「二重床にすれば防音性が上がる」は本当か?
専門家が語る“知られざる真実”
「二重床=防音に強い」という説明、住宅業界ではよく見かけます。
しかし、それは半分正解で、半分ウソです。
■ 結論:二重床は足音に関してはむしろ防音性が下がります。
確かに、二重床は**軽量衝撃音(スプーンの落下音、椅子を引く音など)**の低減には効果があります。
しかし、**重量衝撃音(足音、飛び跳ね音など)**に対しては、ほとんどのケースで二重床にすると、音が大きくなってしまいます。
つまり、マンションや住宅で一番重要な足音に関しては、二重床は防音どころか「響く床」になってしまうのです。
■ なぜ「二重床=防音」だと思われているのか?
多くのマンションや住宅紹介で「二重床で防音対策済み」と書かれていますが、
これは主に床下空間によって軽量音が和らぐという一面だけを強調しているに過ぎません。
確かに、スプーンの落下音、椅子を引く音は小さくなるので、この点を最大源に協調して提示しているのです。
実際には、二重床にすると次のようなリスクがあります。
床下の空洞が共鳴して“太鼓現象”を起こす
支持脚が床材と直接接し、振動を伝えてしまう
防振材・遮音材の選定や防音を意識した施工をしないと二重床にしない場合と比べて、騒音がかなり大きくなります。
■実際の数値で確認してみましょう
淡路技研のカタログで解説します。
淡路技研カタログ→

細かい事はさておき、スプーンを落とした等の軽量衝撃音に関しては二重床にする事で概ね防音に効果が出ています。
ですが、実際のマンション暮らしで、スプーンを落とした事が問題になるでしょうか?
上のやつ、いつもスプーン落としやがってとはなりません。
上階の人の椅子を曳く時の音が気になる人もまずいないでしょう!
気になるのは足音ですよね。子供が飛び跳ねる音、ペットの足音、大人の足音。これらが問題になります。
参考程度ですが、あるネット上のアンケートでは以下のような騒音トラブルランキングになりました。

一位は、堂々の足音が響くです。
ではこの足音は軽量床衝撃音ではなく、重量床衝撃音に該当します。足音は人間もペットも30~100Hz程度になるケースが大半で、63Hzと125Hzを見ると、マイナスになっています。250Hz、500Hzもマイナスなので、足音を含む、重低音の振動は二重床にする事で大きくなってしまうのです。

つまり、コンクリート直貼り仕上げに比べて、二重床で空洞を作る事で、その空洞がバネになって、足音を大きくしてしまうのです。二重床にすると防音性が上がるどころか下がるのが実情なのです。
マンションに暮らされる人の大半が、足音や隣の人の音が聞こえないような防音性に優れたマンションに住みたいと思っている一方で、広告としては、軽量衝撃音を防音出来る事を指して、二重床は防音性に優れているというウソともとれる広告をしてしまっているのです。

しかも、等級の試験体は現実とは即さない、防音効果が出やすい仕様で実験されています。巾木の下に隙間があったり、際根太がパッキンで浮いていたりします。現実的には、際根太はしっかり固定しないと床なりの原因になりますし、木質巾木の下が浮いていたら、巾木の意味がありません。このような防音検査に有利な仕様ですら、二重床は重量衝撃音を大きくしてしまうのです。
では実際に、どの程度の仕様で、どのレベルになるのか見てみましょう。

定番の仕様だと、グリーンのグラフを見てもらえば分かりますが、マイナスになっていて、足音が二重床にしない時に比べて大きくなっているのが分かります。

データーみて納得したのですが、タイル仕上げの場合は、重量衝撃音に対して低減がありません。タイルが固いので、床が拘束されてバネにならないみたいです。

最後に8mmの遮音シートを入れると、二重床でも防音的にプラスに転じます。ここまですれば、マイナスになるといった印象はありません。まあ、8mmの遮音シートは床用としては相当厚めの遮音シートなので、ここまでしなければ、マイナスになるという事は、床組を作る事で、太鼓の効果を作っている事を意味します。

上記のように、二重床の場合は床下の空気がバネになりエネルギーを増幅してしまっているのです。
このエネルギーを逃がす為に、巾木の下に隙間が必要なのです。
穴の開いた太鼓は音が出ないですよね。
この話は、天井材にも言えてしまいます。天井裏の密閉した空間がバネになり、天井が無い時に比べて、天井がある方がうるさくなってしまうのです。
では、対処法は無いのかというと、基本的には2つしかありません。
一つは浮床と呼ばれる、防音ルームで採用されるようなやり方です。構造体であるコンクリートスラブの上にクッション材を敷きつけ、その上のもう一度コンクリートを打設するやり方です。ですが、このやり方は施工難易度も高く、あまり一般的ではありません。
もう一つは単純にコンクリートスラブの厚みを厚くする方法で、これは一定の効果があります。コンクリートスラブの遮音性から、二重床で防音性が下がる分を差し引いた分が、床のトータルの遮音性になるので、スラブを厚くすると、床全体の遮音性は上がります。

Lが小さいほど、静かだという基準で、dbとは関連が無いのですが、200mm程度のコンクリート床だと比較的静かな位置づけになります。一方で梁で囲まれた、スラブ面積も重要な要素で、スラブ面積が大きいと、大きな太鼓がうるさいのと同じ理屈で、うるさくなります。
ここで、マンションで良く採用されているフロアの裏側にクッション材が付いている商品であれば、足音に対しても効果あるのではないかと思う人もいると思いますが、実際にはクッション材付きに直貼りフロアには重量衝撃音(足音)にたいして効果はありません。
直貼りフロアのカタログにも、軽量衝撃音にたいする効果のグラフは掲載されているのですが、重量衝撃音に対しては効果が無い為にデーターが掲載されていない現状があります。
という訳で、床の足音に対して効果のある対策は、「コンクリートの厚みを増やす」という事になります。