中庭が作り出す開放感のあるRC住宅(鉄筋コンクリート住宅)の豪邸


建物が密集する地域に位置する敷地であったため、周囲に普通の庭を配置するとプライバシーが確保しにくい状況でした。そこで、敷地の隅に中庭を設け、その周囲を擁壁で囲む設計としました。この工夫により、プライバシー性の高い中庭空間を実現し、さらにその中庭を中心に各部屋を配置することで、開放的で快適な住空間を生み出しました。


延床面積580㎡ 2階建 壁式RC造 TEMPIO PIETRA

 


街に対して閉じたファサード

防犯性を重視しつつ、周囲に対して開放しすぎないことを意識したファサードデザインを採用しました。外観のデザインでお客様が特にこだわられたポイントとして、シャッター横の門扉をステンレスの造作建具とした点が挙げられます。この門扉は防犯性を確保する役割を持つため、断熱性や気密性は求められていませんでした。既製品ではご希望に合うデザインが見つからなかったため、デザイン性を優先し、特注でステンレス製にすることを決定しました。ステンレスやスチール製のドアは施設建築では一般的ですが、ハウスメーカーや工務店では対応が難しいケースが多いです。この特注の門扉を採用したことで、外観のデザイン品質が一段と向上しました。

ステンレス製ドアの利点として、面材や取っ手を自由に選択できる点があります。この物件では、ドアの面材にステンレスのバッフル仕上げを採用し、取っ手にはユニオン製の長い取っ手を選びました。これにより、スッキリとした洗練された印象のドアが完成しました。特に、取っ手ひとつでドアの印象は大きく変わります。

庇は車寄せを兼ねた2mの大きな跳ね出し構造としました。この庇の設計により、道路幅員を広げる役割も果たし、大型車がスムーズに車庫に入れる動線を確保しています。大型車を車庫に収納する際には、シャッターや車庫内部の寸法はもちろんのこと、車庫前の回転半径や道路との高さ関係も慎重に設計する必要があります。特に高級車を選ぶ場合、例えば車高の低いポルシェやフェラーリ、または大型の外車バンに対応するには、多くの注意点が存在します。こうした設計の課題は、構造的制限により対応が難しいケースもあるため、ぜひ当社にご相談ください。

外部照明は、窓や扉、シャッターと調和するように配置し、外観のアクセントとなるデザインを強調しました。これにより、落ち着きがありながら象徴的な照明計画を実現しています。

ユニオンドアハンドル大手ドアハンドルメーカー



 

 


 

インナーガレージ計画

ガレージ部分にはオーバースライダーを採用しました。従来のスチールシャッターに比べてコストは高くなりますが、パネルのサイズが大きく、シャッター部分がフラットになるため、建物全体の外観がよりスッキリとした印象を与えます。また、オーバースライダーはシャッターが閉まる際の最後の接地音が非常に静かであるため、巻き上げシャッターよりも住宅地に適した仕様と言えます。

さらに、インナーガレージからファミリー玄関へと繋がるアプローチを設け、使いやすさを重視した動線計画を実現しました。この設計により、ガレージから住居へのアクセスが快適でスムーズになります。


 


 

玄関計画

メイン玄関側は、ステンレスの門扉を開けると、ポーチ空間を挟んでメイン玄関ドアが配置されています。個人的な意見ですが、ある程度規模の大きなお宅では両開きドアの方が建物にふさわしい印象を与えると考えます。たとえば、延床面積40坪程度の家に両開きドアは過剰に感じられる一方で、100坪を超えるような大規模な住宅に片開きドアでは物足りなさを感じることが多いです。伝統的な和風住宅では、延床面積が50坪を超えると4枚引き違い戸が設置されることも一般的でした。扉のサイズは建物の格式を象徴する重要な要素といえます。

また、採光と換気を確保するため、コンクリートの壁に人が侵入できない程度のスリット開口をリズミカルに配置しました。この設計により、機能性とデザイン性を兼ね備えた外観を実現しています。

玄関突き当りの壁には、デザインに変化をつけたいというご要望に応じて、凹凸のあるタイルを採用しました。デザインを強調する際には、一般部と差別化を図るため、色、形状、質感にメリハリを持たせるのが効果的です。この物件では、一般的なクロスと対比させる形でタイルを使用し、洗練された空間演出を実現しました。


