかるので驚きます(別途、交通費を先行して頂ければ遠方も対応いたします)。聞いてみると、地元に鉄筋コンクリート造で設計してくれる設計事務所が無いので、設計してほしい・・との事。まあ、設計事務所の立場から言わせてもらえば、無い事はないと思います。鉄筋コンクリート造で住宅を作った事が無くても、集合住宅なら比較的やっている事務所はありますし、住宅もしている所はあると思います。でも、遠方から声が掛かるお客様は、鉄筋コンクリート造を専門的にやっている設計事務所を探しているみたいです。まあ、それはそうです。専門にやっている業者の方が詳しそうですもんね!そして自分で言うものなんですが、間違いなく詳しいです(笑)。色んな事を模索しながら建てていますし、常に少しでも良くなるように工夫し続けています。大抵の疑問に即答で答えられますし、要望に対しても積み重ねてきたものがあるので、大体は答える事が可能です。直ぐに答えられない場合は、全力で取り組み次に繋げます。同じ工法で建てていると、その全力で取り組んだ事が次に生きるのです。

 

そして、僕には実際に鉄筋コンクリート住宅に住んでいるという実績があります。住んでいるので、どういう建物なのかという事を体感的に知っていますし、お客様にも生の声で質問に答える事ができます。今、着工する物件も含めて今まで壁式鉄筋コンクリート住宅を10棟建てました。そこまで棟数的には多くありませんが、パッケージ売りではなく1棟1棟お客様のニーズやライフスタイルに合わせた鉄筋コンクリート造を建てています。年々、お問い合わせは増加傾向にあり、建築家人生において壁式鉄筋コンクリート住宅をあと150棟ほど建てられれば良いな、と思っています。その過程で、1つ1つノウハウを蓄積して、お客様にフィードバックできるように精進していく所存です。正直、自分の家を最初に壁式鉄筋コンクリート造で建てた時は手間がかかりました。ありとあらゆる事を調べに調べつくしました。現場でも木造住宅と比べると打合せの嵐、なんという手間のかかる工法なのだと思いました。しかし回数を重ねると、それ程大変だとは思わなくなりました。同じような事を繰り返す事で知識が蓄積して、調べなくても良くなっていくからです。調べる事に費やしていた時間を、詳細を煮詰める事や新しい知識の吸収する時間に使えます。何かに特化するって大切ですね!

 

当社には3つの企業理念があります。

 

■鉄筋コンクリート建築デザインによってクライアント及び社会の繁栄に寄与する

■安心感ある暮らしの創造

■環境に配慮したデザインの追及

 

この3つです。建物とはどうあるべきか、大切な家族を守る為に家はどうあるべきか・・・常に当社は模索しています。その結果出たキーワードは「安心感」です。そもそも建物とは、外部環境(災害・気候)に対し身を守る事が基本要素です。その基本要素を最大限に強化し「安心感ある建物」とする事によって「充実した日常」が送れるのだと当社は考えます。壁式鉄筋コンクリート造は、暮らしに安心を届けるのに最適な工法だと考えています。そして、クライアントに安心を届ける事は社会の繁栄に寄与する事に繋がります。

しかし、外部環境(災害・気候)から身を守るといっても、かたくなに閉ざしてしまうのではありません。外部環境(気候)を適切に取り込まなければ私達は豊な生活を送れません。風土や土地の声を聞き、その土地の環境に配慮すると共に、省エネルギーで効率の良い地球環境にも目を向けた建築を実現します。鉄筋コンクリートは再利用資材です。コンクリート、鉄筋の実に99%以上が再利用されています。実は鉄筋コンクリートは、とてもエコな建材なのです。

 

■あとがき

鉄筋コンクリート住宅に関する本というのは2016年1月現在、新刊で発売している本というのは驚く事にamazonで検索をかけてもプロ向けの実用書が数冊あるだけで、素人向けに発売されている本は1冊もありません!中古品で「みんなが欲しかった早くて安くて強い家」というタイトルで早川義行さんが書かれた本があるのみです!(なかなか面白い本なので読んでみて下さい)早川氏は鉄筋コンクリートのRC-Z工法を開発された方で、コンクリート住宅業界では超有名人です。そういえば、RC-Z工法についてまったく触れなかったので、軽く触れると、ようは一般的なべニア型枠ではなく樹脂型枠パネルを使って製造しているという工法です。完全なる規格品のパネルなので合理性はあるものの融通が利かないし、変わった建物の形にならないし、型枠のサイズが幅が狭いので打ちっ放しの時に若干見栄えが悪いし、セパコンの後がキャンプ処理だしで、ようは、デザイン的な面でもう一つなので個人的にはワクワクしない工法なのだが、短工期で鉄筋コンクリート造を作れる特徴があり、開発から20年程度で全国的に広まった画期的な工法だ。その開発者の本が1冊、中古品として出回っているだけで他に1冊もない・・・なんで?壁式鉄筋コンクリート住宅はこんなに素晴らしい工法なのに、それについて記載した本が一冊もないなんてどういう事?これは・・・僕が書くしかないなという事で、今回この本を勢いで書いてみました。こんな本を書いていて、本業の仕事は暇なの?と思われる方もおられたかもしれませんが、書いている今この瞬間、仕事が積もりに積もっていて正直、本なんて書いている暇はないです(笑)。でも、テンションが上がって書き始めたし途中で止めるなんてありえない、なんとか最後まで書こう・・・今週で完成させれば、明後日からフルパワーで本業に戻れるはずだと、こうして睡眠時間を極限まで削ってペンを走らせています(笑)。

