「鉄骨住宅は頑丈で耐久性が高い」というイメージから検討される方も多いですが、実はデメリットや注意点を理解していないと、建築後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔する可能性があります。
本記事では、鉄骨住宅の「コスト面」「防錆対策」「断熱・遮音性能」など、多くの方が見落としがちなデメリット10選をわかりやすく解説します。家づくりを検討する際のリスク回避に、ぜひお役立てください。
目次
- 初期コストが高くなりやすい
- 防錆(さび)対策が必須
- 断熱不足による熱橋問題
- 音が響きやすい構造
- 柱・梁のサイズによる制約
- リフォーム・増改築が難しい
- 結露リスクと健康被害の可能性
- 耐火被覆が必要
- 施工業者の技術力次第で品質差が大きい
- 売却時の評価・流通性の問題
- まとめ:鉄骨住宅はメリットも多いが慎重な検討が必要
1. 初期コストが高くなりやすい
鉄骨住宅は木造と比較すると、材料費や加工費が高くなる傾向があります。鉄骨の品質を確保する必要があり、工場での溶接・組み立てコストや現場への運搬費なども上乗せされるためです。又、鉄の価格が世界的に近年上昇傾向が強く、材料価格の高騰が鉄骨住宅の価格の高騰の一番の理由です。
- ポイント
- 同じ延床面積でも、建物の揺れを抑えるように構造を考えると価格が高騰する。
- 建築費だけでなく、メンテナンス費用も視野に入れる必要がある
2. 防錆(さび)対策が必須
鉄は酸素や水分に触れることで腐食・錆が発生しやすい性質があります。そのため、鉄骨住宅では防錆加工をしっかり行わないと、耐久性が損なわれるリスクが高まります。一般的に、外部露出部(外部階段、カーポート等)が一番錆びやすく、次に外壁側の壁内の構造体部分が結露によって錆びます。他にも、構造部分が土間やコンクリート基礎に接している部分は、地面からの湿気の影響で錆びる事が多いです。
- ポイント
- 海沿いや湿度の高い地域ではとくに注意
- 防錆塗装やメンテナンス費用を定期的に見込む必要がある
3. 断熱不足による熱橋問題
鉄骨は熱伝導率が高い素材です。断熱処理をきちんと施さないと、夏は暑く・冬は寒い住宅になりがち。さらに、構造材が熱を通しやすいことで**熱橋(ねっきょう)**が生じ、壁内結露などの問題も引き起こします。鉄骨造の熱橋は、木造やRC造の熱橋に比べて、極めて熱を通しやすく、熱橋が発生しないように施工方法を検討する必要があります。
- ポイント
- 断熱材の厚みや施工精度が結果を大きく左右する
- 内部結露が発生するとカビやダニの原因になり、健康被害に繋がる
4. 音が響きやすい構造
鉄骨住宅は剛性が高い一方、振動や衝撃音が構造体を通じて伝わりやすいデメリットがあります。特に上下階や隣室との生活音トラブルには注意が必要です。
- ポイント
- 二重床・遮音シートなど防音対策の追加コストが必要、床をコンクリート仕様にするのがベスト。
- 足音や生活音が響きやすい環境はストレスの原因になりやすい
5. 柱・梁のサイズによる制約
鉄骨造では、構造上太い柱や梁が求められます。そのため、間取りの自由度が木造に比べてやや低くなることも。設計段階で意図的に見せ梁をデザインに取り入れるなど工夫が必要ですが、スペースの使い方が制限される場面は否めません。ラーメン造の場合は、壁の隅に柱型や梁型が出てしまいますが、この柱型によってプラン制限が発生してしまいます。
- ポイント
- 天井や壁のデザインに工夫が必要
- 見た目やレイアウトで妥協点を探す必要がある
6. リフォーム・増改築が難しい
鉄骨住宅は、構造上の制約から大掛かりなリフォームや増改築が発生すると、工期と費用が大きくかさむ傾向にあります。場合によっては柱や梁を移設できないため、プラン自体が実現不可能となるケースも。
- ポイント
- ライフスタイルの変化を想定して設計段階で将来のプランを考慮
7. 結露リスクと健康被害の可能性
鉄骨住宅は断熱・気密施工が不十分だと、柱や梁など構造体周辺に結露が集中しやすい特徴があります。放置するとカビ・ダニ発生につながり、アレルギーなど健康面への影響が懸念されます。
- ポイント
- 質の高い断熱材と換気計画が欠かせない
- 住まいの健康を左右する要素なので慎重にチェック
8. 耐火被覆が必要
鉄骨は火災時の高温下で急激に強度が低下します。そのため、法規上も含めて耐火被覆による対策が必須です。この施工には材料費や手間がかかり、結果的にコストアップの要因になります。
- ポイント
- 耐火被覆の品質で火災時の安全性が大きく変わる
- 点検・補修の際も費用面に注意が必要
9. 施工業者の技術力次第で品質差が大きい
鉄骨住宅は高い専門技術を要するため、施工業者や設計者のスキル・経験によって品質のばらつきが生じやすいのが現状です。鉄骨造の建物は広く普及していますが、鉄骨住宅を鉄骨造の事務所と同じ作り方で作ると、建物の揺れや、室内の快適性の点で後悔する事になります。鉄骨住宅づくりに慣れている、建設会社に依頼すべきです。
- ポイント
- 実績豊富な会社を選び、過去の施工例や保証制度もチェック
- 信頼できる建築士や工務店に依頼することが重要
10. 売却時の評価・流通性の問題
鉄骨住宅は市場の流通量が木造やRC造より少ない傾向があり、将来的に売却を考える場合、買い手が限られるリスクがあります。また、地域によっては木造やRC造のニーズが高いこともあり、希望価格で売却できない可能性も。初期コストはRC住宅と同価格帯なのに、売却時点ではRC住宅にくらべ資産価値が下がっている問題があります。
- ポイント
- 長く住む予定がない方は、将来の売却リスクを含めて検討
- 立地や間取りと合わせて、需要のある構造かリサーチが大切
11. まとめ:鉄骨住宅はメリットも多いが慎重な検討が必要
鉄骨住宅は耐震性や耐久性など、魅力的なメリットがある反面、ここで挙げたようなデメリットやリスクが存在します。とくに初期コストやメンテナンス、リフォームのしやすさなどは、長期的な視点でしっかり検討しなければなりません。
- 対策例
- 防錆処理や耐火被覆を確実に行う
- 断熱材・防音対策の強化
- 信頼できる施工会社を選び、設計段階から将来のライフスタイルを見据える
「鉄骨住宅=悪い」というわけではなく、こういった弱点や注意点を理解して対策を講じることで、安心して長く住める家づくりが可能になります。家づくりを検討している方は、木造やRC造など他の構造とも比較しながら、ぜひご自身のライフプランに合った最適な選択をしてみてください。