 

 


 

ホール・中庭・階段計画

玄関を抜けると、小さなホールがあります。このホールはLDK、中庭、階段、そして玄関を結ぶ動線計画の中心に位置しており、ゆとりを感じられるよう少し広めに設定しています。ホールに隣接する中庭は、この住宅の魅力を引き立てる核となる空間です。この中庭からは、ホール、LDK、二階廊下、さらには二階の多目的ルームに至るまで、プライバシーを守りながらも自然光を効果的に取り入れる役割を果たしています。

敷地は広いものの、周囲が密集した建物で囲まれており、周辺からの採光を確保するのが難しい状況でした。また、敷地形状が四角形ではなく旗状であったため、その特性と方角を考慮し、最適な位置に中庭を配置しました。この工夫により、内部空間の明るさと開放感が格段に向上しています。

ホールの一角には造作家具による手洗いスペースを設けました。ホールに設置するため、既製品では雰囲気が合わず、ホールのデザインイメージに合わせてアイカ工業のパネルを採用しました。また、お客様がインターネットで選ばれた鏡を設置し、空間に個性を持たせています。

この建物の核となる中庭は、約6mの高さを持つ2層分の建物と連続した塀で囲み、周囲からの視線を徹底的に遮断するようデザインしました。この巨大な塀は建物を守る役割を果たすとともに、外部からの侵入を防ぎつつ、開放的で安心感のある中庭空間を実現しています。

アイカ工業:パネルメーカーの最大手、メラミン化粧合板、ポリ合板等いろんなパネルを扱っています。






 

 


 

LDK計画

この建物の最大のポイントは、60畳という広大なLDK空間をどのようにデザインするかでした。大きな空間は一般的に奥まで光が届きにくく、20畳程度のリビングと同じ設計では、薄暗く閉塞感のある空間になってしまいます。そこで、中庭側に吹き抜けを設け、中庭からリビングの奥まで光が届くよう工夫しました。また、一部の天井をコンクリート仕上げとし、高さを一般部の2.45mから2.75mに上げることで、開放感を演出しながら空間に変化をつけています。吹き抜け部分の大開口には電動縦型ブラインドを採用し、日射をコントロールしながら外部の開放感を楽しめるようデザインしました。これらの工夫により、明るく開放的なLDKを実現しました。

空調計画

こうした開放的な空間を快適に保つためには、空調計画が非常に重要です。小さな部屋は簡単に温まりますが、大空間では空調の難易度が高くなります。この課題に対して、今回の住宅では全館空調を採用しました。エアコンは遠くまで熱を運ぶのが苦手ですが、空調ダクトを部屋の奥まで伸ばし、複数箇所から冷暖房を行うことで問題を解決しています。

吹き抜けがある場合、暖かい空気が上昇し、冷たい空気が下降することで気流が発生し、不快感を生じることがあります。この問題は、1階と2階の温度差をなくすことで解消できます。全館空調は建物全体を均一な温度に保つため、冷気による不快な気流を抑えるのに非常に効果的です。

ハウスメーカーでは、この規模の住宅で全館空調を導入するのは難しいかもしれません。その理由は、空調ダクトの径を大きくする必要があり、それに伴って梁のサイズや天井裏のスペースを増やすなど、建物の規格を変更する必要があるためです。こうした柔軟な対応が難しいのがハウスメーカーの現状です。しかし、当社のTEMPIOでは壁式RC造を採用し、こうしたケースバイケースの対応が可能です。そのため、大空間でありながら快適さと安心感を兼ね備えた住まいをお求めの方にはぜひご相談いただきたいと思います。

実際の事例

引き渡し後、一年度目の点検時にお客様から「とても快適だ」とのお言葉をいただきました。夏場に伺った際も、建物全体が均一な温度で保たれており、美術館のように快適で均質な空調環境が実現されていました。

 






 


 

キッチン計画と色調計画

キッチンはお施主様が多くのキッチンメーカーを検討された結果、最終的に「キッチンハウス」を選ばれました。キッチンハウスは言わずと知れた憧れのキッチンメーカーで、職人による手作りのキッチンは、いわゆる造作家具のカテゴリーに属します。ただし、一般的な家具店が手がけるキッチンとは異なり、キッチンメーカーならではの細部まで綿密に検討された設計と、長い年月をかけて磨き上げられたデザインの魅力があります。