 

実は、この本自体は僕は2冊目の出版で、1冊目は「ツテも人脈もなく始める設計事務所の始め方」という本を、将来設計事務所を開設したい人向けに僕の経験が少しでも役に立てばいいな~~と思って出版しました。今回は鉄筋コンクリート住宅を建てたい人に、僕の経験を伝える事で、少しはお役に立てるのではないかと思いこうして本にしてみました。今回の内容なら少しは会社の営業ツールになるのではないかと期待していますが、それは40%くらいで(結構多い(笑))、基本的には読んだ人に情報を提供する意味が40%、あとの20%はちょっとした気分転換と自己満足の為に書いています(笑)。

 

「鉄筋コンクリートで住宅を建てたい人」というターゲットの小ささから殆ど売れないと思いますので、前回と同様にデザインエッグ株式会社さんよりMyISBNという方式で、amazonに1冊注文があったら1冊自動的に印刷がかかるというノーリスクの方式を採用して出版しました。この方式は、初期費用の4,980円を支払えば、あとは1冊売れる毎に僕に10%印税が入る仕組みです。前回の本は初年度、電子書籍で120部程度、紙の書籍で120部程度と合計240部売れて、印税が4万円程入りました。そして今でも3日に1冊くらい売れています。お~~~本を書くって面白いな~~と思い、気が向いたら又書いてみようと思っていました。

 

僕は旅行が好きで、毎年年末には海外旅行に行っていたのですが、今年は諸事情で行かない事にしたので、本でも書いてみようと思い、この本を書くに至りました。読んで頂いて有難うございます。本に書けない企業秘密の話も沢山ありますので、当社にご依頼いただいた場合は詳しくご説明いたします。最後に、この本を購入頂いた皆様に、感謝の意味も込めてサービスで鉄筋コンクリート住宅に対して質問があれば1回のみ無料でメール対応させて頂きます。この工法は解らない事が多すぎると思いますので・・・僕にも鉄筋コンクリート造に対して、一般の方がどのような疑問を持たれているのか知る事はメリットがありますので「to@rc-ds.jp」までお気軽にどうぞ!それでは、素晴らしいコンクリート住宅をあなた様が建てられますよう応援しております。縁があって、当事務所で建てる機会がありましたら、全力で対応いたしますのでよろしくお願いします。コンクリート住宅を売られている企業様のモデルハウスの設計や、商品開発等もご協力いたしますのでご相談ください。鉄筋コンクリート住宅に関する講演会も行って行きたいので、ご興味のある方はご連絡下さい。to@rc-ds.jp

 

住宅とは選択の繰り返しです。現実的に予算というものがあり、その予算の中で夢を実現させる為に必要なものを見極め、選択する必要があります。その選択する時に大切なのが、家づくりに対する基本的な思いになります。敢えて例えを出しませんが是非ともその核となる部分を、自分自身に問うてみて下さい。答がぼやっとでも見えれば、あなたが行う選択は間違わないと思います。最後までお付き合い頂き有難うございました。

 

後は余談ですので、読まなくても大丈夫ですが、今回本のサイズを前回より大きくしました。前回は148mm×210mmのサイズですが、今回は182×234mmというサイズにしました。本の寸法というのも、こうしてどのサイズにしようかと考えてみるとその奥深さに感銘を受けます。小説とか小さな本は、その小ささが本に没頭できるサイズになっていますし、片手に持ったり手に馴染むサイズになっています。縦書きと横書きも読み味が違います。見開きのページをイメージしてみてください。縦書きは右から左に自然に文章が流れます。しかし、横書きは隣のページの文章の方にどうしても若干ですが目が行ってしまうのです。これから読むであろう情報が、見たくもないのに視界の中に入ってしまう欠点があります。では、この本のサイズだとどうなるか・・・この本のサイズだと縦書きだと1列の文字数が多すぎて、読んでいてリズムが悪くなります。横書きだと、縦書きと比べると問題無い程度の1列の文字数となる訳です。本来、エッセイでこのような本のサイズは選ばれないと思います。やはり、ある程度リズムよくページをめくりながら読んでいった方が、シーンがどんどん切り替わって適切です。そんな事を言っているのに、僕がこの本ような大き目の本のサイズにして横書きを選んでいるのは、実は本に設定できる価格が影響しているのです。MyISBNというシステムは、本の最低設定金額というものを設けています。100ページの本だと1300円以下では出版できませんし、200ページだと2000円以下だと出版できません。前回の本が156ページで1760円が最低設定金額でした。前回の時も少しは検討したのですが、この価格を下げるという可能性の模索が足りませんでした。本としてどのような金額で売るのが適切かと考えた時に、やはり1300円くらいで出版しなければ売れないような気がします。情報量が同じ本で、本のサイズが大きくページ数が100ページの本が1300円で、文章に対して読みやすく適切なサイズの本が200ページで2000円になっている本、どちらを選びますか?という事なのです。それはやはり100ページの1300円の本だろうという事で今回はこのサイズにトライしてみました。(実際には120ページ、1500円になってしまったのですが・・・)今回の本は、前回の156ページの本と比べても、文字のサイズを12ポイントから11ポイントに変更した事もあって2倍の文字数になっていて、この本で約10万文字です。丁度400字用の原稿用紙が250枚・・・考えただけでも恐ろしくなる数字です。良く書けたな僕・・・