キッチンはLDKの主役ともいえる存在です。この主役となるキッチンを中心に、他の家具、扉、窓、壁、床とどのように調和をとるかが住宅全体のコーディネートの基本となります。このお宅では、白、黒、グレーを基調としたモノトーンの色調計画を採用しました。ただし単調にならないよう、グレーにコンクリート素材を使用し、その質感をアクセントとしています。また、リビングのTVボード裏の壁にグレーのアクセントタイルを配置し、空間に変化を持たせました。

キッチンも存在感のあるデザインですが、この統一感のある色調計画の中に溶け込むことで、調和のとれた空間を実現しています。さらに、間接照明を効果的に配置し、ラグジュアリーなホテルライクの雰囲気を演出しました。リビングには大きなソファを置くことで、デザインの完成度がさらに高まりました。

家具の選定についても、落ち着いたトーンでまとめるのはもちろん、あえて大胆な色やデザインを取り入れてアクセントを加えることも可能な柔軟性のある構成となっています。

キッチンハウス:造作家具ブランド






 


 

来浴室と在来サウナ

在来浴室とは、ユニットバスと異なり、防水工事を施して浴室を一から作り上げる方式です。この工法は施工難易度が高く、設計と施工の双方で高い技術力が求められますが、当社では対応可能です。在来浴室の設計において重要なポイントのひとつが浴槽の選定です。今回は、豊富な品揃えで知られるJAXSON TOKYOから浴槽をセレクトしました。お客様と共にショールームを訪れ、さまざまな浴槽を実際に体感していただきました。その場では最終決定に至りませんでしたが、後日お客様がじっくり検討され、満足のいく浴槽をお選びになりました。お気に入りの浴槽で湯船に浸かるというのは、水資源が豊かな日本ならではの贅沢な文化です。日々のリラックスタイムとしてぜひ楽しんでいただきたいと思います。

今回の設計では、一般浴槽の隣に水風呂用の浴槽を追加設置しました。当初はサウナを設置する予定はありませんでしたが、「サウナを設置しなくて大丈夫でしょうか?」というご提案をきっかけに話が進み、こだわりの在来サウナ室を作ることになりました。在来サウナは専門的な知識が必要な工事ですが、これまでに銭湯のサウナ施工経験もあり、スムーズに対応することができました。

サウナ施工時の注意点

サウナでは、特にロウリュウを行う際、大量の湿気が発生します。木造住宅では、この湿気が構造部材にまで達することで建物の耐久性が低下するリスクがあります。また、サウナには火災リスクも伴うため、安全性に十分配慮した施工が必要です。これらの点から、サウナを安心して楽しむためには、鉄筋コンクリート造の住宅をおすすめします。

火災リスクを軽減するためには、火災認定品のセットサウナを設置するか、消防法に適合したサウナを設計・施工する必要があります。今回は在来サウナ(現場施工によるサウナ)のため、消防法に適合した設計を行い、事前に申請して許可を得て施工しました。なお、在来サウナの場合、地域によって消防署の対応が異なる場合があるため、事前に地元消防署に確認を行うことが重要です。

JAXSON TOKYO:大手在来浴槽ブランド

 

 


 

サニタリールーム

サニタリールームの家具はすべて造作家具で製作し、建物全体の統一感を保つために「白+グレー+黒」の色調でまとめました。洗面台にはパナソニックの既製品を採用していますが、色調が他の造作家具と調和しており、まるで一体化しているかのような仕上がりになっています。

ランドリールームにはミーレ製の洗濯機と乾燥機を床に並べて配置し、それらの寸法に合わせて造作家具を製作しました。これにより、機能性とデザイン性を兼ね備えた空間を実現しています。

トイレ空間にはアクセントとしてモザイクタイルを施し、シンプルな中にも個性と遊び心を感じさせるデザインに仕上げています。

 

 


 

二階廊下、階段

全館空調を採用しているため、廊下部分の天井には空調ダクトが張り巡らされています。吹き出し口をバランスよく配置することで、建物全体の温度が均一に保たれ、年中春や秋のような快適な室内環境を実現しました。ダイニングの吹き抜け部分に面する手すりには自立型ガラス手すりを採用し、モダンでスッキリとした印象を与えるとともに、吹き抜けと廊下の一体感を演出しました。二階部分の床材には塩ビタイルや塩ビシートを採用し、高い耐久性と美観を両立させています。

室内のドアは構造体の影響がない部分において、廊下の天井まで届くハイドアを採用しました。これにより、スタイリッシュで洗練された空間を演出しています。階段には途中に飾り棚を設置し、お気に入りのアイテムをディスプレイできるスペースを確保しました。

階段そのものはコンクリート製とし、豪邸にふさわしい重厚感を備えたデザインとしました。鉄骨階段や木造階段は使用時に振動が伝わり、やや頼りなさを感じることがありますが、コンクリート階段は安定感があり、安心して上り下りができます。

 

 


 

洋室

全館空調のダクトは壁面上部に設置し、天井をできる限り高く保つように計画しました。構造体であるコンクリートの壁は露出仕上げとし、デザインの一部として活用することで、コンクリート建築ならではの洗練された内装を実現しました。

また、すべり出し窓を多用し、窓の高さを高く設計することで、空間全体に高級感を持たせています。これにより、コンクリート建築の特性を活かしたモダンで上質な空間を演出しました。

 


 

トレーニングルーム

トレーニングルームは、この住宅の中で最も鉄筋コンクリート建築である必要性が高い部屋と言えます。その理由は、多くの特殊な性能が求められるためです。

まず、防音性です。周囲に住宅がなければ問題は少ないですが、トレーニングルーム内で発生する音が外部や他の部屋に漏れないようにする必要があります。コンクリートの壁、床、天井は優れた遮音性能を持っていますが、窓、ドア、換気口が音漏れのポイントになります。これらを解決するために、二重サッシ、二重防音ドア、防音フードを施工し、弱点を補強することで、高い防音性能を備えた部屋を実現しました。

次に、床の耐久性も重要な要素です。ダンベルを落としたり、ジャンプしたりする際、床には高い耐久性と強度が求められます。木造ではこれを実現するのは難しいですが、鉄筋コンクリート造であれば、コンクリートの床を仕上げるだけでこれらの厳しい基準を満たすことが可能です。

さらに、トレーニングルームには高天井や広い空間が必要です。大空間を作るだけであれば鉄骨造が適していますが、防音性と強度を総合的に考慮すると、住宅内にトレーニングルームを設置する場合は鉄筋コンクリート造が最適です。

シミュレーションゴルフ

トレーニングルームの一角にはシミュレーションゴルフを設置しました。ゴルフクラブを振り上げるためには最低でも2.7mの天井高さが必要ですが、今回は一般部で3.18mの天井高さを確保しました。また、自動でゴルフボールが出てくる仕様を採用し、ゴルフ練習場のような体験を楽しめるように設計しました。そのため、設備部分を収めるために床を約30cm上げて施工しています。

 


今回の建物は、部分的に専門の外部業者との調整が必要な工事を含んでいます。具体的にはサウナ業者やシミュレーションゴルフ業者との連携が求められましたが、これらの業者との打ち合わせや関連工事の精査は非常に大変です。ユニットバスや既製品の窓であれば、メーカーから取り付け方法の詳細図が発行されるため、それを参照するだけで済みます。しかし、外部業者が関わる工事では、こちらで図面を作成する必要があります。参考図程度の資料はあるものの、図面を一から作成するのは手間がかかる作業です。さらに、現場での細部の調整も必要となり、規格品と比較して約10倍の手間がかかる場合もあります。

また、造作家具や造作建具の設計・打ち合わせも時間と労力を要します。既製品の洗面台のように完成品が存在するわけではないため、図面を通じてお施主様と意思疎通を図りながら進める必要があります。しかし、この手間をかけてこそ、規格品にはない個性的で特別な家が生まれるのです。ハウスメーカーの家は、多くの人に向けた仕様で設計されています。それに満足できない場合、自分の個性を反映させた家づくりを進めるためには、打ち合わせに時間をかける必要があります。

こうして「世界でただ一つ、あなただけの家」が完成します。当社は、お客様と共にこの唯一無二の家づくりを実現するパートナーであり続けます。

 

一つの模型から今回の建物が生まれました。

 

延床面積580㎡(175.5坪)
施工面積633㎡(191.5坪)
2階建
壁式RC造
TEMPIO PIETRA

 

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