 

ちなみに、どれだけ掛かって書いているかというと、去年の12.24日から今日で22日目ですが、実際には丸4日という所でしょうか?この本は僕の体験談をただ羅列して書いているだけです。思い出しながら書くだけで、何も調べないでいいですし、ちょっと忘れた事をネット検索して書いた本です。構成を見直して、表紙を考えるのに後6日ほど必要だから合計で10日間くらいですね丁度!題材がありましたら誰でも簡単に書けますし出版できますので、あなたも挑戦してみてはどうでしょう。

日本全国にこの素晴らしい、壁式鉄筋コンクリート造という工法が広まる事をお祈りしてこの本を終わりたいと思います。

 

「壁式鉄筋コンクリート住宅をもっと身近に」

株式会社RC design studio 代表取締役 澤田友典

 

 

★教訓1  土地は現金で購入した方がベター

★教訓2  とりあえず銀行に行ってみる。リボ払いにも注意!

★教訓3  土地の値引き交渉は必須事項

★教訓4  木造住宅の一番の問題点は、長期的に性能が保てない事

★教訓5  在来木造 築20~24年の蟻害発生率は38.4%

★教訓6  混構造は木とコンクリートの組合せが美しい

★教訓7  2×4工法はプランに制限が多い

★教訓8  鉄骨造は断熱をどう考えるかが鍵

★教訓9  鉄筋コンクリ―ト造はアレルギー体質にやさしい

★教訓10  プレキャストコンクリート造はパネルジョイントからの漏水が問題

★教訓11  自分の家づくりのテーマを決めよう!!

★教訓12  本当に必要な工事か落ち着いて考えてみる

★教訓13  後悔しないように考え抜く

★教訓14  初年度は結露しやすいので換気に気を配る

★教訓15  断熱性能とデザインと両方兼ね備えた鉄筋コンクリート住宅を目指そう

★教訓16  コンクリート住宅の暖房は蓄熱性能を上手く利用できるかが鍵

★教訓17  造作家具と造作建具を利用すれば、統一性のある内装デザインを作れる

★教訓18  デザイン的にどの程度コンクリートを見せるかが鍵

★教訓19  ガラス掃除はこまめにしましょう

★教訓20  一灯くらい白熱灯の照明があってもいいかも

★教訓21  鉄とコンクリートはお互いを助け合っている

★教訓22 「壁式」鉄筋コンクリートの地震に対する実績は圧倒的

★教訓23  建物が揺れないと「安心感」に繋がる

★教訓24  建物が揺れないと断熱性能・気密性能が低下しない

★教訓25  建物が揺れないと漏水が起きにくい

★教訓26  外断熱も内断熱も断熱性能は同じ

★教訓27  外断熱は蓄熱体に熱を溜めこむ事が重要

★教訓28  24時間暖房でなければ内断熱を選択しよう

★教訓29  打設後のコンクリートを確認する事は最重要ポイント

★教訓30  断熱型枠は合理的な商品

★教訓31  入札は納得して住宅を購入できるシステム

★教訓32  施工業者との契約時点は、まだ30km地点

★教訓33  その土地に合った地盤改良工事を行う

★教訓34  鉄筋コンクリート造の基礎は凄い

★教訓35  壁式鉄筋コンクリート造は見るからに丈夫!だから安心出来る

★教訓36  壁式鉄筋コンクリート造は防水性能が高い工法である

★教訓37  監理業務は重要である

★教訓38  壁式鉄筋コンクリート造は改修しやすい工法

★教訓39  壁式鉄筋コンクリート造は増築は計画的に行う必要がある

★教訓40  一階の床面は必ず断熱しよう

★教訓41  仕上材料が違うと雰囲気は全然変わる

★教訓42  打ちっ放しコンクリート部も塗装は不可欠

★教訓43  家づくりはいろんな事が起こる可能性がある

★教訓44  ライフスタイルの変化を良くイメージしてみよう

★教訓45  自分の家を設計した事のある人に設計をお願いする

★教訓46  住んでみると色んな費用がかかる

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